住宅系の工事部門で20代職人が少なく、専属外注と高齢職人に支えられている状態
ある建設会社では、工事部門が大きく三つに分かれていました。住宅系の工事、木造工事、一般建築のように、扱う工事も現場の動き方も違います。
その中で共通して出てきたのが、やはり人の問題でした。特に住宅系の工事部門では、監督や管理側の社員は一定数いるものの、現場を担う職人の年齢が上がってきています。
「20代がいないんですよね」
30代、40代、50代、60代はいる。けれど、その下が空いている。さらに専属に近い外注職人の中には、70代を超えて現場に出ている方もいます。長く支えてくれている大切な存在だからこそ、簡単に線を引ける話ではありません。
ただ、夏場の現場や一人作業を考えると、高齢職人への依存だけで現場を回し続ける限界も見えてきます。
外注先に「人を増やしてほしい」と頼んでも増えない中で、自社が育てる覚悟が必要になること
これまでの建設業では、職人が足りなければ協力会社や専属外注に相談する、という動き方が自然でした。腕の良い職人に長くお願いし、現場ごとの段取りを組み、管理側が品質や工程を見ていく。中小建設会社にとっては、無理なく現場を回すための現実的な形です。
しかし今は、協力会社側も採用に苦しんでいます。
「社員も来ないし、職人も来ない。たまに入ったと思ったら親戚筋だった、という話も聞きます」
この状況で、外注先に「若い人を増やしてください」と言っても、すぐに解決するわけではありません。むしろ、外注先任せの採用では先細りするという前提で、自社としてどこまで人を抱えるのかを決める必要があります。
特に悩ましいのは、社員職人を採るとしても、いきなり全工種・全現場で始められるわけではない点です。住宅系、木造、一般建築では現場の回り方が違います。巡回管理が中心の部署もあれば、常駐に近い形で育てやすい現場もあります。
だからこそ、最初に考えるべきなのは「職人を採るかどうか」ではなく、どの工種・どの部署から採るかです。
管理側と職人側の役割が分かれてきた会社ほど、若手を現場に置く設計が難しくなること
この会社でも、社員は主に管理側として動いてきました。工事部門の社員が現場を見て、実作業は専属外注や協力会社の職人が担う。長年その形でうまく回ってきたからこそ、社員職人を入れるとなると、役割の整理が必要になります。
「職人は職人で、社員は管理系と分けてやるようになるでしょうね」
この感覚は、多くの建設会社に近いはずです。社員として採用する以上、給与や教育、評価、配置を会社が見ます。一方で、技術を教えられるのは現場のベテラン職人や専属外注であることも少なくありません。
つまり、社員職人の育成は、単に若手を採って現場に入れる話ではありません。会社が採り、ベテランが教え、管理側が成長を見守るという三者の役割分担が必要になります。
また、現場の性質によって育て方も変わります。常駐に近い現場なら、先輩と一緒に動く時間を確保しやすい。一方、巡回型の現場では「まさか毎日二人ずつ行かせるわけにもいかない」という現実があります。
ここを曖昧にしたまま採用すると、若手は何を覚えればいいのか分からず、現場側もどこまで任せていいのか迷います。結果として、採用したのに育たない、育つ前に辞める、という状態になりやすくなります。
まず住宅系など一部門に絞り、採用・送り込み・独り立ちまでを段階化すること
社員職人の採用は、一気に全社展開するよりも、まず一つの部門で形をつくるほうが現実的です。たとえば住宅系の工事部門に絞り、そこで採用から育成までの流れを試す。うまくいった部分を木造部門や他部門に広げる、という順番です。
最初に整理したいのは、次の三つです。
- どの工種で若手不足が最も現場リスクになっているか
- どの現場ならベテラン職人に同行させやすいか
- 何年後に、どの作業を一人で任せたいか
この三つが見えると、社員職人の募集内容も変わります。ただ「大工募集」「職人募集」と出すのではなく、社員として技術を身につけられる安心感を伝えられます。
育成面では、若手を専属外注やベテラン職人のもとに送り込む形が現実的です。ただし「面倒を見てください」とお願いするだけでは、現場任せになります。入社後のステップを、会社側で簡単にでも決めておくことが大切です。
たとえば、次のような段階です。
- 最初の数か月は道具、材料、現場の流れを覚える
- 次に補助作業を任せ、毎日できたことを確認する
- 半年から一年で、簡単な作業を一人で進められる状態を目指す
- その後、現場の段取りや後輩への教え方も少しずつ覚える
ポイントは、独り立ちの定義を先に決めることです。何をもって「育った」とするのかが曖昧だと、本人も教える側も手応えを持ちにくくなります。
また、教えるベテラン側にも負担がかかります。若手を付ける現場、任せる作業、確認するタイミングを会社が決めておくことで、職人任せではなく、会社の育成として進めやすくなります。
「まずは一つの部門から始めて、良い影響が出るなら他にも広げたい」
この進め方は、中小建設会社にとって無理がありません。採用も育成も、最初から完璧にする必要はありません。大事なのは、採用する部署を絞って小さく始めることです。
まとめ
職人の高齢化は、すぐに現場が止まるという話ではないかもしれません。長く支えてくれている職人がいて、今は何とか回っている会社も多いはずです。
ただ、20代がいない、70代以上の職人が現場に出ている、協力会社側も人を増やせない。こうした状況が重なると、数年後の選択肢は確実に狭くなります。
社員職人の採用は、外注を否定する動きではありません。むしろ、外注・ベテラン職人の力を借りながら次の世代を育てる仕組みです。
まずは、最もリスクの大きい工種や部署を一つ選ぶ。社員職人として採る意味を言葉にする。誰のもとで、何を、どの順番で覚えるのかを決める。
その小さな設計が、将来の現場を守る第一歩になります。



























































































