前提

内装工事の引き合いを増やしたい一方で、現場管理を任せられる人が限られている状況

ある専門工事会社では、木材や家具の販売に加えて、内装工事も手がけています。木を使った難しい造作や、家具を含む現場には強みがありますが、工事部門の体制には課題がありました。

現場管理を最初から最後まで任せられる人は、実質的に限られています。経験の浅い社員も育ってきてはいるものの、単独で大きな現場を最初から任せるにはまだ不安が残ります。さらに、少し前に管理できる人材が退職し、その後任が見つかっていない状態でした。

「正直、今は現場をちゃんと管理できるのが一人なんです。案件が重なると、断らないといけない場面が出てきます」

営業を強化したい。大手や中堅の内装会社との接点も増やしたい。けれど、受注できても現場を回せなければ意味がない。この板挟みは、建設業の中小企業でよく起きます。

課題

新規開拓で仕事が増えても、施工体制が追いつかなければ受けきれないこと

新規の取引先を増やすには、当然ながら営業活動が必要です。会社説明をし、実績を伝え、見積依頼をもらい、初回対応で信頼をつくっていく流れになります。

ただ、施工体制が薄い会社にとっては、見積依頼が来ること自体がプレッシャーになることがあります。

特に内装工事や造作工事では、受注後に必要になるのは材料や家具だけではありません。現場管理、職人手配、工程調整、納まりの確認、現場での判断が必要です。管理者が少ない状態で案件が重なると、「やりたいけれど受けられない」という場面が出てきます。

新規先に対して初回から断りが続けば、次の相談につながりにくくなります。相談者も、その点をかなり気にしていました。

「せっかく声をかけてもらっても、今重なっているのでできません、となるのが怖いんです」

これは単なる人手不足ではなく、営業戦略の問題でもあります。どれだけ良い販路を開拓しても、受け皿がなければ売上にはなりません。反対に、人を先に採用しても、安定した仕事がなければ固定費だけが増えてしまいます。

背景

職人や協力会社を常時抱えているわけではなく、難しい木工ほど人の手配が制約になること

この会社には、木材や家具に関する強みがあります。過去には、大型施設の家具をまとめて納めたり、和室の特殊な造作を任されたりした経験もあります。木の種類、突板、曲面、現場での納まりなど、一般的な内装工事よりも一段難しい相談に対応できる会社です。

ただし、難しい仕事ほど「誰が現場で納めるか」が重要になります。

腕のいい大工や協力会社はいるものの、常時抱えているわけではありません。地元なら頼める職人も、遠方の現場までは行けないことがあります。家具を送るだけなら対応できても、取り付けまで含めると一気に制約が増えます。

「送るだけならいいんです。でも取り付けまでとなると、職人が動けるかどうかが問題になります」

また、経験の浅い社員にすべてを任せるには時間が必要です。ある程度ルートに乗った現場なら任せられても、最初から一人で判断が必要な現場はまだ難しい。結果として、社内のベテランに負荷が集中します。

ここで無理に営業だけを強めると、管理者一人に案件が集まり、品質や対応スピードに影響が出ます。かといって、採用だけを先に進めても、入社後に任せる案件がなければ育成もしづらくなります。

つまり、案件開拓と採用は別々のテーマではなく、どの仕事を増やし、どの人を採るかをセットで考える必要があるということです。

解決

まず受けられる案件の条件を決め、営業と採用を同じ計画の中で進めること

このような状況では、「営業が先か、採用が先か」を二択で考えすぎないほうが現実的です。

もちろん、会社によって優先順位は変わります。ただ、共通して言えるのは、先に自社の受け皿を見える化することです。

たとえば、次のような条件を整理します。

  • 今の管理体制で同時に動かせる現場数
  • ベテランが最初から入る必要がある案件と、途中確認で回せる案件
  • 材料・家具のみで対応できる案件
  • 取り付けまで対応できるエリア
  • 協力会社や大工を確保しやすい時期と地域
  • 高難度でも利益と実績につながる案件の条件

この整理ができると、営業先に伝える内容も変わります。

たとえば、現場管理者が少ない時期に「内装工事一式を何でも受けます」と言うと、受けられない相談まで来てしまいます。一方で、「木を使う造作家具」「特殊な木工部分」「材料選定を含む相談」「地元エリアでのスポット対応」などに絞れば、今の体制でも対応しやすくなります。

営業では、いきなり大きな工事を取りにいくより、まずは自社の強みと体制に合う案件から入るのが安全です。初回対応で信頼をつくり、実績ができたところで対応範囲を広げるほうが、無理がありません。

採用についても同じです。「誰でもいいから現場管理を採る」ではなく、どの役割を任せたいのかを明確にする必要があります。

  • ベテランの右腕として動ける施工管理経験者
  • 家具や木工の知識を持つ現場担当者
  • 職人との調整が得意な段取り役
  • 将来的に工事部門を任せられる管理職候補

求める人物像が曖昧なまま求人を出しても、なかなか採用にはつながりません。建設業の採用では、給与や条件だけでなく、「どんな仕事を任せるのか」「どんな技術に関われるのか」「社長や責任者が何を期待しているのか」を伝えることが重要です。

営業と採用をつなげて考えるなら、進め方は次のようになります。

1. 今の体制で受けられる案件を定義する 2. その条件に合う取引先・案件だけを優先して開拓する 3. 初回案件で実績と関係性をつくる 4. 継続的に来そうな仕事の種類を見極める 5. その仕事を増やすために必要な人材を採用する

この順番なら、仕事がないのに人だけ増えるリスクも、仕事が来たのに回せないリスクも抑えやすくなります。

もちろん、採用には時間がかかります。だからこそ、営業を始めてから慌てて採るのではなく、案件開拓と並行して採用の準備を進めておくことが大切です。

まとめ

現場管理者が少ない会社にとって、販路開拓は期待と不安が同時に出てくるテーマです。新しい取引先ができれば成長のきっかけになりますが、受けきれない案件が増えると、逆に信頼を落としてしまう可能性もあります。

だからこそ、最初に考えるべきなのは「どこに営業するか」だけではありません。

今の体制で受けられる案件は何か。どの仕事なら強みを出せるのか。どこから先は人を採らないと難しいのか。この線引きをしてから動くことで、営業も採用も判断しやすくなります。

案件開拓と採用は、建設業ではニワトリと卵の関係です。どちらか一方を完璧にしてから進めるのではなく、受けられる仕事を見極めながら、人を増やす計画を同時に持つことが現実的な成長につながります。