前提

アパート改修を管理し、職種別の下請けを組んで回せる会社の現在地

ある建設会社では、すでにアパート改修の仕事を継続的に行っていました。

自社で管理と簡単な作業を担い、塗装や設備など職種ごとに協力会社を組む。工程を作り、段取りを組み直し、現場を進める。そうした形で、アパート改修を回していました。

社長も「一番はアパートの改修とか、そういうのが今手がけているので、やりやすいかな」と話していました。

戸建て住宅の外構や修繕もできる。ただ、慣れているのはアパート改修。協力会社もあり、月に一定数の案件も入っている。タイミングが合えば、もう少し増やすこともできる。

つまり、この会社にはすでに新規受注に使える実績がありました。

ただし、実績があることと、受注が増えることは別です。待っていれば自然に案件が増えるわけではありません。ここに、多くの中小建設会社がつまずくポイントがあります。

課題

実績はあるのに問い合わせ待ちになり、管理会社やハウスメーカーに強みが伝わっていない状態

アパート改修や原状回復は、経験がある会社にとって伸ばしやすい領域です。特に、管理と協力会社の手配ができる会社は、発注者から見ると頼みやすい存在です。

しかし、実績があっても、それが営業資産として整理されていなければ、新しい発注者には伝わりません。

「できます」と言うだけでは弱いです。発注者が知りたいのは、もっと具体的なことです。

  • どの範囲まで任せられるのか
  • どのエリアまで動けるのか
  • 人員は本当に確保できるのか
  • 工程は誰が管理するのか
  • 天候や追加工事が出たときにどう説明するのか

社長は、自社の強みについて「フットワークは軽いと思う」と話していました。一方で、品質については「自分で言うものじゃないし、周りが判断するのかな」とも話していました。

この感覚は誠実です。ただ、営業では少しもったいない面もあります。

品質を大げさに語る必要はありません。けれど、発注者が不安に思う点を先に言語化することはできます。そこが、実績を受注につなげる第一歩です。

背景

発注者が見ているのは施工技術だけでなく、広域対応・人員確保・工程管理の確実性

管理会社や賃貸系の発注者、ハウスメーカー系の発注者が見ているのは、施工技術だけではありません。

もちろん品質は大切です。ただ、アパート改修や原状回復では、複数の職種が関わります。入居者やオーナー、管理会社との調整もあります。天候で外部工事がずれることもあります。

この会社でも、外部工事については「雨が降って塗装ができません、ということはある」と話していました。そのため、工程表には天候による変更の可能性を入れて、事前に説明しているとのことでした。

これは、発注者にとって大事な安心材料です。工程がずれる前提を説明できる会社は、管理側から見て扱いやすいからです。

また、この会社は複数県に動ける体制も持っていました。自社社員と協力会社を含めて、人員を確保しながら広いエリアに対応できる。この点も、管理会社やハウスメーカーにとっては重要です。

発注者側は、「本当に人を集められるのか」を見ています。口では「行けます」と言えても、実際に人がそろわなければ現場は止まります。

その意味で、広域で動ける体制と人員確保の確実性は、強い営業材料になります。

解決

既存の改修実績を、管理会社・賃貸系・ハウスメーカー向けの提案資料に変える進め方

まずやるべきことは、新しい営業先を増やす前に、既存実績を整理することです。

アパート改修の実績があるなら、それを「過去にやりました」で終わらせず、発注者が判断しやすい形に変えます。

整理する項目は、次のようなものです。

  • 対応した建物種別
  • 自社で管理した範囲
  • 協力会社を使った職種
  • 工程表の作り方
  • 天候による変更時の説明方法
  • 対応できるエリア
  • 人員確保の方法

ここで大切なのは、立派なパンフレットを作ることではありません。発注者の不安をつぶす材料をそろえることです。

次に、営業先の優先順位を決めます。

この会社の場合、最も自然なのはアパート改修や原状回復を持っている管理会社・賃貸系の会社です。すでに近い仕事をしており、現場の流れにも慣れているからです。

ハウスメーカー系の仕事も対応可能ですが、まずは「やりやすい」と感じているアパート改修側を優先したほうが、提案に無理がありません。

優先順位は、次のように考えると整理しやすくなります。

  1. すでに経験があるアパート改修・原状回復
  2. 複数棟や広域対応が求められる賃貸系管理会社
  3. 戸建てや外構も含むハウスメーカー系

営業で打ち出すべきポイントは、価格だけではありません。むしろ、価格勝負に寄せすぎると疲弊しやすくなります。

打ち出したいのは、次の3つです。

  • 対応エリアの広さ
  • 人員確保の確実性
  • 工程管理力

たとえば、「複数県で対応可能」「管理と簡単な作業は自社で対応」「職種別の協力会社を組んで工程管理できる」「天候による工程変更は事前に工程表で説明する」といった形です。

こうした情報は、社長にとっては当たり前かもしれません。けれど、初めて取引する発注者にとっては、依頼するかどうかを決める材料になります。

最後に、営業は一気に広げすぎないことです。

まずは、既存エリアで管理物件を持つ会社を絞ります。次に、アパート改修・原状回復の対応実績を伝えます。そのうえで、対応可能なエリアと人員体制を説明します。

問い合わせを待つのではなく、既存実績を根拠に提案する。これが、受注を増やすための切り替えになります。

まとめ

アパート改修の実績がある会社は、それ自体が大きな営業資産です。

ただし、実績は整理しなければ伝わりません。管理会社やハウスメーカーが見ているのは、「工事ができるか」だけではなく、「任せても現場が止まらないか」「人員を確保できるか」「工程を管理できるか」です。

自社で管理し、職種別の協力会社を組み、複数エリアに対応できる。さらに、天候などで工程が変わる場合も事前に説明できる。こうした現場での当たり前を、発注者向けの言葉に直すことが大切です。

まずは、アパート改修の実績を見える化することからです。そのうえで、管理会社・賃貸系・ハウスメーカーの順に、自社に合う発注者を選んで提案していく。

問い合わせ待ちから、実績を根拠にした営業へ。そこに切り替えられると、すでに持っている強みが新規受注につながりやすくなります。