日本人新卒の採用が難しくなる一方で、中途入社にはもともと抵抗が少ない状態
ある建設会社では、新卒採用に取り組みながらも、日本人の新卒を安定して採ることに難しさを感じていました。ここ数年、日本人新卒が入っていない。外国籍の若手が入ることはあるものの、言葉や現場配置の面で悩みが残る。
一方で、この会社は中途入社に抵抗が強いわけではありませんでした。
「うちはあまり気にしないです。今いる社員も、かなりの割合が中途ですから」
これは大きな強みです。建設業では、新卒採用にこだわりすぎると候補者の母数が限られます。特に職人採用では、学校経由だけでなく、第二新卒や未経験者、近隣で仕事を探している人にも目を向けることで、入口を広げられます。
大事なのは、誰でも採るという意味ではありません。新卒以外にも育つ人材がいるという前提で、採用と育成の設計を変えることです。
外国人材や未経験者を採っても、現場でどう育てるかが曖昧だと定着しにくいこと
若手が欲しいからといって、入社してくれた人をそのまま現場に置けば育つ、というわけではありません。特に住宅系の工事や巡回型の現場では、常に先輩と一緒に動けるとは限りません。
「1日中一緒にいる現場なら時間をかけられる。でも巡回管理だと、まさか毎回二人で行くわけにもいかない」
この言葉には、現場側の現実が出ています。未経験者は、最初に覚えることが多いです。道具、材料、安全、現場での挨拶、職人同士の距離感、作業の段取り。言葉の理解に不安がある場合は、さらに教える側の負担も増えます。
ここを整理しないまま採用すると、本人は「何を期待されているのか分からない」と感じます。現場側も「どこまで任せていいか分からない」となります。
採用の入口を広げるなら、同時に入社後の受け皿を先に決めることが必要です。
第二新卒や未経験者は「家が近い」「ものづくりが好き」など別の理由で応募することがある
職人志望者というと、最初から建設業に強い思いを持っている人を想像しがちです。しかし実際には、もっと日常的な理由で応募する人もいます。
「家が近かったから、という理由で入ってくる子もいます」
この理由だけを見ると、少し不安に感じるかもしれません。ただ、入口の理由が軽くても、仕事に触れる中で面白さを見つけ、育っていく人はいます。製造業など別業界で働いた経験があり、ものづくりが好き。体を動かす仕事が合っている。近場で長く働きたい。そうした人にとって、社員職人という働き方は選択肢になります。
求人媒体も変わっています。第二新卒や未経験者は、学校よりも求人検索サービスで仕事を探すことが多いです。そのとき、一般的な「職人募集」だけでは目に留まりにくい。
大手と同じような無難な求人にすると、条件比較で埋もれてしまいます。むしろ、少数に強く刺さる仕事の表現が必要になることがあります。
たとえば、ある設備系の会社では、仕事の特徴をあえて具体的に打ち出したことで、未経験者の応募につながりました。万人受けする表現ではなく、「この仕事、少し気になる」と思う人に届く言葉に変えたのです。
職人採用でも同じです。住宅の現場で何をつくるのか。どんな作業から覚えるのか。完成したときに何が残るのか。ものづくり志向に届く言葉に置き換えることで、候補者の幅は広がります。
求人の入口を広げたうえで、教育担当・配属先・キャリアの選択肢を順番に整えること
第二新卒・未経験者を採用する場合、最初に整えるべきは求人原稿です。経験者向けの言葉で書くのではなく、未経験者が読んで不安を減らせる内容にします。
入れるべき情報は、たとえば次のようなものです。
- 未経験から始める人に任せる最初の作業
- 教育担当や同行する先輩の存在
- 社員として働きながら技術を覚えられること
- 近隣で長く働きたい人に合う働き方
- ものづくりや現場作業の面白さ
ここで大切なのは、良く見せすぎないことです。暑さ、重さ、現場ごとの移動、覚えることの多さもあります。ただし、それだけで終わらせず、きつさと成長の道筋をセットで伝えると、入社後のギャップを減らせます。
次に、配属先を決めます。未経験者を入れるなら、最初の現場は育成しやすい場所にする必要があります。常に一人で動く現場より、先輩やベテラン職人の動きを見られる現場が向いています。
教育担当も、何となく決めるのではなく、会社側で役割を明確にします。教える人、勤務状況を見る人、本人の悩みを聞く人が同じでなくても構いません。むしろ中小企業では、管理側と現場側で分担したほうが続けやすいことがあります。
そのうえで、キャリアステップを簡単に示します。
- 入社直後は補助作業と現場ルールを覚える
- 半年後には一部作業を任せる
- 1年後には簡単な段取りを理解する
- その後、職人として深めるか、管理寄りの仕事も覚えるかを相談する
第二新卒や未経験者は、最初から将来像が固まっていないことも多いです。だからこそ、働きながら選べる道筋があると安心しやすくなります。
働き方の選択肢も同じです。稼ぎたい人、休みを重視したい人、家の近くで安定して働きたい人。価値観は一つではありません。すべてを制度化する必要はありませんが、面接や入社後面談で本人の希望を聞き、現場配置に反映するだけでも定着には効きます。
採用活動の順番としては、まず求人媒体で未経験者に届く原稿を試す。応募が来たら、面接で動機と生活圏、ものづくりへの関心を確認する。入社が決まったら、教育担当と最初の現場を決める。入社後は短い周期で振り返る。
このように、採用後に辞めさせない流れまで含めて設計することが、第二新卒・未経験者採用では欠かせません。
まとめ
新卒採用が難しくなっている中で、第二新卒や未経験者は現実的な候補者になります。特に中途入社が多い会社であれば、受け入れる土壌はすでにあります。
ただし、入口を広げるだけでは定着しません。求人原稿では、未経験者に伝わる仕事の魅力を言葉にする。入社後は、教育担当と配属先を決める。半年後、1年後に何ができるようになるのかを見えるようにする。
「家が近い」「ものづくりが好き」「一度就職したけれど別の道を探している」
そんな理由で応募してきた人でも、受け入れ方次第で職人として育つ可能性があります。新卒だけに頼らず、採用の間口と育成の仕組みを同時に広げることが、これからの職人採用では重要です。



























































































