北関東の一人社長が現場・現調・10年点検まで抱えながら売上5,000万円台を回している状態
北関東で塗装・外装改修を手がける、ある専門工事会社の話です。
法人化して数年。売上は5,000万円台。社員としては社長が中心で、現場ごとに一人親方や協力会社に入ってもらいながら回しています。
仕事は増えています。
マンションのスケルトンからのリフォーム。ビルやマンションの補修工事。住宅の屋根・外壁塗装。さらに、ハウスメーカー系の10年点検に伴う外装改修の案件も動き始めています。
ただ、社長の体は一つです。
福島の現場に入りながら、都内の現場にも行く。現調が入れば一度戻る。夜間工事もある。昼はテナントが動いているため、夕方から夜中まで施工することもあります。
社長はこう話していました。
「今は、目の前にある仕事をやるだけでいっぱいです」
一方で、会社としては伸びしろがあります。売上1億円、2億円も見える。直受け案件もある。10年点検の流れも良い。営業担当も動き始めている。
それでも、すぐに人を雇えば解決する話ではありません。
この会社の現在地は、案件不足ではなく、社長の時間と業務の切り分け不足が成長の上限になっている状態です。
1週間で 6件ダウンロード されました
- 7月2日防水工事会社茨城県
- 6月30日ビルメンテナンス北海道
- 6月30日ビルメンテナンス福岡県
- 6月29日総合建築千葉県
- 6月29日総合建築東京都
- 6月28日配管工事会社富山県
- 6月27日リフォーム会社山口県
- 6月27日内装工事会社大阪府
- 6月26日塗装工事会社秋田県
- 6月26日配管工事会社三重県
- 6月26日工務店宮崎県
- 6月25日内装工事会社長野県
- 6月23日プラント工事会社神奈川県
- 6月23日外構工事会社岐阜県
- 6月19日空調設備工事会社兵庫県
- 6月19日総合建築鳥取県
- 6月19日配管工事会社東京都
- 6月18日総合土木東京都
- 6月18日空調設備工事会社兵庫県
- 6月18日防水工事会社岡山県
- 6月16日配管工事会社青森県
- 6月16日総合建築神奈川県
- 6月16日電気設備工事会社東京都
- 6月15日総合土木千葉県
- 6月15日内装工事会社島根県
- 6月15日設備保全会社群馬県
- 6月14日内装工事会社栃木県
- 6月14日塗装工事会社神奈川県
- 6月13日解体工事会社神奈川県
- 6月11日総合建築和歌山県
案件は増えているのに未経験者を連れていける現場が少なく採用が止まる構造
一番の悩みは、人を増やしたいのに増やせないことです。
社長自身も「いずれは自分の会社で従業員を雇ってやっていきたい」と考えています。ただ、今すぐ職人を入れて育てるには、現場の難易度が高い。
ビルやマンションの補修では、現場での調色が必要になります。特殊な補修もあります。ある程度わかっている人でないと、連れていっても戦力化しづらい案件です。
社長の言葉は率直でした。
「今やっている仕事の内容的に、なかなか未経験の人を連れていけないんです」
住宅塗装のように、比較的分担しやすい仕事もあります。ですが、会社全体の案件はそれだけではありません。専門性の高い補修、現調、見積、点検報告、協力会社の段取りまで、社長が握っている部分が多い。
そのため、採用の入口で止まります。
「今、人を雇っても面倒を見きれない部分がある」
これは、採用力だけの問題ではありません。
未経験者を採る前に、どの仕事なら任せられるのか、どの仕事は社長が持つべきなのか、どの仕事は協力会社に流すべきなのかが整理されていないことが本質です。
職人が足りない。 営業も足りない。 でも、両方を同時に採っても、社長が教えきれない。
この状態で無理に採用すると、社長の負担はむしろ増えます。現場も教える。見積も見る。営業も確認する。結局、社長がさらに忙しくなってしまいます。
専門性の高い補修と10年点検案件の伸びが同時に来て社長の時間だけが詰まっている状態
背景には、案件の種類が増えていることがあります。
従来の塗装工事だけではありません。内装・リフォーム寄りの案件もあります。ビル補修もあります。住宅の外装もあります。そして、今年から始めた10年点検の仕事が伸び始めています。
この10年点検の流れは、かなり可能性があります。
ハウスメーカーで新築を建てたお客様に対し、3年、5年、10年の点検があります。10年保証が切れるタイミングで、屋根・外壁・シーリング・防水などを点検し、必要な工事の見積もりを出す流れです。
月に20件、30件ほどのリストが届く。営業担当が電話をする。点検日を決める。点検に行く。点検報告書を作る。見積もりを出す。
この流れで、すでに一定数の受注が取れています。
「20件あっても点検まで進むのは10件いかないくらい。でも、その中で3件、4件取れてきています」
単価も150万円から200万円ほど。外回り中心なので、自社の施工領域とも合っています。
しかも、電話営業の部分は比較的標準化しやすい。
「電話自体はマニュアルがあるので、すぐできると思います」
ここが重要です。
同じ「人が足りない」でも、職人と営業では育成の難易度が違います。
職人は、一人前になるまで時間がかかります。現場の判断、手元の感覚、納まり、調色、下地の見方。数ヶ月で任せきるのは難しいです。
一方、10年点検のアポ取りは、リストがあり、話す内容もある程度決まっています。もちろん営業力は必要です。ただ、未経験者でも入り口を作りやすい仕事です。
社長もそこを感じていました。
「職人を雇うよりは、営業を雇うほうが早い段階で雇えるかなと思います」
さらに、今いる営業担当を将来的な頭にしたい考えもあります。
「もう半年ぐらいやらせて、完璧にできた状態から、その下に営業マンをつけたい」
つまり、会社の成長余地は見えています。
ただし、社長の時間が詰まっています。
現場にも行く。現調にも行く。点検にも関わる。施工も見る。協力会社にも流す。先のことを考える時間がない。
案件が増えている会社ほど、最初にやるべきことは採用活動そのものではなく、社長が抱えている仕事を分解することです。
職人採用の前に営業・現調・報告書・施工管理・実施工を切り分けて自社化の順番を決める
このような会社では、いきなり「職人を正社員で採る」と決めないほうが進めやすいです。
先に、仕事を5つに分けて考えると整理しやすくなります。
- 営業
- 現調・点検
- 点検報告書・見積作成
- 施工管理・段取り
- 実施工
人を増やす前に、この5つのうち何を自社で持ち、何を協力会社に任せ、何を社長が残すのかを決めることが組織化の第一歩です。
この会社の場合、順番はおそらく職人採用からではありません。
まず標準化しやすいのは営業です。
10年点検は、リストがあります。電話の切り口もあります。断られる理由もある程度見えています。メーカーへの過去の不満で断られるケースもありますが、これは営業担当の努力だけで変えづらい部分です。であれば、一定数は割り切り、架電数と点検化率を見ながら回すほうが現実的です。
次に標準化したいのは、点検報告書と見積の型です。
点検に行ったあと、どこを見るのか。写真をどう整理するのか。劣化の表現をどう統一するのか。見積の項目をどう並べるのか。
ここが属人的なままだと、営業担当を増やしても社長確認が増えます。
営業を増やすなら、同時に報告書と見積の型を整えないと、受注前後の確認が社長に集中します。
現調・点検は、すぐに完全委任しなくてもよいです。
最初は社長が重要案件を見る。営業担当や次の人材には、チェック項目に沿って点検を覚えてもらう。判断が難しい劣化、雨漏りリスク、特殊補修は社長が見る。
この分け方なら、社長の技術を守りながら、少しずつ移管できます。
施工管理・段取りも、全部を社長から外す必要はありません。
ただ、協力会社に依頼する案件が増えるなら、最低限のルールは必要です。
たとえば、次のようなものです。
- どの案件なら協力会社に任せるか
- どの案件は社長が直接見るか
- 施工前に共有する写真・図面・注意点は何か
- 完了時に何を報告してもらうか
- クレーム時の一次対応を誰が持つか
ここを曖昧にしたまま案件だけ流すと、品質確認が社長に戻ります。
社長は「1件いくらでお願いして、流しちゃったほうが効率的」と話していました。これは現実的な考え方です。すでに信頼できる一人親方や協力会社がいるなら、実施工を無理に内製化しなくてもよい場面はあります。
高難度の実施工は、できる協力会社に任せる。自社は営業、点検、報告、品質基準、顧客対応を握る。この形も立派な組織化です。
一方で、すべてを外注にする必要もありません。
住宅塗装や外装改修の中でも、比較的作業を分解しやすい仕事はあります。そこは将来的に自社職人を育てる候補になります。
判断軸は、次の4つです。
- 未経験者でも覚えやすいか
- 品質事故が起きたときの影響が大きいか
- 社長でなくても判断できる基準を作れるか
- 社長自身が将来もやりたい仕事か
この会社の社長は、現場から離れたいわけではありませんでした。
「現場はいたいです」
この一言は大事です。
社長が現場に残りたいなら、無理に「社長は現場を抜けるべき」と考えなくてよいです。むしろ、社長が現場に残る前提で役割を作るほうが自然です。
その場合、社長の役割は次のように設計できます。
- 難易度の高い現場判断
- 品質基準の最終確認
- 協力会社の選定と関係づくり
- 高単価案件の現調
- 営業責任者への判断基準の共有
逆に、社長から外していきたいのは次の業務です。
- 定型的な架電
- 点検日程の調整
- 報告書の下書き
- 標準的な見積作成
- 協力会社への定型連絡
社長が現場に残る会社ほど、現場以外の定型業務を先に外すほうが、成長と社長の納得感が両立しやすいです。
営業担当を頭にするなら、半年後を待つだけでなく、今から「頭になるための型」を作っておくとよいです。
本人が感覚でできるようになってから人をつけると、その人もまた教え方に困ります。そうではなく、今の営業のやり方を少しずつ書き出す。
電話のトーク。断られた理由。点検化した理由。点検後に受注した理由。報告書で迷った部分。社長に確認した部分。
これを残しておくだけで、次の営業担当を入れたときの立ち上がりが変わります。
採用の準備とは、求人票を出す前に「入った人が迷わず動ける業務の型」を作ることです。
まとめ
案件が増えているのに人を雇えない会社は、決して珍しくありません。
特に専門工事では、現場の技術が社長に集中しやすいです。未経験者を入れてもすぐには連れていけない。教える時間もない。だから採用が止まる。
ただ、この状態でも打ち手はあります。
まず、職人採用から考えないことです。
営業、現調、点検報告、見積、施工管理、実施工に分ける。そのうえで、標準化しやすいところから任せる。高難度の施工は協力会社に任せる。社長が現場に残りたいなら、現場に残る前提で周辺業務を外していく。
今回のように、10年点検のリストがあり、営業の型があり、受注単価も見えているなら、最初に組織化すべきは営業と報告書まわりです。
職人を採るのは、そのあとでも遅くありません。
成長の順番は、「採用する」ではなく、「任せられる仕事を決める」から始まります。
自社の案件をどこまで内製し、どこから任せるかを整理したいときは
「人を増やしたいけれど、今入っても教えられない」
この悩みは、採用だけで解けないことがあります。営業、現調、報告書、施工管理、実施工のどこが詰まっているかを分けてみると、先に整えるべき順番が見えてきます。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。
うちの場合は営業からなのか、職人採用からなのか。協力会社に任せる範囲をどう決めるべきか。社長が現場に残る前提で、どんな組織にすればよいか。
そうした整理からでも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、まずは状況を一緒に言語化する場として使ってください。

































