前提

労務費・材料費・週休二日化で、二次・三次請けほど利益が削られやすい状況

ある専門工事会社では、売上を伸ばすこと以上に「利益をどう残すか」が大きなテーマになっていました。

背景にあるのは、労務費、社会保険料、材料費の上昇です。さらに、働き方改革によって土曜日稼働が減り、現場の稼働時間にも制約が出ています。

相談者はこう話していました。

「労務費を下げる方向で考えると、従業員のモチベーションも効率も悪くなる。契約単価は下げたくないし、むしろ上げていかないとやっていけない」

ここで見えてくるのは、単純なコストカットではなく、単価を下げずに利益を残す構造をどう作るかという論点です。特に二次・三次請けが多い会社ほど、上流側の都合を受けやすく、利益の調整弁になりやすい。相談者の言葉を借りれば、まさに下請けに無理がかかる板挟みの状態です。

課題

二次・三次請け中心のままでは、仕事量があっても利益率が安定しにくい

この会社には、すでに一次請けに近い形で入れている取引先がありました。しかも、その仕事は利益率が高く、労務単価を高めに出しても会社にお金が残る感覚があるといいます。

「二次・三次が多いので、一次請けの仕事に入れるのが一番効率がいい。そこを太くするのがベストだと思っています」

一方で、従来の取引先からの仕事が減った時期もあり、仕事が空いてしまう場面も出ていました。つまり、問題は「仕事がまったくない」ことではありません。むしろ、利益が残る仕事と、そうでない仕事の差が大きいことです。

この状態で数だけを追うと、見積依頼は増えても、単価勝負になりやすくなります。受注できても利益が薄い。受注できなければ時間だけを使う。結果として、売上よりも利益率のブレが経営を悩ませます。

一次請けの比率を増やしたい会社にとって重要なのは、やみくもに新規の元請けを探すことではなく、すでに評価されている仕事をどう横に広げるかです。

背景

既存の一次請け実績はあるが、元請け内の未接点部署や所長までは届いていない

この会社には、一次請けの仕事を持ってくるキーマンが社内にいました。その方は長年のつながりを持っており、特定の大手元請けの土木系部署や現場所長から声がかかる状態でした。

しかも、見積依頼まで来れば、かなり高い確度で受注できる感覚がある。つまり、施工力や信頼はすでに一定程度認められています。

ただし、ここに盲点があります。

相談者はこう話していました。

「同じ部署内でも、この所長は知っていても、別の所長は知らない。閉鎖的に動いているところがあります」

大手元請けの中では、同じ会社内であっても部署や現場ごとに情報が分かれます。ある所長には知られていても、別の現場では存在すら知られていない。実績があるのに、元請け内で横展開されていないわけです。

また、同社には施工面での強みもありました。細かな作業から専門性の高い工事まで、外注に頼りすぎずに対応できる体制があるといいます。

「大きな重量物の取り付け以外は、かなりの範囲を自社でできる体制です。そこまで外注を使わずにこなせるところは少ないと思っています」

これは単なるコストメリットではありません。元請けから見ると、内製対応範囲の広さは、段取りのしやすさ、機動力、品質の安定につながります。ところが、その価値が現場所長や発注判断者に伝わっていなければ、見積の土俵にすら乗れません。

解決

既存の一次請け実績を起点に、重点取引先の中で未接点の部署・所長へ横展開する進め方

一次請けを増やすとき、最初に考えたいのは「新しい会社を何社増やすか」ではありません。まずは、すでに仕事が取れている元請けの中で、まだ接点のない部署・現場・所長を洗い出すことです。

進め方は、大きく4つあります。

  • 既存取引先の中で、どの部署・所長と接点があるかを整理する
  • 見積依頼が来た案件と、受注できた案件を並べて勝ち筋を見る
  • 自社の施工実績と内製対応範囲を、元請け目線の価値に言い換える
  • 重点取引先を2〜3社に絞り、深耕する順番を決める

ここで大事なのは、重点取引先を絞ることです。すべての元請けに薄く営業すると、結局、紹介だけで終わったり、単価比較の見積に巻き込まれたりします。

相談者も、「あちこちの企業と付き合いを持ってもいいが、実際には2〜3社を太くするのが現実的」という考えを持っていました。この感覚はとても実務的です。

また、アピールの仕方も重要です。「安くできます」ではなく、次のように伝える必要があります。

  • この範囲まで自社で施工できる
  • 外注調整が少なく、現場対応が早い
  • 過去に同種の工事で事故なく対応している
  • 見積後の受注率が高く、元請け側の評価もある

つまり、安さではなく安心して任せられる理由を言語化することです。受注金額を下げて取るのではなく、適正な単価で選ばれる状態を作る。そのためには、実績をただ並べるだけでなく、「元請けのどの困りごとを減らせるのか」まで翻訳する必要があります。

さらに、元請け内のキーマンに届くルートづくりも欠かせません。発注判断を持つ現場所長、工事部門の管理者、長く常駐して現場情報を持つ協力会社など、案件情報が集まりやすい人を把握していく。ここが見えないままだと、営業はどうしても偶然頼みになります。

まとめ

二次・三次請けで利益が残りにくい会社が一次請けを増やすには、単に新規開拓を増やすだけでは足りません。

まず見るべきは、すでに利益が出ている一次請け実績です。そこに、施工品質、事故なく対応してきた実績、内製対応範囲の広さがあるなら、それは十分に横展開できる資産です。

ポイントは、既存の一次請け実績を起点にすることです。元請け内の未接点部署や現場所長へ広げ、重点取引先を絞って深耕する。単価を下げる営業ではなく、任せる価値を伝える営業に変えていく。

労務費や材料費が上がる環境では、利益を削って受注するほど苦しくなります。だからこそ、利益が残る取引構造へ移る営業設計が、専門工事会社の次の一手になります。