前提

人脈と紹介で仕事をつないできた専門工事会社ほど、新規開拓の進め方に迷いやすい

専門工事会社では、長く人脈や紹介で仕事をつないできた会社が少なくありません。

「昔からの付き合いで何とかやってきた」「知り合いの社長から声がかかる」。これは建設業では自然な営業の形です。むしろ、現場をきちんと納めてきたからこそ続いている関係でもあります。

ただ、社員に還元したい、会社を少し大きくしたい、継続案件を増やしたいとなると、社長一人の人脈だけでは限界が見えてきます。

そこで新規開拓を考えます。名刺交換会に行く。紹介を頼む。銀行や知人からつないでもらう。飛び込みで会社を回る。どれも選択肢ではあります。

しかし、専門工事の営業では、会えたことと仕事になることは別です。

「絶対会えないような人と会えた。でも、結局つながらなかった」という経験をした会社もあります。扉は開いたのに、見積もり依頼にも、試し発注にもならない。このズレが、新規開拓を難しくしています。

課題

会社名に会いに行っても、発注に関わる部門や人に届かなければ仕事にならない

新規開拓でよく起きるのが、相手先の会社名だけを見て動いてしまうことです。

大手企業とつながれる。元幹部の人脈がある。社長を紹介できる。そう聞くと、期待したくなります。ただし、建設業では「その会社の誰と会うのか」が非常に重要です。

相談の中でも、「大手に人脈がありますと言われても、そもそも誰なんですか、どの部門なんですか、という話になる」という感覚が出ていました。

社長に会えば進む会社もあります。ですが、規模が大きくなるほど、発注や協力会社選定は現場側、工事部門、メンテナンス部門、地域窓口などに分かれます。社長ルートがあっても、実務の発注先に届かなければ話は進みません。

飛び込みも同じです。受付や事務の方に止まり、問い合わせフォームに流れるだけでは、本当の営業接点にはなりにくいです。

「どなたか建築の方はいませんか」と聞いても、呼んでもらえない。電話も同じで、最初の窓口で止まる。こうなると、社長が動いても効率はかなり悪くなります。

背景

専門工事の営業は「仕事をください」ほど難しく、任せきりの営業代行と相性が悪い

専門工事会社の新規開拓が難しい理由は、相手もプロだからです。

工務店、ゼネコン、管理会社、メンテナンス部門の担当者は、現場感を持っています。話し方、見積もりの出し方、対応範囲、現場での段取り。そうした細かい部分から、「この会社に任せられるか」を見ています。

そのため、建設業を知らない人が表面的に営業しても、急所を外しやすいです。

「仕事をくださいという営業は相当難易度が高い」という言葉には、かなり本質があります。協力会社を探す営業なら進めやすい場面があります。こちらから仕事を渡す前提だからです。ですが、新しい取引先から仕事をもらう営業は、相手にリスクを取ってもらう必要があります。

ここで営業代行や顧問人脈を使う場合も、丸投げは難しいです。

自社の施工品質、得意な工事、対応できる規模、過去の現場感。これを一番語れるのは、多くの場合、社長です。だからこそ、社長同行が必要な場面があります。

ただし、社長が全部の会社を足で回るのも現実的ではありません。必要なのは、社長が動く前に、ターゲットと面談相手を絞ることです。

解決

会う前にニーズ、部門、キーマン、追客方法を設計してから社長が同行する

新規開拓を始める前に、まず決めるべきことがあります。

それは、どの会社に行くかではなく、どの部門の誰に何を提案するかです。

大きくは、次の順番で整理すると進めやすくなります。

1つ目は、相手先に今ニーズがあるかです。協力会社を探しているのか。既存業者で足りているのか。特定エリアで手が足りないのか。小口の改修を任せたいのか。ニーズがない相手に会っても、名刺交換で終わりやすくなります。

2つ目は、会うべき部門です。社長、工事部長、現場責任者、メンテナンス担当、リフォーム部門、地域担当。会社によって入口は違います。ここを外すと、良い会社でも発注に届きません。

3つ目は、紹介者や顧問の現在の関係性です。過去に在籍していた、というだけでは弱い場合があります。今も仕事上の接点があるのか。担当者に電話できるのか。相手が「この人の紹介なら話を聞こう」と思う関係なのか。ここは事前に確認したいところです。

4つ目は、面談後の追客です。初回で仕事になることは多くありません。とはいえ、ただ何度も訪問すればよいわけでもありません。面談後に何を確認するのか、どの案件で試してもらうのか、次回誰を交えて話すのかを決めておく必要があります。

「名刺交換だけはできた」としても、その後の接続がなければ消えてしまいます。だから、面談前から次の一手まで設計しておくことが大切です。

営業代行や顧問人脈を使う場合も、任せきりにしない方がよいです。外部の力は、入口を開ける、候補を探す、相手の部門を確認する、社長の時間を有効に使うために活用します。

最終的には、社長や社内の詳しい人が、自社の強みを自分の言葉で伝える必要があります。外部に任せるのではなく、外部を使って社長の営業精度を上げるという考え方です。

まとめ

紹介や人脈は、専門工事会社にとって大切な営業資産です。ただし、紹介されたから仕事になるわけではありません。

大事なのは、会社名ではなく、部門、担当者、現在のニーズ、面談後の追客です。

飛び込みや名刺交換を否定する必要はありません。社長が自分で動くことで得られる感覚もあります。ただ、限られた時間を使うなら、事前にターゲットを絞り、会うべき人を決め、面談後の動きまで考えておく方が成果につながりやすくなります。

新規開拓は、気合いだけで広げるものではありません。会う前の設計で勝負が半分決まると考えると、次の動きがかなり整理しやすくなります。