前提

岡山県の内装・造作工事会社が、案件開拓と若手採用を同時に考えている状況

岡山県を拠点に、内装工事と造作家具まわりを手がける10名規模の専門工事会社で、営業と採用の優先順位が論点になっていました。

これまで大手内装会社や店舗関連の工事にも関わってきた実績があり、技術的には難しい案件にも対応できる会社です。一方で、今後の成長を考えると、既存のつながりだけに頼らず、新しい取引先を増やしていきたいという思いがあります。

同時に、人の問題もあります。採用媒体や人材紹介を使ってはいるものの、応募が少なく、応募があっても「履歴書を見た段階で、面接まで進めにくい」と感じる人が続いている状態でした。

社長の言葉として印象的だったのは、次の一言です。

仕事がないから人がいないのか、人がいないから仕事を取りにいけないのか。今は両方ですよね

この悩みは、建設業の中小企業ではかなり現実的です。仕事を取らなければ採用投資の原資が作りにくい。けれど、人がいなければ受注機会を逃し、今いる社員への負荷も増えてしまう。どちらも正しいからこそ、判断が難しくなります。

資料ダウンロード
課題

営業を先に進めるべきか、採用を先に進めるべきかが決めきれない状態

この会社では、大手内装会社との取引を広げたい意向がありました。理由は明確です。地場の中堅企業も候補にはなるものの、与信や継続性を考えると、大手との関係ができたほうが安心感があるからです。

社長も「大手と付き合えれば、そっちのほうが嬉しい」と話していました。大手であれば案件数も一定見込めますし、難しい案件であれば自社の技術を活かせる余地もあります。

一方で、採用についても放置できません。採りたいのは、40代・50代の即戦力というより、20代から30代前半の若手です。社内の年齢構成を考えると、上の世代が入るより、若い人を育てるほうがなじみやすいという判断でした。

若い子を入れて、指導して、教えていくほうがいいかなと思っています

この考え方も自然です。内装業界の経験者で若くて動ける人材は、そもそも市場に多くありません。バリバリできる経験者を待つより、未経験でもやる気のある若手を採り、工事を中心に覚えてもらうほうが、長い目で見れば会社に合う可能性があります。

ただし、ここで問題になるのが時間軸です。若手を採っても、すぐに売上を作れるわけではありません。教育には時間がかかります。現場で任せられるようになるまで、既存社員の手も取られます。

つまり、営業と採用はどちらも必要ですが、同じタイミングで同じ重さの投資をするには負担が大きいのです。

背景

仕事を増やすにも人を増やすにも、投資回収までの時間がずれている

営業と採用の優先順位が難しい理由は、どちらも会社に必要だからではありません。より正確には、投資してから回収できるまでの時間が違うからです。

営業の場合、大手や中堅の内装会社との接点ができ、案件化すれば、比較的短い期間で売上につながる可能性があります。もちろんすぐ受注できるとは限りませんが、見積依頼や小さな工事から関係が始まれば、会社としての見通しは作りやすくなります。

特にこの会社のように、難しい内装や造作に対応できる実績がある場合、単純な価格勝負ではなく「この工事なら任せられる」という入り方ができます。社長も、「誰でもできるものは安く取るところがある。難しい案件は、なかなか誰でも手を出さない」と話していました。

一方、採用は少し性質が違います。求人を出してすぐ人が来るとは限らず、来たとしても自社に合う人かどうかを見極める必要があります。さらに入社後の教育期間があります。

今回も、複数の採用サービスを使いながら、なかなか良い応募に出会えていませんでした。給与も一定の幅を持たせて募集していましたが、同じ施工管理系の求人では、さらに高い条件を出す会社もあります。求人媒体に載せれば自然に応募が来る、という時代ではなくなっています。

この背景を踏まえると、採用は「人が足りないから今すぐ出す」だけではなく、どんな人を、どこから、何を伝えて採るのかを設計しないと成果につながりにくくなります。

そしてもう一つ大事なのは、営業先から見たときの施工体制です。いくら技術があっても、「この会社は継続して対応できるのか」「現場が重なったときに回るのか」という不安があれば、大きな案件は任せにくくなります。

つまり、営業と採用は別々の課題に見えて、実際にはつながっています。仕事の見通しが採用の原資を作り、採用体制が営業上の信用を支えるという関係です。

解決

短期は案件の見通しを作り、中期で採用と教育の体制を整える進め方

このような状況では、「営業か採用か」を一発で決めるより、時間軸を分けて考えるほうが現実的です。

まず整理したいのは、次の5つです。

  • 今の案件量は、何か月先まで見えているか
  • 受注余力は、今の人数でどこまで対応できるか
  • 若手を採った場合、戦力化まで何か月かかるか
  • 採用した人が、いつから売上に貢献し始めるか
  • 営業先から見て、今の施工体制が安心して発注できる状態か

この5つを並べると、優先順位が見えやすくなります。

たとえば、今の案件量が薄く、数か月先の売上見通しが弱いなら、最初に取り組むべきは営業です。大手や中堅の内装会社との接点を作り、見積依頼が来る状態を作る。まずは案件の入口を増やすことが、採用投資の判断材料になります。

ただし、採用を完全に止める必要はありません。短期で大きな採用投資をする前に、採用の土台だけは整えておくべきです。

具体的には、次のような準備です。

  • 若手に任せる最初の仕事を、工事中心に整理する
  • 未経験者に伝えるべき自社の魅力を言語化する
  • 「厳しい業界だけど、何を覚えられるのか」を求人で伝える
  • 面接で見る基準を、経験よりも姿勢・継続力・現場適性に寄せる
  • 入社後3か月で教える内容を決めておく

この会社の場合、造作や内装の実績そのものが採用上の魅力になります。目に見える形で残る仕事、店舗や空間づくりに関われる仕事は、若手にとって伝わりやすい要素です。給与だけで比較されると厳しくても、何を作れる会社なのか、どんな技術が身につくのかを見せられれば、採用の戦い方は変わります。

営業については、やみくもにリストへ電話するだけではなく、自社が選ばれやすい相手を見極めることが重要です。大手に行くなら、紹介や信頼できる接点を通じたほうが話を聞いてもらいやすい場合があります。中堅企業に行くなら、施工業者不足に困っている先を狙い、対応できる工事範囲と得意な難易度を明確に伝える必要があります。

順番としては、次のように考えると進めやすくなります。

  1. 短期は営業で案件の見通しを作る
  2. 並行して、求人内容と教育の受け皿を整える
  3. 案件の入口が増え始めた段階で、採用投資を強める
  4. 採用後は、現場投入までの教育ステップを固定する
  5. 施工体制が整ってきたら、さらに大きい取引先へ広げる

大事なのは、採用を「欠員補充」としてだけ見ないことです。若手採用は、将来の受注力を支える投資です。ただし、その投資を続けるには売上の見通しが必要です。だからこそ、営業で未来の案件を作りながら、採用で未来の施工力を作るという二段構えが合います。

まとめ

仕事も人も足りないとき、営業と採用のどちらを先に進めるかは、会社の状況によって変わります。

ただ、案件の見通しが薄い状態で大きく採用投資をすると、教育期間中の負担が重くなります。一方で、人がいないまま営業だけを強めると、せっかくの受注機会に対応できなくなる可能性があります。

そのため、まずは現在の案件量、受注余力、教育期間、売上化までの時間、営業先から見た施工体制を整理することが出発点です。

今回のように、技術はあるが案件も人も同時に足りない会社では、短期は販路開拓で案件の入口を作り、中期で若手採用と教育体制を整える進め方が現実的です。

「どちらが大事か」ではなく、どちらを先に動かすと会社のお金と現場が回りやすいかで考える。ここを整理できると、営業にも採用にも無理のない順番が見えてきます。

自社では営業と採用のどちらを先に整理すべきか考えたい方へ

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大、人材確保、組織づくり、原価管理、デジタル活用まで、現場と経営をつなげながら整理しています。

「今は仕事を取りにいくべきか」「採用を先に考えるべきか」「両方必要なのはわかるが、投資の順番が決めきれない」といった段階でも大丈夫です。状況を一緒に整理し、無理のない進め方を考えるところからご相談いただけます。

無理な営業はいたしませんので、まずは自社の現在地を整理する場としてご活用ください。

お問い合わせはこちら