前提

東海地方で2億円台後半を維持するシーリング工事会社が大切にしていた既存商流

利益率を上げるために「間を飛ばす」ことは、数字だけ見れば合理的に見える場面があります。

ただ、専門工事会社の商流は、単純な中抜き構造ではありません。そこには、長年の紹介、現場調整、元請けとの関係、支払い、トラブル時の責任分担が積み重なっています。

東海地方でシーリングを中心に手がける、3名規模のある専門工事会社の話です。売上は2億円台後半。大きく伸ばすよりも、無理のない範囲で仕事を選び、協力会社に施工を任せながら品質を見ています。

社長は、売上3億円を大きく超えるような大型案件には慎重でした。

「大きい仕事を受けると、足場も周辺工事も含めてケアが増える。うちの専門だけならいいけど、全部受けると面倒が増えるんだよね」

一方で、利益率を上げたいという話に対しては、強い線引きがありました。

「間に入ってくれる人たちを裏切っちゃうわけですよ。それを簡単にやるのは違うと思う」

この会社の論点は、売上を増やすかどうかではなく、既存の信頼を壊さずに、どこまで販路を広げてよいかでした。

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  • 7月5日塗装工事会社神奈川県
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  • 6月18日総合土木東京都
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  • 6月18日防水工事会社岡山県
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課題

元請けに直接営業すれば利益率は上がるが、既存取引先との信頼を失う可能性がある

専門工事会社にとって、直取引化は利益率改善の手段である一方、商流を崩すリスクもあります。

たとえば、現在は一次下請けや元請けに近い会社から仕事を受けているとします。その上位にいる元請けや管理会社へ直接営業できれば、間に入る会社のマージンが減り、自社の取り分は増えるかもしれません。

しかし、問題はそこだけではありません。

長年仕事をくれている会社から見れば、「うちの先に直接行った」と受け取られることがあります。たとえ悪気がなくても、案件の出どころが重なれば、信頼関係は一気に難しくなります。

相談企業の社長も、以前に似たような経験があったようです。

「こっちを邪魔にして、直接使うような動きをされたら、そんなところの仕事はいらないよね」

これは感情論だけではありません。建設業の取引は、紹介と信用の上に成り立っています。特に専門工事では、現場で何かあったときに誰が責任を持つのか、誰が元請けと話すのか、誰が工程を調整するのかが重要です。

利益率だけを見て商流を飛び越えると、短期的には得をしても、長期的な仕事の入り口を失うことがあります。

背景

売上の約半分を支える太い取引先と、細かく分散した残りの商流がある

既存商流を守るべきかどうかは、取引先ごとの役割を分けて見ないと判断できません。

この会社では、ある主要取引先からの仕事が売上の半分近くを占めていました。以前は「1社比率を下げたい」と考えた時期もあったそうです。1社依存になれば、その会社に何かあったときに自社も揺れます。

ただ、現在は少し考え方が変わっていました。

「そこが大きくなってくれるなら、それはそれでいい。こっちも頑張れよ、という話」

つまり、主要取引先は単なる中間会社ではなく、長く一緒に商流を作ってきた相手です。そこを飛ばして上位会社に営業するのは、利益率改善ではなく、信頼の切り崩しになりかねません。

一方で、残り半分は細かなルートに分散しています。過去に付き合いがあった会社、今はほとんど動いていない会社、別ルートから入る小さな案件などが混ざっています。

ここで大事なのは、すべての商流を同じ扱いにしないことです。

  • 今も継続的に仕事をくれる取引先の先には、自分から踏み込まない
  • 過去に関係が切れている領域や、接点が薄い領域は検討余地がある
  • 相手側から声がかかった場合は、案件の出どころを確認してから判断する
  • 小工事、別部門、未接点の管理会社などは、角が立ちにくい入口になりやすい

社長は、上位会社から直接声がかかること自体は否定していませんでした。

「向こうから声がかかったら、全然話せるんだけどね。自分からガツガツは行けない」

この言葉に、商流整理の実務感があります。

問題は直取引そのものではなく、誰の商流を、どの案件で、どう越えるのかです。

解決

既存商流を守る領域と新規開拓してよい領域を分けてから営業する

専門工事会社が利益率を上げるには、「飛ばす営業」ではなく「重ならない営業」を設計することが現実的です。

まず整理したいのは、取引先ごとの位置づけです。売上金額だけで判断せず、その会社が自社に何をもたらしているかを見ます。

たとえば、次のように分けると考えやすくなります。

1つ目は、守るべき商流です。長年仕事を出してくれている会社、現場調整を担ってくれている会社、上位会社との関係を持っている会社です。ここは、元請けに直接営業して利益率を上げる対象ではありません。

2つ目は、交渉で改善する商流です。関係は守りつつ、材料高騰、施工難易度、品質対応、工程リスクをきちんと説明し、単価や条件を見直す領域です。社長も「ちゃんと話を説明して、うちだと安いんで、と言うなら分かる」と話していました。

3つ目は、新規開拓してよい商流です。既存取引先の先にある本流ではなく、接点がない会社、過去に関係が切れている会社、別部署、小工事、修繕・リフォーム領域などです。

特に、専門工事会社にとって取り組みやすいのは、次のような入口です。

  • 既存取引先と商流が重ならない管理会社・オーナー系の小修繕
  • 大規模改修ではなく、漏水対応や部分補修などの小工事
  • 元請け本体ではなく、リフォーム部門・営繕部門など別部門からの相談
  • 過去に付き合いがなく、既存取引先の顔を潰さない会社からの問い合わせ
  • 相手側から紹介・問い合わせが来た案件で、既存商流との重複を確認できるもの

この会社でも、「リフォーム部の小工事や漏水なら動ける」という話が出ていました。大きな元請け案件を丸ごと取りに行くのではなく、既存商流とぶつかりにくい小さな入口から関係を作る。これは、角を立てにくい販路開拓です。

ただし、直取引を増やすなら、受ける仕事の範囲も決めておく必要があります。

元請けに近づくほど、施工だけでは済まなくなることがあります。足場、近隣対応、工程管理、別工種との調整、クレーム対応まで求められることがあります。相談企業の社長が大型案件を避けていた理由もここにありました。

「利益率が高い仕事」でも、自社が負う管理責任が増えすぎるなら、実質的には割に合わないことがあります。

そのため、直取引や新規開拓を考えるときは、次の順で整理すると進めやすくなります。

  1. 現在の取引先を、守る商流・交渉する商流・開拓してよい商流に分ける
  2. 既存取引先の上位会社に営業する場合は、案件の出どころを必ず確認する
  3. 自社から積極的に行くのは、既存商流と重ならない会社・部門・小工事に絞る
  4. 直取引で受ける範囲を、専門工事のみなのか、周辺管理まで含むのか決める
  5. 利益率だけでなく、社長や番頭がどこまでケアできるかで受注可否を判断する

商流整理は、攻める話であると同時に、守る話でもあります。

既存の信頼を守るからこそ、新しい販路を安心して増やせます。

まとめ

専門工事会社が利益率を上げたいとき、元請けへの直接営業は選択肢の一つです。

ただし、長年の取引先を飛ばす形になるなら、慎重に考えたほうがよいです。建設業の商流には、案件紹介だけでなく、信用、調整、責任、現場での顔つなぎが含まれています。

今回のような会社では、主要取引先との関係を守ることが、事業の安定そのものでした。一方で、未接点の会社、過去に関係が切れている領域、別部門、小工事、相手から声がかかった案件には、開拓の余地がありました。

大事なのは、「直取引か下請けか」ではなく、「どの商流は守り、どの領域なら広げてよいか」を分けることです。

利益率を上げる方法は、商流を飛ばすことだけではありません。既存取引先との条件交渉、受ける案件の選別、小工事の開拓、協力会社体制の見直しでも改善できます。

自社の信用を守りながら、無理なく販路を広げる。専門工事会社にとっては、その順番がいちばん現実的です。

既存商流を守りながら販路を広げたいときの整理先

商流の見直しは、外から見るほど単純ではありません。

「この元請けに営業していいのか」「今の取引先の顔を潰さないか」「小工事なら動いてよいのか」「利益率を上げたいが、どこから手をつけるべきか」と迷うこともあります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大、協力会社体制、原価管理、デジタル活用などを横断して整理し、建設企業の持続的成長を支援しています。

うちの場合はどう考えるべきか、まだ何から整理すべきかわからない、という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、まずは状況整理の場としてご相談ください。

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