毎月一定の応募は来るものの、採りたい人材やマネージャー候補に会えていない状態
採用活動を続けていると、「応募は増えたのに、採用できない」という壁に当たることがあります。
ある会社では、媒体運用やスカウトを続けた結果、毎月まとまった応募が来るようになっていました。ところが、実際には採用まで進まないケースが多い。
「応募自体は集まるようになった。ただ、質が低くて採用に至らない」。この悩みは、建設業の中小企業でもよく起きます。
特に営業職や施工管理、将来の幹部候補を採りたい場合、応募数だけを追っても成果につながりにくいです。必要なのは、応募数から採用精度へ視点を移すことです。
量を集める採用のままでは、仕事を頑張りたい層や幹部候補に届きにくい
応募が増えた段階で、次に起きやすいのが面接負荷の増加です。
「可能性を見たいから、若手ならまず会う」。この考え方は悪くありません。採用初期には有効です。
ただ、社長や幹部が一次面接から出ている会社では、面接数が増えるほど本業の時間が削られます。結果として、採用活動そのものが重くなります。
さらに問題なのは、応募者の中に、自社が本当に会いたい層が少ないことです。
建設業で営業や幹部候補を採る場合、単に「未経験歓迎」と出すだけでは、仕事を頑張りたい層に届かないことがあります。
必要なのは、たとえば次のような人材です。
- 行動量を出すことに抵抗がない人
- 社長や現場責任者と向き合える人
- 将来マネジメントを担いたい人
- 安定だけでなく成長機会も求めている人
- 人柄と熱量で信頼を作れる人
こうした人に会いたいのに、実際の応募者は条件面だけを見ている。あるいは、仕事への温度感が合わない。
このズレがあると、応募数が増えても採用は進みません。採用活動は、母集団形成だけでは完結しないからです。
媒体・エージェント・紹介会社は、欲しい人材ごとに役割を分ける必要がある
採用チャネルには、それぞれ得意不得意があります。
大手媒体や大手エージェントは、応募数を作るには強いです。一方で、担当者との相性や求人理解によって、紹介される人材の質に差が出ることもあります。
営業特化の紹介会社や、特定職種に強いエージェントは、人数は多くなくても、自社の欲しい層に近い候補者を連れてきてくれることがあります。
また、営業責任者や人事責任者のようなポジションは、通常の媒体で大量に集めるより、一本釣りに近い採用になりやすいです。
「営業責任者候補と人事。この二つが大きな採用ポジションだと思う」。こうした状態なら、求人を広く出すだけでは足りません。
採用チャネルは、次のように分けて考えると整理しやすくなります。
- 若手・未経験層:媒体、スカウト、紹介、リファラル
- 行動量が必要な営業層:営業特化の紹介会社、知人紹介
- マネージャー候補:専門エージェント、ヘッドハンター、一本釣り
- 人事・採用担当:経験者紹介、業務委託からの採用
ここで大切なのは、どのチャネルが良いかを一律に決めないことです。採りたい人材ごとに、チャネルの役割を分けることが必要です。
採用基準を絞り込み、チャネルごとに会いたい人物像を伝え直す
応募は来るのに採用できない場合、最初にやるべきことは媒体を増やすことではありません。
まず、採用基準を見直します。
特に社長が面接で見ている会社では、社長の中にある判断基準を言語化することが重要です。
たとえば、次のような項目を整理します。
- どんな人なら現場や顧客に信頼されるか
- どの程度の行動量を期待するか
- 未経験でも許容できる部分はどこか
- 絶対に譲れない価値観は何か
- マネージャー候補に求める経験と素養は何か
この整理がないまま紹介会社に依頼しても、相手は求人票の表面的な条件で候補者を探すしかありません。
次に、書類選考と面接の基準を変えます。
「若手なら全員会う」から始めた会社でも、応募数が増えたら、一定の絞り込みが必要です。これは冷たくするという意味ではありません。社長や現場メンバーの時間を、採るべき人に集中するためです。
具体的には、次の順番で整えると進めやすいです。
- 採用したい職種を、若手層と責任者候補に分ける
- それぞれの必須条件と歓迎条件を分ける
- 書類で見る項目と、面接で見る項目を分ける
- 紹介会社ごとに、欲しい人材像を伝え直す
- 重要ポジションは、通常募集ではなく一本釣りも検討する
特にマネージャー候補は、応募を待つだけでは出会いにくいです。エージェントやヘッドハンターに頼る場合も、丸投げではなく、会社の現在地や任せたい役割を丁寧に共有する必要があります。
採用は、求人票を出す作業ではなく、自社に合う人との接点設計です。
まとめ
応募数が増えているのに採用できない場合、問題は応募数ではなく、採用基準とチャネル設計にあることが多いです。
建設業の中小企業では、社長や現場責任者が採用に深く関わるため、面接に使える時間も限られます。だからこそ、誰に会うべきかを絞ることが大切です。
若手を採るのか。行動量を出せる営業を採るのか。将来の幹部候補を採るのか。目的によって、使うチャネルも伝えるメッセージも変わります。
採用活動を前に進める第一歩は、欲しい人材を具体化することです。そのうえで、媒体、紹介会社、エージェント、ヘッドハンターを使い分ける。
応募を増やす採用から、会うべき人に会う採用へ。ここを切り替えると、社長の負担も少しずつ軽くなります。


































