前提

建設チームは少人数でも、飲食店・クリニック・ホテル内レストランまで元請で対応してきた会社

ある店舗内装会社では、建設チームは十名前後、現場を任せられる監督は数名という体制でした。代表が設計と施工の両方を見られ、外部のデザイナーや設備設計者と組みながら、飲食店、クリニック、ホテル内レストランなどを元請で進めています。

特徴的だったのは、単に「内装工事ができます」という会社ではなく、オーナーの要望やデザイナーの意図を読み取り、施工に落とし込む力が強いことです。

「斜めに壁を建てたい、というオーナーさんの要望があって対応しました」

「設計デザイナーさんの意図を読み取って仕上げていくのが、得意なところかもしれません」

こうした言葉からも、図面通りに早く安く作るだけではなく、まだ固まりきっていないイメージを現場で形にしていくタイプの会社だと分かります。

記事の要点は、少人数の内装会社ほど「何でもできます」ではなく、「どの案件で強みが利益に変わるのか」を先に決めておくことです。

課題

施工範囲が広いほど、価格勝負の大量改装に巻き込まれやすいこと

飲食店、クリニック、ホテル、施設内店舗まで対応できる会社ほど、声がかかる領域は広がります。一方で、すべての案件が自社に合うわけではありません。

たとえばチェーン店の改装は、短工期で件数を回す力が求められます。什器や仕上げ材が支給され、標準仕様も決まっていて、現場側は工程管理と取り付けを正確に回す役割になりやすいです。

もちろん、これはこれで高度な仕事です。ただ、少人数で設計対応もできる会社にとっては、強みが見えにくくなることがあります。

「手当たり次第にたくさん回すというより、設計要素を噛み砕いて、丁寧に作るほうが伸ばせている感じです」

この感覚は、多くの中小建設会社に当てはまります。できることが多い会社ほど、案件を選ばないと、忙しいのに粗利が残りにくい状態になりがちです。

背景

高見えする施工や新業態の1店舗目では、設計と施工の間を埋める力が評価されること

この会社が得意としていたのは、いわゆる「高見えする」内装でした。高価な材料を並べるというより、限られた条件の中で、素材の選び方や納まり、造作、照明、色味で空間の印象を上げていく仕事です。

ホテル内の大型レストランでは、営業中のホテルで解体から仕上げまで進め、音出しの時間や予約状況を見ながら工程を組んでいました。飲食店では、造作や厨房、設備まで含めて取りまとめています。クリニックでは、保健所や消防との事前相談も含めて対応していました。

こうした案件では、単純な施工力だけでなく、次のような力が必要になります。

  • オーナーの曖昧な要望を、図面や仕様に落とす力
  • デザイナーの意図を、現場で再現できる納まりに変える力
  • 設備・厨房・防災・家具の取り合いを整理する力
  • 限られた予算内で、見え方の優先順位を決める力

逆に、すでに標準仕様が完全に決まっていて、価格と件数だけで比較される案件では、こうした力が評価されにくくなります。

解決

新業態の1店舗目やオーナー直案件に、設計意図を翻訳する会社として入ること

このタイプの会社が狙うべきなのは、「大量に同じものを作る仕事」よりも、「最初の1件を一緒に作る仕事」です。

たとえば、次のような案件です。

  • チェーン展開前の新業態1店舗目
  • 個人オーナーや院長が強いこだわりを持つ店舗・クリニック
  • ホテルのロビーやレストランを、運営方法に合わせて作り替える案件
  • デザイナーはいるが、施工に落とす人が不足している案件
  • 既存の設計図だけでは、設備や納まりの調整が足りない案件

こうした案件では、施工会社が早い段階から入る意味があります。単に見積だけを出すのではなく、「そのデザインなら、ここはこう納めたほうが現場で成立します」「この素材だと予算を使いすぎるので、見える場所に寄せましょう」といった会話が価値になります。

「図面描きしてみないと分からない」「施工会社がまだ決まっていない」

このような状態のオーナーや設計者に対して、施工会社が設計意図の翻訳者として入れると、価格だけの比較から少し離れられます。

大切なのは、営業資料や初回面談で「何でもできます」と言い切らないことです。むしろ、次のように言語化したほうが伝わります。

  • デザイン性のある飲食・クリニック内装が得意
  • オーナー要望を聞きながら、設計施工で形にできる
  • 外部デザイナーの意図を読み取り、現場納まりに落とせる
  • 少人数なので、同時に大量件数を回すより、1件ずつ濃く進める案件に向いている

これは弱みの開示ではありません。合わない案件を避け、合う案件から選ばれるための整理です。

まとめ

少人数の内装会社にとって、受注範囲が広いことは強みです。ただし、そのまま「何でもできます」と見せると、価格勝負や短工期の大量改装に巻き込まれやすくなります。

設計も施工も分かる会社ほど、強みが出るのは、まだ仕様が固まりきっていない案件です。新業態の1店舗目、こだわりのあるクリニック、ホテル内の飲食・ラウンジ改修などでは、オーナーやデザイナーの意図を現場に翻訳する力が価値になります。

忙しいのに利益が残りにくいと感じるときは、営業量を増やす前に、「自社の強みが一番伝わる案件はどれか」を絞ってみることが大切です。