前提

若手大工を採りたい一方で、現場側の受け入れに不安が残っている建設会社の現在地

ある専門工事会社では、長年つながりのある学校経由で若手を採用してきました。会社としては「本来は大工が欲しい」という思いがあります。一方で、実際に若手を預けられる親方が限られており、入社後に本人が「じゃあ俺、どうしたらいいんですか」と感じてしまう場面がありました。

相談者からは、こんな言葉もありました。

「大工に関しては、受け入れ体制がまだできていないんです」

建設業の採用では、求人票を出すことや学校に挨拶へ行くことに目が向きがちです。ただ、若手採用では入社後の最初の数か月がとても大きいです。特に高校新卒や未経験に近い若手の場合、現場に入った瞬間から自走できるわけではありません。

採用の入口を広げる前に、「誰が、どの仕事で、どこまで面倒を見られるか」を決めることが、若手採用の土台になります。

課題

欲しい職種と受け入れられる職種がずれている状態

この会社が欲しいのは大工です。ところが、現状で受け入れやすい職種は別にありました。基礎や外装に近い職種では、職長側から「人が欲しい」という声があり、受け入れの意思も比較的はっきりしていました。

一方、大工については事情が違います。教えられる人が年配になってきており、若手を育てる時間や気持ちの余裕が十分にあるとは言い切れません。

「使える人ならありがたい。でも、抱えて面倒を見なきゃいけないとなると難しい」

これは多くの建設会社で起きていることだと思います。経営者は若手を入れたい。現場も人手は欲しい。ただし、未経験者を育てるとなると、通常の作業効率が落ちる場面もあります。そこを誰が引き受けるのかが曖昧なまま採用すると、本人も現場も苦しくなります。

さらに高校新卒採用では、退職やミスマッチが学校内で伝わりやすいという特徴があります。たとえば「タイルで入ったのに大工に回された」「大工だと思ったのに別の仕事ばかりだった」と本人が感じると、後輩や先生にその印象が残ります。

求人票上の見せ方と、入社後の実態がずれることは、次年度以降の採用にも影響します。

背景

職人不足を見越して間口を広げたいが、広げすぎると定着リスクも増える状況

この会社では、大工だけでなく、将来的に不足が見込まれる職種にも関心がありました。住宅の高付加価値化に伴い、内装仕上げやタイルのような職種も重要になってきています。

ただし、職種を増やして求人票を出せば採用がうまくいくわけではありません。むしろ受け入れ準備ができていない職種まで広げると、入社後に「聞いていた話と違う」となりやすくなります。

若手採用では、本人の希望もまだ固まりきっていないことが多いです。木を扱いたい、大工に憧れがある、手に職をつけたい、安定して働きたい、休みも大事にしたい。入り口の動機はさまざまです。

だからこそ、会社側が最初に整理すべきなのは「何でもできます」ではなく、次のような現実的な受け入れ条件です。

  • 今すぐ新人を預けられる職種はどこか
  • その職種で誰が最初の面倒を見るのか
  • 入社後に別職種へ進む可能性をどう説明するのか
  • 本人の希望と会社都合をどうすり合わせるのか

「間口を広げる」こと自体は悪くありません。ただし、広げる順番を間違えると、採用できても定着しない状態になります。

解決

最初の採用職種は“欲しい職種”ではなく“育て切れる職種”から決める進め方

このような状況では、まず「本当に欲しい職種」と「今、育て切れる職種」を分けて考えるのが現実的です。

たとえば、将来的には大工を増やしたいとしても、現時点で大工の受け入れが弱いなら、最初の採用ターゲットは受け入れ体制が整っている職種に絞る選択もあります。そのうえで、大工については教育体制づくりを並行して進めます。

ポイントは、若手に対して最初から正直に伝えることです。

「うちは大工の仕事もある。ただ、最初の一定期間は基礎や外装も経験しながら、適性を見ていく」

このように伝えれば、入社後の配置にも納得感が出やすくなります。反対に、求人票では大工だけを強く打ち出し、実際には別の仕事が多いとなると、不信感につながります。

また、学校訪問でも「今はこの職種で受け入れ体制を整えています」「将来的には大工や複数職種に広げたいです」と説明できると、先生側も生徒に紹介しやすくなります。

採用職種を決めるときは、次の順番で整理すると進めやすくなります。

1. 会社として本当に増やしたい職種を出す 2. 現場で受け入れ可能な職種を出す 3. 両者が重なる職種を優先する 4. 重ならない職種は教育体制づくりを先に進める 5. 求人票には入社後の育成ルートを正直に書く

若手採用では、「採る力」より先に「育てられる現場」をつくることが、結果的に採用力になります。

まとめ

大工が欲しいのに、大工を受け入れられる親方がいない。これは珍しい悩みではありません。むしろ職人の高齢化が進む建設会社では、かなり現実的な課題です。

この状態で無理に求人の間口だけを広げると、採用後のミスマッチが起きやすくなります。特に学校経由の採用では、入社後の評判が次の採用に影響します。

まずは、欲しい職種と育てられる職種を分けて見ること。そして、今受け入れられる職種から採用を始めつつ、本命職種の教育体制を整えること。

「本当は大工が欲しい。でも、受け入れできていない大工が欲しいと言い続けて、時間が過ぎてしまった」

この言葉に近い悩みを持つ会社ほど、採用戦略と受け入れ体制を同時に見直す価値があります。若手を採ることはゴールではなく、現場で育って戦力になるところまでが採用です。