前提

売上を大きく伸ばすより、外注費を抑えて社員に還元したい数億円規模の専門工事会社

専門工事会社の中には、売上を無理に伸ばすよりも、今ある仕事の中で利益を残したいと考える会社があります。

「もう売上は今の取引先だけでいい。少しでも社員に還元したい」という感覚です。これはかなり現実的な悩みです。大きな工事を取れば売上は跳ねます。ただ、人数が少ない会社ほど、見積もり、段取り、現場対応、外注手配まで一気に負荷が増えます。

そのため、利益改善の入口は必ずしも新規売上ではありません。まず見るべきは、外注費として出ていくお金です。

ガラス工事やサッシ工事のような専門工事では、一人親方や協力会社に依頼する場面が多くあります。もちろん外注が悪いわけではありません。繁閑に合わせやすく、固定費を抱えずに済む強さがあります。

一方で、毎月のように同じ種類の作業を外へ出しているなら、そこには内製化できる余地があるかもしれません。

課題

「人を採りたい」だけでは、どの採用が利益を増やすのか分からない

利益を上げたいと考えたとき、多くの会社で最初に出る言葉が「人がほしい」です。

ただ、ここで大事なのは「採用したい」ではなく、何のために誰を採るのかです。

実際には、欲しい人材のイメージが途中で変わることがあります。最初は「右腕になる管理者がほしい」「施工管理がほしい」と考えていても、外注費の中身を見ていくと、利益を圧迫しているのは別の場所だった、ということがあります。

たとえば、採用候補は職人だけではありません。

  • 現場作業を内製化する自社職人
  • 見積もりや段取りを支える施工管理・現場管理
  • 社長や現場担当の事務負担を減らす事務人員
  • 材料や道具の移動を担う運搬・ドライバー人員

「自社職人を育てる」という話になりやすいのは確かです。外注費を直接減らせるからです。ただし、事務や運搬を入れることで、結果的に外注や手戻りが減る会社もあります。

つまり、採用判断の本質は、職種名ではなく利益への効き方です。

背景

ハローワークに出せば採れた時代ではなく、採用は固定費化と教育体制まで見られる

自社職人を抱える判断が難しいのは、採用市場が厳しくなっているからです。

以前は「ハローワークに出せば人が来た」という感覚を持つ会社もありました。ですが、今はその前提がかなり変わっています。採用には手間も費用もかかります。入社後の教育も必要です。

さらに、職人を雇えば給与が発生します。仕事が少ない月でも固定費は出ます。だからこそ「人を採っても結局、固定費が増えるだけではないか」という不安が出るのは自然です。

この不安を無視して採用すると、利益改善のための採用が、逆に資金繰りを重くすることがあります。

もう一つ見落としやすいのが、教える仕組みの有無です。

自社職人を採るなら、誰が教えるのか。どの仕事から任せるのか。外注に出していた作業をどの順番で内製化するのか。ここが曖昧なままだと、結局ベテランや社長に負荷が集まります。

「人が増えれば事業を残せる」という期待はあります。実際、長期的には大切な視点です。ただし、そのためには採用だけでなく、育成と仕事量の見通しをセットで考える必要があります。

解決

外注費の内訳、回収できる仕事量、教育できる順番から採用職種を決める

自社職人を採るべきかどうかは、気合いで決めるものではありません。順番に整理すると、判断しやすくなります。

まずは、外注費をひとまとめに見ないことです。

「外注費が高い」ではなく、どの作業に、どの頻度で、どれくらい払っているのかを見ます。毎月発生している外注なのか。突発対応なのか。専門性が高く、外に任せた方がよい仕事なのか。ここを分けます。

次に、その仕事を社員化しても回収できるかを見ます。判断軸は、固定費にしても埋まる仕事量があるかです。

たとえば、職人を1人採った場合、年間を通じて任せられる仕事があるか。閑散期に何をしてもらうか。現場に出ない日は、運搬、軽作業、現調補助、片付け、見積もり補助などに回せるか。ここまで考えると、採用後の姿が見えやすくなります。

そのうえで、採用職種を決めます。

  • 外注している現場作業が多いなら、職人採用を検討する
  • 段取りや見積もりで社長が詰まっているなら、管理・補助人員を検討する
  • 現場以外の雑務で時間を失っているなら、事務人員を検討する
  • 運搬や移動で外注・手待ちが出ているなら、ドライバー人員を検討する

ここで大切なのは、いきなり理想の組織を作ろうとしないことです。まずは、一番お金が漏れている業務から考える方が現実的です。

また、採用市場が厳しい以上、募集を出すだけでは足りません。未経験者を採るのか、経験者を採るのか。給与水準はどうするのか。入社後3か月で何を覚えてもらうのか。誰が面倒を見るのか。ここまで決めてから動く必要があります。

自社職人の採用は、短期の利益改善だけでなく、将来の事業継続にもつながります。ただし、外注費を減らしたいからすぐ採る、ではなく、利益改善と固定費化のバランスを見ながら段階的に進めるのが安全です。

まとめ

外注費が膨らんで利益が残らないとき、自社職人の採用は有力な選択肢です。

ただし、採用そのものが目的になると危険です。見るべき順番は、外注費の中身、内製化できる仕事量、固定費を回収できる見通し、教育体制です。

職人を採るべき会社もあれば、先に事務や運搬、管理補助を入れた方が利益に効く会社もあります。

「人がほしい」と感じたときほど、まずはどの人を採れば利益が最大化するかを整理することが大切です。そこが見えると、採用は単なる人員補充ではなく、会社に利益を残すための投資になります。