採用サイトも求人媒体も使っているのに、職人の応募がほとんど来ない会社の現在地
ある専門工事会社では、採用サイトを作り、大手求人媒体にも掲載し、長い期間採用活動を続けていました。
それでも、経営者の実感はかなり冷静でした。
「応募できた人はいるけど、ほぼいなくて。今いるメンバーは、もともと知り合いだったり、知り合いの会社から来たりです」
この言葉に近い状況は、建設業の中小企業では珍しくありません。
採用に力を入れていないわけではありません。むしろ、ホームページを整え、媒体も試し、紹介も頼り、できることはやってきています。
それでも、媒体に出しても応募が来ない。来ても、自社に合う人とは限らない。結果として「求人媒体から来る人を信用しきれない」という感覚が残っていきます。
ここで見直したいのは、求人市場が厳しいという事実だけではありません。市場が厳しい中で、求人原稿が求職者にどう見えているかです。
給与・休日・仕事内容の羅列だけでは、自社に合う職人に届きにくい状況
求人原稿は、どうしても条件の一覧になりがちです。
給与、休日、勤務地、仕事内容、応募資格。必要な情報ではあります。ただ、それだけだと、求職者から見ると他社との違いが見えにくくなります。
特に建設業では、似たような職種名、似たような仕事内容、似たような待遇が並びます。求職者が検索すれば、同じ地域でも大量の求人が出てきます。その中で、条件の羅列だけの求人票は埋もれやすくなります。
経営者側からすると、「うちはちゃんと仕事がある」「人間関係も悪くない」「技術も身につく」と感じていても、それが原稿に出ていなければ伝わりません。
むしろ、現場の良さほど言葉にしにくいものです。
たとえば、次のような強みです。
- 社長や先輩との距離が近い
- 未経験でも一つずつ覚えられる
- 独立を応援する考え方がある
- 現場で任せてもらえる範囲が広い
- 長くいる社員が感じている居心地の良さがある
これらは、求人票に書こうと思わなければ出てきません。
そして、外から見ると魅力になることでも、社内では当たり前になっていることがあります。ここに、自社の魅力が伝わっていない原因が隠れています。
有名媒体に出せば採れる時代ではなく、求職者に選ばれる理由の言語化が必要な状況
採用市場そのものも変わっています。
以前は、大手の求人媒体に費用をかけて掲載すれば、一定の応募が見込める時期もありました。ところが今は、求人サービスが増え、求人情報もあふれています。
「相対的に、そもそも来ない時代じゃないですか」
この感覚は、かなり本質に近いものです。
だからこそ、「どの媒体に出すか」だけでは足りません。もちろん媒体選びは大事です。ただ、その前に、誰に何を伝える求人なのかを決める必要があります。
ここが曖昧なまま有料掲載を増やしても、費用だけが先に出ていきます。
大切なのは、100人全員に好かれる求人を作ることではありません。むしろ、自社に合う1人に刺さる訴求を探すことです。
ある会社では、一般的には敬遠されそうな仕事内容を、あえて分かりやすい言葉で打ち出しました。きれいに飾るのではなく、仕事の特徴をそのまま伝えたことで、「それなら面白そう」と感じる人に届くようになりました。
このように、採用では欠点を隠すよりも、仕事の実態をどう見せるかが重要です。
きつい部分もある。覚えることもある。現場仕事なので楽ではない。けれど、その仕事に向いている人にとっては、そこが魅力になる場合もあります。
欲しい人材像を決め、社員の声から求人原稿を作り直す進め方
応募が来ないときに、いきなり媒体を変えるのは早い場合があります。
先に整理したいのは、求人の土台です。
まず、欲しい人材像を具体化します。
「若い人がほしい」だけでは、まだ広すぎます。たとえば、20代・30代の職人を採用したいなら、次のように分解します。
- 未経験でも育てる前提なのか
- 多少の現場経験がある人がよいのか
- 独立志向のある人を歓迎するのか
- 長く社員として働きたい人を求めるのか
- 体力や素直さを重視するのか
- 将来、職長や番頭候補になってほしいのか
ここを決めると、求人原稿の言葉が変わります。
次に、社員へのインタビューです。
経営者だけで自社の魅力を考えると、どうしても「社長が伝えたいこと」中心になります。一方で、求職者に近い目線を持っているのは、今働いている社員です。
「入社前に不安だったこと」 「続けられている理由」 「他社と違うと思うところ」 「正直、大変だと思うところ」
こうした声を拾うと、求人原稿に使える言葉が出てきます。特に、社員から見た会社の良さは、経営者が気づいていないこともあります。
そのうえで、求人原稿を作り直します。
ポイントは、きれいな言葉にしすぎないことです。
たとえば「アットホームな職場です」だけでは伝わりません。それよりも、「朝は事務所で顔を合わせてから現場に向かう」「未経験者には最初の数か月、先輩が道具の名前から教える」など、実際の場面に近い言葉のほうが伝わります。
原稿を変えたら、いきなり大きな費用をかけるのではなく、無料掲載や低コストの範囲で反応を見ます。
見るべき数字は、応募数だけではありません。
- 表示回数
- クリック数
- 応募率
- どの文言で反応が変わったか
- 応募者の質が変わったか
このように、無料掲載でPDCAを回すことで、勝ち筋が見える前に費用をかけすぎるリスクを抑えられます。
媒体選定は、その後です。
若手職人を狙うのか、経験者を狙うのか。ネットで探す人なのか、紹介経由のほうが近い人なのか。学校訪問のような手段が合うのか。SNSや採用サイトの見せ方を整えるべきなのか。
媒体は「有名だから選ぶ」のではなく、欲しい人材が見ている場所かで選びます。
まとめ
求人媒体に出しても応募が来ないとき、すぐに「建設業は人がいないから仕方ない」と片づけたくなります。
もちろん市場は厳しいです。ただ、それでも見直せることはあります。
まずは、求人原稿が給与・休日・仕事内容の羅列になっていないか。次に、欲しい人材像が言語化できているか。そして、社員の声をもとに、自社らしい訴求を作れているかです。
採用は、一度原稿を出して終わりではありません。反応を見ながら、言葉を変え、見せ方を変え、媒体を見直していく活動です。
大事なのは、100人に広く刺さる求人ではなく、自社に合う1人が振り向く求人を作ることです。そこから、採用活動の打ち手は少しずつ現実的になります。



























































































