専門学校訪問はしているものの、日本人の新卒採用が数年止まっている状態
ある建設会社では、以前から専門学校への訪問を続けていました。採用担当は限られており、人事部があるわけではありません。担当者が学校に足を運び、求人票を出し、学生との接点をつくってきました。
「毎年じゃないですけど、学校には行ってきました。1人も入らなかった年もあります」
会社全体として新卒がまったく入っていないわけではありません。ただ、日本人の新卒に限ると、ここ数年は採用できていない。外国籍の若手が入ることはあっても、言葉や配属の面で現場にどう当てるかが難しい。
学校訪問をしているのに、欲しい層に届かない。この状態は、建設業の中小企業では珍しくありません。問題は、学校に行っているかどうかではなく、若手に伝わる採用活動になっているかです。
「大工として3年修業すれば食える」という従来の見せ方だけでは響きにくいこと
以前であれば、職人の世界には分かりやすい魅力がありました。手に職をつける。腕が上がれば稼げる。一人前になれば仕事に困らない。こうした言葉は今でも本質的には間違っていません。
ただ、若手に伝える言葉としては、そのままでは届きにくくなっています。
「大工で3年やれば食っていける、という言い方にあまり食いついてこない若い子が増えています」
学生側は、仕事内容だけでなく、入社後に誰が教えてくれるのか、社員として守られるのか、休みや働き方はどうなるのか、自分でも続けられそうかを見ています。
つまり、従来型の求人票に工種名と給与と勤務地を書くだけでは、比較の土俵に乗りにくいのです。大手企業や知名度のある会社と並んだとき、中小建設会社は条件だけで勝つのが難しい場面もあります。
だからこそ必要なのは、仕事の魅力を自社の言葉に変えることです。単に「大工募集」「施工管理募集」ではなく、その会社で働くとどんな経験ができるのか、どんな職人や先輩に教わるのか、どんな現場を支えているのかを伝える必要があります。
採用担当が少なく、人事部もない会社ほど学校訪問が単発になりやすいこと
中小建設会社では、採用だけを専門に見る人がいないことが多いです。現場管理や総務、経営層が兼務しながら学校を回る。忙しい時期には訪問が後ろ倒しになり、年によって活動量にも差が出ます。
「担当2人で専門学校に行ってきました」
このような体制でも、採用活動はできます。ただし、属人的になりやすいのが難点です。誰が、どの学校に、いつ行き、何を話し、次にどうつなげるのか。ここが記録されていないと、毎年同じようにゼロから始まってしまいます。
また、学校側も一度訪問しただけでは学生に強く薦めにくいものです。先生にとっても、継続して顔を出し、卒業生が働いている様子が分かり、入社後のフォローが見える会社のほうが紹介しやすくなります。
学校訪問は、求人票を届ける活動ではありません。学校との信頼関係を積み上げる活動です。
さらに、経営者や採用担当だけが説明するより、若手社員やその学校の出身者が話すほうが伝わる場面もあります。学生にとっては、会社の説明よりも「自分に近い先輩がどう働いているか」のほうが想像しやすいからです。
求人票の書き換え、学校接点、若手社員の巻き込みを年間活動として組み直すこと
学校訪問で成果を出すには、まず採用活動を年間で設計し直すことが有効です。思いついた時期に訪問するのではなく、学校側の就職活動の流れに合わせて動きます。
最初に見直したいのは、求人の見せ方です。職種名を並べるだけではなく、次のような要素を言語化します。
- 社員職人として採用する安心感
- 入社後に誰が教えるのか
- 最初の1年で覚えること
- どんな現場を支えている仕事なのか
- 施工管理と職人の違いや選択肢
特に職人採用では、社員として育てる姿勢を伝えることが大切です。若手にとって、いきなり一人親方の世界に入るように見える求人は不安があります。一方で、会社に所属しながら技術を学べるなら、安心材料になります。
次に、学校との接点を継続させます。年1回の訪問だけで終わらせず、求人票提出、先生への近況共有、職場見学の案内、内定者フォロー、卒業生の状況報告など、接点を分けて考えます。
いきなりすべてをやる必要はありません。まずは重点校を数校に絞り、毎年同じ学校に顔を出す仕組みをつくることから始めます。
若手社員がいる場合は、説明の場に巻き込むことも有効です。経営者が会社の方向性を話し、採用担当が制度や条件を説明し、若手社員が日々の仕事を話す。役割を分けると、学生は入社後の姿を描きやすくなります。
「経営陣が毎回学校に行くのではなく、若手が出身校に行って説明する形で採用が回り始めた会社もあります」
ここで大事なのは、真似をすることではありません。自社に若手社員がまだ少ないなら、まずは採用担当が話す内容を整える。若手が1人でも入ったら、翌年はその声を求人票や説明資料に反映する。段階的に進めれば十分です。
学校訪問の成果は、すぐに採用人数だけで判断しにくい面もあります。先生との関係、学生の反応、見学につながった数、応募前の問い合わせ数なども見ていくと、活動の改善点が見えます。
採用活動は、候補者を増やすための積み上げです。毎年1人来るか来ないかの状態から、見学者を増やし、応募者を増やし、最終的に採用できる人数を増やす。その順番で考えると、打ち手が整理しやすくなります。
まとめ
専門学校を回っているのに若手が採れないとき、訪問そのものが無駄なわけではありません。むしろ、すでに学校接点があることは大きな土台です。
見直すべきは、若手に伝える言葉、学校との関係づくり、社内の説明体制です。
「手に職がつく」だけではなく、社員として育てること。どんな現場で、誰に教わり、どんな一人前を目指すのかを伝えること。学校訪問を単発にせず、年間の活動として続けること。
この三つがそろうと、採用活動は少しずつ属人的な動きから会社の仕組みに変わります。中小建設会社にとっては、採用担当が少なくても続けられる形にすることが、若手採用の第一歩です。



























































































