前提

約30年続く施工体制のなかで、特定工程を担う協力会社の高齢化が見えてきた状態

ある専門工事会社では、大手住宅会社の施工を長く担ってきました。以前は月に数棟を安定して受けられる体制があり、現場も「いつもの職人さん」で回っていました。

ただ、ここにきて状況が変わっています。事故や品質面のトラブルをきっかけに受注が一時的に落ち込み、会社としては「もう一回盛り上げたい」という局面です。一方で、施工体制そのものを見ると、協力会社や職人チームの年齢が上がっています。

特に印象的だったのは、ある工程を担うチームについての「ここが一番の時限爆弾だと思っています」という言葉です。標準は3人作業。けれど、その中に70代半ばの職人がいて、足場に上がる場面もある。危険な作業は避けているとはいえ、夏場の暑さもあります。

長く支えてくれた職人さんたちがいるからこそ、今の施工力があります。だからこそ、高齢化は責める話ではなく、施工体制を次に渡す話として扱う必要があります。

課題

年間稼働の多くを外部チームに頼るほど、代替要員がいない工程から施工力が崩れやすい状態

外注が悪いわけではありません。むしろ建設業では、協力会社との信頼関係が現場を支えています。

問題は、特定の工程について、「その人たちが抜けたら代わりがいない」状態になっていることです。

たとえば、基礎、大工、外装、タイル、足場など、工程ごとに専門のチームがあります。その中には、ほぼ年間を通じて特定の会社の仕事を受けている協力会社もあります。発注側から見れば外注でも、実態としては専属に近い関係です。

この状態で、ある日チームが動けなくなると、単に「別の業者を探せばよい」では済みません。長年の基準、納まり、段取り、元請けの品質要求を理解している職人チームは、すぐには見つからないからです。

相談者からも、「今落ちている時期に、どれだけリフレッシュできるかだと思っています」という言葉がありました。受注が落ちている時期は苦しいものです。ただ見方を変えると、忙しさに追われる前に体制を組み替える機会でもあります。

施工量を戻すことだけを急ぐと、また同じ人員構成のまま無理をすることになります。そうではなく、戻す前に「どの工程から次世代化するか」を決めることが大切です。

背景

品質要求が高い現場ほど、昔からの職人チームに頼り続ける構造が生まれやすいこと

大手住宅会社の施工では、工程が分かれていても、それぞれに厳しい基準があります。基礎、躯体、木工事、内装、外構など、担う範囲が明確だからこそ、各工程でミスが出ると全体の評価に響きます。

そのため、長く取引してきた職人チームは非常に貴重です。「この現場はこう納める」「この住宅会社ではここを見られる」という経験が蓄積されているからです。

一方で、その信頼関係が長く続くほど、次の担い手を入れるタイミングが遅れやすいという面もあります。ベテランが頑張ってくれる。多少無理をしても現場を収めてくれる。そうしているうちに、年齢構成だけが進んでいきます。

さらに、夏場の熱中症リスクも無視できません。相談の中でも、「今、夏でやばいんです」という現場感のある言葉がありました。気をつけていても倒れる人が出るほど、暑さは厳しくなっています。

高齢の職人に支えられている工程ほど、事故が起きてからでは遅くなります。ここで見るべきなのは、単なる人数ではありません。

  • その工程を担うチームの年齢構成
  • 代替できる協力会社や職人がいるか
  • 年間稼働のうち、どれだけ依存しているか
  • 夏場や高所作業など、安全面の負荷が高いか
  • 若手を入れても教えられる体制があるか

このように分解すると、内製化すべき工程と、協力会社を補強すべき工程が見えやすくなります。

解決

全工程を一気に抱え込まず、危ない工程から社員職人・若手補填・多能工育成を組み合わせる進め方

最初に決めたいのは、「全部を内製化するかどうか」ではありません。まずは、外注依存のリスクが高い工程を見える化することです。

おすすめは、工程ごとに次の4つを並べて整理することです。

  1. 年齢リスク:中心メンバーが何歳くらいか
  2. 代替リスク:別チームに替えられるか
  3. 稼働依存:年間どの程度、自社案件に入っているか
  4. 安全リスク:高所、重量物、夏場作業などの負荷が高いか

この4つを見れば、優先順位がつきます。たとえば、70代の職人が中心で、3人作業が標準で、代替チームもなく、夏場の負荷が大きい工程は、最優先で手を打つべきです。

打ち手は一つではありません。

まず考えられるのは、協力会社に若手を補填してもらう方法です。既存チームの技術や段取りを活かしながら、若手を横につける。これは関係性を壊さずに始めやすい方法です。

ただし、協力会社側にも採用力がない場合は、自社で若手を採用し、協力会社の現場に入れて育てる形もあります。相談の中でも、「うちが補填しながら、新しい人が育てられれば」という考えが出ていました。これは、将来的な社員職人化や内製化につながります。

次に、多能工化です。タイルだけ、基礎だけ、大工だけと分けるのではなく、適性を見ながら複数工程を覚えられる人を育てる。現場側からも「多能工いないと現場が収まっていかない」という感覚が出ていました。

ただし、多能工化は「何でもやれ」で進めると失敗します。必要なのは、工程を分解して、覚える順番を決めることです。

たとえば、最初は安全管理と道具の扱い、次に補助作業、次に一部工程の担当、最後に複数工程の段取りまで広げる。こうしたステップがあれば、若手も自分の成長を見やすくなります。

また、元請けや主要取引先に対しても、「変わりました」と言葉で言うだけでは足りません。社員職人の採用、育成カリキュラム、協力会社の若手補填、多能工化の計画など、施工体制を立て直している証拠を示すことが大切です。

受注を戻したい局面ほど、焦って人を集めたくなります。ですが、まずは危ない工程から順番に、次のように進めるのが現実的です。

  • 1か月目:工程別の年齢・代替・稼働・安全リスクを整理する
  • 2〜3か月目:優先工程を決め、協力会社補填か社員採用かを決める
  • 3〜6か月目:若手を入れる工程、教える担当、習得ステップを運用する
  • 半年以降:多能工化できる範囲を広げ、内製化する工程を見直す

大事なのは、既存の協力会社を切ることではありません。むしろ、長年支えてくれた人たちの技術を次に残すために、外注依存から共同育成へ変えることです。

まとめ

協力会社の高齢化は、ある日突然問題になるわけではありません。少しずつ見えていたものが、受注減、品質トラブル、夏場の安全リスクなどをきっかけに表面化します。

だからこそ、まずは工程ごとにリスクを見える化することが出発点です。年齢、代替要員、稼働依存、安全負荷。この4つを見るだけでも、どこから手をつけるべきかはかなり明確になります。

全工程を一気に内製化する必要はありません。協力会社への若手補填、社員職人の採用、多能工育成を組み合わせながら、止まると困る工程から次世代化することが大切です。

「どこから手をつけていいかわからない」と感じる会社ほど、まずは現場の棚卸しから始める価値があります。施工力は、受注が戻ってから作るものではなく、戻る前に仕込んでおくものです。