高速道路・鉄道関連が主力で、3月末から6月ごろに手待ちが出やすい専門工事会社の現在地
ある専門工事会社では、高速道路や鉄道関連の仕事が売上の大きな柱になっていました。
昔から付き合いのある取引先から定期的に仕事が入り、いわゆる営業活動をしなくても現場は回ってきた状態です。社長も「今のところは定期的に仕事をいただいている」と話していました。
これは、とても強い状態です。新規営業に追われず、信頼関係のある取引先から仕事が来る。建設業では簡単につくれる基盤ではありません。
一方で、悩みはそこではありませんでした。問題は、仕事の波が毎年同じ時期に出ることです。
「3月末あたりから、ゴールデンウィークを挟んで6月ぐらいまでは毎年暇なんです」
この言葉に、同じような感覚を持つ会社も多いはずです。年度末までは忙しい。ところが、年度が切り替わると一気に動きが鈍る。社員を抱えている会社ほど、この時期の空きは気になります。
営業しなくても仕事が来る強みが、春先の空白を埋めにくくしている状態
主力取引先から安定的に仕事がある会社ほど、新しい販路開拓は後回しになりがちです。
理由はシンプルです。普段は困っていないからです。
高速道路・鉄道・公共系の仕事が中心であれば、発注の流れや年度のサイクルに合わせて現場が動きます。繁忙期は忙しい。応援や外注を使うこともある。けれど、年度末後から初夏までは仕事が薄くなる。
この波があると、社長の頭の中には常に次のような判断が残ります。
- 人を増やしても、春先に仕事がなければ固定費が重くなる
- 忙しい時期だけなら、協力会社で吸収したほうがいい
- 新しい仕事を取りたいが、今の主力取引を崩したいわけではない
つまり課題は、単に「売上を増やしたい」ではありません。年間稼働をならすための補完案件をどう持つかです。
社長も「忙しければ外注さんを使えばいい」と話していました。これは自然な考え方です。ただ、閑散期に自社の社員が空いてしまうなら、補完的な販路を持つ意味は出てきます。
年度サイクルに左右される工事だけでは、社員を抱える会社ほど春先の余白が残る構造
春先に仕事が薄くなる背景には、会社の努力だけでは変えにくい構造があります。
公共系やインフラ系の仕事は、年度末に向けて動きが集中しやすくなります。年度が替わると、発注や予算の関係で一時的に動きが鈍ることがあります。そのため、主力取引が安定していても、発注者側の年度サイクルに会社の稼働が引っ張られます。
この会社も、主力の仕事自体には不満があるわけではありませんでした。むしろ基盤としては大事にしたい。ただ、春先だけ毎年同じように空きが出る。
そこで候補に上がるのが、時期要因を受けにくい仕事です。
たとえば、戸建て住宅の外構や修繕、アパート改修、原状回復、マンション・非住宅の改修などです。実際、この会社も問い合わせがあれば戸建て関連の見積もりや工事を行っており、アパート改修の実績もありました。
ここで大事なのは、いきなり別業態に変えることではありません。すでに少し経験がある領域を、春先の補完案件として伸ばせるかを見ることです。
「まったく知らない工事」ではなく、「やったことがある工事」「管理できる工事」「協力会社を組める工事」から広げる。これなら、現場にも無理が出にくくなります。
主力取引を基盤に残し、改修・原状回復・民間修繕を春先の補完案件として育てる進め方
販路を広げるときに、まず考えたいのは「何を増やすか」よりも「どの時期の空きを埋めたいか」です。
このケースでは、3月末から6月ごろの空きが見えていました。であれば、通年で大きく伸ばすよりも、まずは閑散期に入りやすい案件を狙うほうが現実的です。
候補になりやすいのは、次のような案件です。
- アパート改修や原状回復
- 賃貸物件の小修繕・外装まわりの改修
- 戸建て住宅の外構・修繕
- 民間の建物改修や部分補修
ただし、戸建ての一般個人向けをいきなり増やすのは、営業導線づくりが必要になります。問い合わせを待つだけでは、件数は読みにくいからです。
そのため、優先順位としては、管理会社や賃貸系の発注者を狙うほうが進めやすい場合があります。理由は、継続的に物件を持っており、工事が単発で終わりにくいからです。
進め方は、段階を分けると考えやすくなります。
まずは、既存実績を整理します。アパート改修、外構、修繕、原状回復など、これまで対応した工事を「何ができるか」ではなく「発注者が安心できる形」に直します。
たとえば、次のような見せ方です。
- 対応できる工事範囲
- 対応できるエリア
- 自社で管理できる体制
- 協力会社を組んだときの工程管理
- 天候などで工程がずれる場合の事前説明
特に、複数県に動ける会社であれば、対応エリアの広さは営業上の強みになります。「お金が合えばどこでも行く」という感覚は、発注者側から見ると、広域で頼める安心感につながります。
次に、春先に空きやすい時期を前提に、営業先を絞ります。すべての民間工事を取りに行くのではなく、まずは既存の施工経験と相性が良いところを狙います。
この会社の場合であれば、戸建てよりもアパート改修や賃貸系のほうが自然です。すでに現場の流れがあり、協力会社の組み方も分かっているからです。
最後に、人を増やす前に、受注と施工体制のバランスを見ます。春先だけの補完案件であれば、いきなり社員を増やす必要はありません。繁忙期は外注を活用し、閑散期に自社社員が動ける仕事を入れる。まずはその形で十分です。
販路拡大は、主力取引を否定するものではありません。むしろ、主力取引を守るための補助線として考えるほうが、現場にも経営にもなじみます。
まとめ
高速道路・鉄道・公共系の仕事が主力の会社にとって、年度末後の閑散期は珍しい悩みではありません。
大事なのは、主力取引を無理に変えないことです。安定している仕事は基盤として残す。そのうえで、3月末から6月ごろの空きを埋めるために、アパート改修、原状回復、民間修繕などの補完案件を育てる。
最初から大きく広げる必要はありません。まずは、すでに実績のある工事を営業資産に変えることです。
対応エリア、管理体制、協力会社の組み方、工程説明。これらを発注者に伝わる形に整えるだけでも、新しい取引先に提案しやすくなります。
春先の手待ちをなくす販路開拓は、売上を追いかける話ではありません。社員を抱える会社が、年間を通じて無理なく稼働するための経営づくりです。



























































































