前提

自社社員よりも協力職人の確保が、施工力と売上の上限を決めている

ある住宅関連工事会社では、自社社員の採用よりも、協力職人の確保が大きなテーマになっていました。現場監督は社内にいても、実際に工事を進める職人が足りなければ、受けられる仕事量には限界が出ます。

「うちの会社自体は採用はいらないんですけど、下請けの職人さんがどうしても人手不足で」

この悩みは、専門工事会社や住宅関連工事会社ではかなり身近です。社員数だけを見れば足りているように見えても、協力会社や一人親方の高齢化が進むと、施工力はじわじわ落ちていきます。

しかも、売上をもう一度立て直したい局面では、現場をまとめる人と、実際に施工できる人の両方が必要です。どちらか一方だけでは、会社のキャパシティは広がりません。

課題

求人サイトに出しても応募が来ず、若い職人との接点がほとんどない

この会社では、求人サイトを使ってみたことはありました。しかし、期待したような応募にはつながっていませんでした。

「求人サイトを使ってみたりもしますけど、なかなか募集も来ないですし、どうしたらいいか分からない」

過去には若い人が入ったこともありましたが、きっかけは公共系の求人窓口でした。しかも、それ以降は継続的に若手が入っているわけではありません。

新卒採用に取り組んだこともありましたが、応募はあっても採用までは進まなかったようです。建設業では、求人を出せば人が来るという時代ではなくなっています。特に職人採用は、経験者に絞るほど母集団が小さくなります。

その結果、「今いる人たちで何とか回す」状態が続きます。短期的には回っていても、次の世代がいないと、数年後の見通しが立ちにくくなります。

背景

高齢の職人に頼り続ける現場では、夏場や安全面の不安も大きくなる

職人不足の問題は、単に人数が足りないという話だけではありません。

相談の中では、年齢を重ねた職人が今も頑張って現場を支えている一方で、「本当にこのままで大丈夫なのか」という不安も出ていました。

「1、2年は耐えられると思います。でもその後は分からない」

「高齢の方に入ってもらうリスクの方が大きくて、夏場もそうですし、事故を起こしてからじゃ遅い」

この感覚は、現場を知っている経営者ほどリアルに感じるところです。長く付き合ってきた職人に頼れるのはありがたいことです。ただ、体力面や安全面を考えると、いつまでも同じ体制で走り続けるのは難しくなります。

さらに、職人の入れ替えが進まないと、会社は仕事を選べなくなります。受けたい仕事があっても施工体制が足りない。売上を戻したくても、現場を組めない。こうなると、営業努力だけでは解決しにくくなります。

解決

経験者待ちをやめ、未経験者と若手に届く採用導線を作る

職人採用でまず考えたいのは、「経験者を探す」だけに寄せすぎないことです。もちろん、経験者が来てくれれば即戦力になります。ただ、多くの会社が同じ人材を取り合っているため、条件面だけで勝負すると苦しくなります。

そこで、未経験者や第二新卒、地元の若手に向けて、育てる前提の採用導線を作ることが現実的な選択肢になります。

協力職人の高齢化に向き合うには、“今すぐ誰か来ないか”ではなく、“毎年若い人と接点が生まれる仕組み”を作ることが重要です。

具体的には、次のような動きが考えられます。

  • 公共系の求人窓口を放置せず、原稿を定期的に見直す
  • 求人サイトでは、給与や休日だけでなく仕事の特徴を具体的に書く
  • 未経験者が不安に感じる点を先回りして説明する
  • 地元の学校や若手との接点を少しずつ作る
  • 今いる若手や中堅が、仕事の魅力を語れる状態にする
  • 協力職人候補に対して、いきなり独立した職人像を求めすぎない

求人原稿では、万人受けを狙いすぎないことも大切です。大手企業と同じように「給与」「休日」「安定」だけを並べても、条件比較になりやすくなります。

むしろ、中小の建設会社だからこそ、仕事の中身を正直に、具体的に伝える方が刺さることがあります。たとえば、どんな現場に入るのか、どんな道具を使うのか、どのくらいで一人前に近づくのか、先輩はどう教えるのか。こうした情報は、未経験者にとって応募の判断材料になります。

また、過去に公共系の求人窓口から若い人が入った実績があるなら、そこは捨てるべきではありません。応募が少ないから終わりではなく、求人票の見せ方、仕事内容の表現、写真、面接までの対応を見直す余地があります。

まとめ

協力職人の高齢化は、すぐに表面化しない分、後回しになりやすい課題です。今は何とか回っていても、数年後に一気に施工力が落ちる可能性があります。

ただし、必要以上に不安になる必要はありません。まずは、今の協力体制で何年持つのか、どの工種が先に厳しくなりそうかを見える形にすることです。そのうえで、経験者採用だけでなく、未経験者や若手を育てる前提の採用活動に少しずつ舵を切っていくことが大切です。

「情報を待っている状態で、こちらから発信できていない」

そう感じているなら、最初の一歩は発信内容を整えることです。求人票、学校との接点、若手向けの説明、協力職人候補への声かけ。どれも一度で完成するものではありませんが、続けることで“選べる状態”に近づいていきます。