前提

14〜15人規模で全員を社員として抱え、忙しい時期は協力会社も使う建設会社の現在地

ある建設会社では、社長を含めて十数名規模の体制で現場を回していました。事務は少人数、施工管理を担う人もいて、職人も自社に抱えています。

建設現場の性質上、アルバイトで簡単に補うわけにはいきません。社長も「建設関係なので、アルバイトとかも入れられないんです」と話していました。

一方で、社員を増やせばいいとも考えていませんでした。

「人も14、5人いるので、それ以上増やしても、今度仕事が続かないとなると、今はちょうどいいのかなと思っていて」

この感覚は、中小建設会社の経営ではかなり現実的です。人を増やせば受けられる仕事は増えます。ただし、仕事が薄い時期も固定費は残るからです。

繁忙期には協力会社を使えばいい。閑散期でも面倒を見きれる人数は、今ぐらいかもしれない。そんな判断の中で、社員採用と外注活用の線引きが課題になります。

課題

採用すれば成長できるとは限らず、仕事の波に対して固定費だけが先に増える不安

建設会社が社員を増やすとき、悩ましいのは「人が足りない瞬間」と「年間を通じて食べさせられるか」が一致しないことです。

忙しい時期だけを見ると、人は足りません。応援も欲しい。外注も使う。もっと社員がいれば、利益率も上がりそうに見えます。

しかし、仕事には波があります。特に公共系、インフラ系、元請け依存度の高い仕事では、年度末後に動きが鈍ることもあります。

そのとき、社員を20人、30人に増やしていると、社長の負担は大きくなります。社長の言葉にも、それが表れていました。

「仕事がなくても面倒を見きれるのが、今ぐらいの人数かなと」

ここでの課題は、採用そのものではありません。内製化する人数の上限を、感覚ではなく経営の条件から見極めることです。

また、外注を使いすぎると別の問題も出ます。外注費がかさみ、利益が残りにくくなる場面です。つまり、内製化しすぎても重い。外注に寄せすぎても利益が薄い。

この間に、自社にとってのちょうどよい線があります。

背景

社員でなければ受けにくい仕事と、外注で吸収したい繁忙期が同時に存在している構造

中小建設会社の人員判断が難しいのは、単純に「社員が多いほどよい」と言えないからです。

現場によっては、社員体制であることが信頼につながります。書類や安全管理の面でも、社員として抱えているほうが進めやすい仕事があります。以前は一人親方のような形で回していたとしても、今は「書類上が面倒」と感じる場面も増えています。

一方で、すべてを社員で抱えると、繁閑差を会社が丸ごと背負うことになります。

この会社でも、忙しいときは協力会社を使う考えがありました。社長は「忙しければ外注さんを使えばいい」と話しています。これは、繁忙期の山を外注で吸収する考え方です。

ただ、外注だけに頼ると、利益率や品質、工程管理の面で課題が出ることもあります。現場を管理する社員が少なすぎると、協力会社が増えたときに段取りが追いつきません。

つまり、人員体制は次の3つを同時に見て決める必要があります。

  • 閑散期でも抱えられる社員数
  • 繁忙期に外注で吸収できる量
  • 現場管理者が見きれる現場数

この3つのバランスが崩れると、仕事はあるのに現場が回らない、または人はいるのに仕事が薄い、という状態になります。

解決

閑散期に面倒を見きれる人数を基準に、繁忙期だけ協力会社で伸ばす体制づくり

社員を増やすかどうかは、「いま忙しいか」だけで決めないほうが安全です。

まず見るべきは、年間の最低稼働で抱えられる人数です。閑散期でも、給与を払い、教育を続け、現場に出せる仕事があるか。ここが内製化の土台になります。

次に見るのが、繁忙期の山です。忙しい時期に足りない人数を、すべて社員で埋めようとすると固定費が一気に増えます。そこで、繁忙期だけ協力会社を使う体制を組みます。

このとき大事なのは、単に外注先の数を増やすことではありません。工程を管理できる範囲で外注を使うことです。

協力会社を活用するなら、次のような整理が必要です。

  • 自社社員が必ず担う工事・管理範囲
  • 協力会社に任せられる職種や作業範囲
  • 現場管理者1人が見られる現場数
  • 応援を頼む時期と、頼まない時期
  • 外注費が利益を圧迫するライン

この線引きをしておくと、採用判断も見えやすくなります。

たとえば、毎年同じ時期に仕事が薄くなるなら、その期間に自社社員が動ける補完案件を持つことが先です。春先の仕事が安定してきて、外注費も一定以上かかり続けている。その段階で、次の社員採用を検討するほうが、無理がありません。

採用に踏み切る前には、次の順番で整えると進めやすくなります。

  1. 閑散期に入れられる仕事を増やす
  2. 繁忙期の外注費と利益率を確認する
  3. 現場管理者が見きれる範囲を決める
  4. 協力会社に任せる仕事と、自社で持つ仕事を分ける
  5. それでも足りない人数だけ採用する

この順番なら、採用が先ではなく受注基盤が先になります。

社員を増やすこと自体は悪いことではありません。ただ、仕事量の波がある会社では、採用は最後の一手に近いものです。まずは、今の人数で年間稼働を安定させる。そのうえで、外注費が利益を圧迫している部分を内製化する。そう考えると、判断がぶれにくくなります。

まとめ

社員を増やすか、協力会社で回すか。これは建設会社にとって、かなり重い判断です。

忙しい時期だけを見れば、人は増やしたくなります。けれど、閑散期にも社員の生活を支える必要があります。だからこそ、まずは仕事が薄い時期でも面倒を見きれる人数を基準にすることが大切です。

そのうえで、繁忙期の山は協力会社で吸収する。外注費が増えすぎて利益を圧迫するようになったら、内製化を検討する。現場管理者が見きれないなら、採用より先に管理体制を整える。

「20人、30人に増やすべきか」ではなく、「年間を通じて何人なら無理なく抱えられるか」。この問いから始めると、自社に合った人員体制が見えやすくなります。