前提

社長や幹部が現場を見て昇給を決めてきた会社が、評価の伝え方を整えようとしている状況

ある建設会社では、これまで社長や幹部が現場での働きぶりを見ながら、給与や昇給を判断してきました。小さな会社ではよくある形ですし、決して悪いことではありません。

むしろ、頑張っている人を見て、早めに上げてあげたいという気持ちがある会社でした。面接時にも「まず少し見させて。できるようなら次から上げるから」と伝えるような、現場感のある運用をしていました。

ただ、採用人数が増えたり、若い社員が増えたりすると、社長の頭の中だけで評価を回すのが難しくなります。社員側からすると、「本当に見てもらえているのか」「何ができたら上がるのか」が見えにくくなるからです。

課題

昇給チャンスを求人に書いても、基準と面談がなければ不信感につながる問題

求人票では、「昇給あり」「随時昇給」「年数回チャンスあり」と書くことがあります。これは応募者にとって魅力になります。

一方で、書いた以上は運用が必要です。昇給の機会があると伝えたのに、本人には何も説明がない。面談もない。何が足りないかも分からない。これでは、せっかくの制度が逆に不満の原因になります。

実際に、幹部からはこんな本音も出ていました。

「3か月ごとに、給料上がりませんって言わなあかんのが嫌だよね」

この感覚はとても自然です。上げられない理由を伝えるのは、経営側にとっても負担があります。ただ、伝えないままだと、社員は自分で理由を想像します。

「見てくれていないのかな」 「頑張っても変わらないのかな」 「結局、社長の気分なのかな」

こうなると、評価制度がないこと以上に、納得感がないことが問題になります。

背景

若い社員ほど「何を頑張れば上がるのか」を言葉で知りたがっていること

昔ながらの職人育成では、「見て覚えろ」「ついてこれる人だけ残る」という空気がありました。もちろん、現場仕事には体で覚える部分もあります。

ただ、今の若い社員は、理不尽に強くなったというより、説明を求めるようになっています。

何を覚えれば次に進めるのか。どの作業を任せられるようになれば評価されるのか。安全面や報連相も見られているのか。こうしたことが分かれば、頑張る方向を合わせやすくなります。

会話の中でも、「あげる理由が明確にあれば、若い子たちも頑張るはず」という見立てがありました。これは、評価制度をきれいに作るというより、現場の育成に言葉を足すという話です。

解決

半年に1回の面談から始め、昇給の理由と次の課題を必ず伝える運用

最初から細かい評価制度を作り込む必要はありません。中小建設会社で現実的に始めるなら、まずは面談のタイミングを決めることです。

たとえば、ボーナス前や半期ごとに、社長または幹部が一人ずつ話す。新入社員だけは入社後1か月または3か月で短い面談を入れる。これだけでも、社員側の受け止め方は変わります。

面談で見る項目は、難しい言葉にしなくても構いません。

  • 現場で任せられる作業が増えたか
  • 遅刻や欠勤、報連相に安定感があるか
  • 安全面の指示を守れているか
  • 後輩や周囲と協力できているか
  • 次に覚えるべき作業が明確か

昇給する場合は、「ここができるようになったから上げる」と伝えます。昇給しない場合も、「ここがまだ足りない。次はここを見たい」と伝えます。

大事なのは、上げる・上げないだけで終わらせないことです。社員が次に何をすればよいか分かるようにします。

評価制度は、給与を決めるためだけのものではなく、若い職人に『自分は見てもらえている』と感じてもらうためのコミュニケーションの仕組みです。

まとめ

昇給や評価を社長の感覚で決めること自体が悪いわけではありません。むしろ、小さな会社では、社長が一人ひとりを見ていることが強みになることもあります。

ただ、その強みは、社員に伝わって初めて意味があります。

「頑張ったら上がる」だけではなく、「何を頑張れば上がるのか」を伝える。上がらないときも、次に何をすればよいかを伝える。これを半年に1回でも続けると、若い社員の納得感は変わります。

採用に力を入れるなら、入社後の評価と面談もセットで整えることが大切です。求人票で良いことを書くだけでなく、入った後にその言葉を運用できる会社が、結果的に人を残しやすくなります。