昔は4年で一人前を目指せたが、今は働き方も習得時間も変わっている建設会社の現在地
ある建設会社では、若手職人の育成について長く悩んでいました。以前は、親方と一緒に現場に入り、長い時間をかけて技術を覚え、数年後には一人前として外に出ていくような流れがありました。
ところが今は、同じやり方が通用しにくくなっています。現場で働ける時間、若手の働き方への考え方、教える側の余力が変わってきたからです。
相談者はこう話していました。
「昔のみっちり4年で覚えた量を、今の働き方でやろうとすると、8年くらいかかる感覚なんです」
これはかなり重要な感覚です。技術の難易度が下がったわけではありません。むしろ品質要求や安全管理、顧客対応、近隣対応など、職人に求められるものは増えています。
昔の育成年数だけを残しても、今の若手が育つとは限りません。育成モデルそのものを、今の働き方に合わせて組み直す必要があります。
独立前提の職人育成では、会社に技術と人が残りにくい状態
この会社には、外注先に多くの仕事を任せている現実がありました。もちろん協力会社の力は大切です。ただ、経営側としては「この仕事を自社の社員でできたら、もっと会社に力が残るのではないか」という思いもありました。
「なんでこんなに外にお金を払っているんだろう。社員でできるようになれば、会社はいくらでも払えるのに」
この言葉には、内製化への強い問題意識があります。
一方で、これまでの職人育成は、一定期間学んだら外へ出る、あるいは個人事業主的に働くという発想が強く残っていました。そのため、せっかく育てても会社の中に技術が蓄積しにくい面があります。
また、今の若手は「とにかく長く現場に出て覚えろ」という価値観だけでは動きません。休みや生活も大事にしたい。安定して働きたい。会社の中で将来像が見えるなら頑張りたい。そうした感覚が強くなっています。
独立を否定する必要はありません。ただ、独立だけをゴールにした育成では、会社にとっても本人にとっても選択肢が狭くなります。
住宅施工の担い手が減るなかで、社員職人という選択肢が現実味を帯びている状況
住宅施工の現場では、職人の高齢化が進んでいます。特定の工種では、今後さらに担い手が少なくなることが見えています。会社としては、協力会社に頼るだけでなく、自社で施工力を持つ必要性を感じていました。
ただし、単に社員として職人を雇えばよいわけではありません。社員職人として働き続けるには、キャリアの見通しが必要です。
たとえば、若手本人から見れば、次のような問いがあります。
- 何年目で何ができるようになるのか
- どの技術を覚えると評価されるのか
- 現場のリーダーになる道はあるのか
- 複数の工種を覚える意味はあるのか
- 独立したい場合と社内に残る場合で、どんな違いがあるのか
この見通しがないと、若手は「この先どうなるんだろう」と不安になります。
相談の中では、10年単位で技術と役割を設計する考え方が出ていました。最初の数年は基礎技術を身につけ、次に複数工種や現場管理の理解を深め、将来的にはチームを持つ。そうした形です。
昔の「4年で一人前」ではなく、「10年でチームを動かせる社員職人へ」という発想です。
社員職人として残れる道と、独立できる道を両方用意する育成設計
これからの職人育成では、独立か社員かの二択ではなく、段階ごとの選択肢を持たせることが大切です。
たとえば、次のような道筋が考えられます。
- 入社初期は安全、道具、基本作業、現場の流れを覚える
- 数年かけて主担当工種を持つ
- 希望や適性に応じて、関連工種も経験する
- 後輩指導や小チームの段取りを任せる
- 将来的には現場リーダー、部門リーダー、または独立も選べる
ここで重要なのは、社員として残ることにも魅力を持たせることです。
「独立しなければ稼げない」「外に出ないと一人前ではない」という設計のままだと、会社に人が残りません。反対に、社員職人として技術を高め、チームや案件を動かせるようになれば、会社の中でも十分に評価される道がつくれます。
もちろん、待遇だけで若手を引きつけるのは簡単ではありません。ただ、外注している仕事を内製化できる力を持つ社員は、会社にとって利益を生む存在です。その前提に立てば、育成投資や評価制度の考え方も変わります。
「いい人材には投資していい。そうしないと伸びない」
この感覚は、社員職人づくりの出発点になります。
職人を“将来外に出る人”としてだけ見るのではなく、“会社の施工力をつくる人”として育てることが、内製化の第一歩になります。
まとめ
昔ながらの職人育成は、長時間現場に入り、親方の背中を見て覚え、数年後に独り立ちする流れが中心でした。しかし、今は働き方も若手の価値観も変わっています。
その中で「4年で一人前」をそのまま求めると、教える側も教わる側も苦しくなります。現実的には、10年単位で技術、役割、評価を設計するほうが合っている会社も増えています。
社員職人として長く働ける道をつくる。希望者には独立の道も残す。複数工種や現場管理を学べる幅を持たせる。こうした設計ができると、若手にとっても会社にとっても将来像が見えやすくなります。
「育てても出ていく」から、「育てるほど会社に施工力が残る」へ。
この転換が、これからの中小建設会社の職人採用・育成で大きなテーマになっていきます。



























































































