前提

クロス・床が売上の中心なのに、自社職人は社長と少数だけという内装工事会社の現在地

内装工事会社の中には、売上の中心がクロスや床でありながら、自社職人は社長と少数だけ、残りは協力会社に依頼している会社があります。

工事量はあります。大手住宅会社や管理系の会社から継続的に受注しています。戸建て、アパート、修繕工事もあります。協力会社との関係もあり、電気、水道、大工なども必要に応じて段取りできます。

ただ、主力工事であるクロス・床について、社長がこう話していました。

「自前の職人は、僕ともう一人しかいないんです。あとは全部外注なので、その分の自前は欲しいなと思っています」

ここでの課題は、単に外注費が高いという話だけではありません。売上の中心工事を自社でどこまで握れているかという問題です。

外注が悪いわけではありません。むしろ、専門工事会社にとって協力会社は欠かせない存在です。繁忙期に現場を回すにも、工種を広げるにも、信頼できる外部の職人は重要です。

一方で、主力工事の大半を外注に頼る状態が続くと、利益、品質、納期、社長の現場負担に影響が出やすくなります。

課題

外注費を下げたいだけでなく、品質・納期・社長の現場負担まで自社で安定させたい状況

自社職人を増やす理由として、まず出てくるのは外注費の削減です。

クロスや床が売上の中心であれば、その施工を自社で担えるほど粗利は残しやすくなります。外注に出していた分を自社施工に切り替えられれば、利益構造は変わります。

ただ、判断軸はそれだけでは足りません。

自社職人を増やすべきかどうかは、次のような観点で見る必要があります。

  • 主力工事のうち、どれくらいを外注に出しているか
  • 外注先の単価や稼働が安定しているか
  • 社長自身がどれくらい現場に出ているか
  • 品質確認や手直し対応にどれくらい時間を取られているか
  • 今後の仕事量を自社で抱えられる見通しがあるか

特に大きいのは、社長が現場から抜けられない構造です。

社長自身が職人として現場に出ている会社では、採用も営業も後回しになりがちです。面接も社長。現場段取りも社長。見積りも社長。受注先とのやり取りも社長。

「楽になりたいです」という言葉は、単に仕事を減らしたいという意味ではありません。会社として回る体制を作りたい、という現実的な希望です。

自社職人を増やす目的は、外注費の削減だけではなく、社長が会社づくりに時間を使える状態に近づけることでもあります。

背景

経験者ならすぐ戦力、未経験なら1年ほど育成が必要という採用判断の難しさ

自社職人を増やすとき、多くの会社が迷うのが「経験者を採るか、未経験者を育てるか」です。

経験者が来れば、すぐ現場に入りやすいです。道具、段取り、仕上がりの感覚もあります。社長や既存職人の教育負担も比較的軽くなります。

一方で、経験者は採用難易度が高いです。給与条件だけでなく、働き方、社風、現場の進め方も合う必要があります。腕があっても、自社の品質基準や発注先との付き合い方に合わないこともあります。

未経験者は、採用の入口は広がります。ただし、すぐに売上を作る人材として見込むのは難しいです。

ある社長は、「できる人が来ればもう一人入れたい。素人が来るんだったら、やっぱり1年ぐらいはかかると思う」と話していました。

この感覚はかなり現実的です。未経験者を採るなら、育成期間を最初から織り込む必要があります。

クロスや床は、見た目には分かりやすい工事です。けれど、下地、納まり、現場ごとの段取り、材料の扱い、仕上がりの基準など、職人の暗黙知が多い仕事です。横で見て、手を動かして、失敗を直しながら身につける部分があります。

そのため、未経験者を採るなら、最初から一人前扱いしないことが大切です。逆に、経験者を採るなら、どのレベルの経験者を求めるのかをはっきりさせる必要があります。

解決

仕事量・育成余力・社長の現場時間を見ながら、まず一人ずつ増やす進め方

自社職人を増やすタイミングは、「人が足りないから採る」だけで決めるとズレやすくなります。

見るべきは、仕事量と育成余力です。

まず、直近の工事を棚卸しします。クロス・床の仕事のうち、自社で施工している分と外注に出している分を分けます。次に、外注に出している現場の中で、自社職人がいれば内製化しやすいものを見ます。

このとき、いきなり全てを自社化しようとしないほうが現実的です。協力会社との関係もあります。繁忙期には外注の力が必要です。大切なのは、主力工事の一定割合を自社で担える状態を作ることです。

進め方は、次の順番が取り組みやすいです。

  1. クロス・床の年間工事量をざっくり分ける
  2. 外注費が大きい現場、社長が入り続けている現場を確認する
  3. 経験者を採る場合の条件を決める
  4. 未経験者を採る場合の育成期間と担当作業を決める
  5. まず一人採用し、半年から1年で戦力化の見通しを見る

採用人数は、仕事量だけでなく、教える側の余力で決めます。

未経験者を一度に複数入れると、社長や既存職人の手が止まります。現場を進めながら教えるのは簡単ではありません。まず一人ずつ増やし、教え方や任せ方を固めるほうが安定します。

経験者の場合も同じです。腕がある人でも、会社のやり方に慣れる時間は必要です。発注先ごとのルール、現場の報告、協力会社との関係など、施工以外の部分も合わせる必要があります。

自社職人を増やす判断では、採用後に誰が何を教えるかまで決めておくことが重要です。

たとえば、最初の数か月は下地処理、材料運び、養生、簡単な補助作業から始める。次に小さな面や目立ちにくい箇所を任せる。仕上がりを確認しながら、現場ごとの判断を教える。こうした段階を作ると、未経験者も入りやすくなります。

外注費削減だけを目的にすると、採用後の育成が負担に感じやすくなります。けれど、品質、納期、社長の現場時間まで含めると、自社職人の育成は将来の施工体制づくりになります。

まとめ

主力工事を外注に頼りすぎている内装工事会社が、自社職人を増やすべきタイミングは、売上が伸びているときだけではありません。

クロス・床などの中心工事を、自社でどれくらい担えているか。社長が現場に出続けないと回らない状態か。外注費だけでなく、品質や納期の安定に課題が出ていないか。そこを見る必要があります。

経験者が来れば理想です。ただし、経験者採用だけに絞ると、採用が進まないこともあります。未経験者を受け入れるなら、1年程度の育成期間を見込むことが現実的です。

自社職人を増やす目的は、外注をなくすことではありません。協力会社を活かしながら、主力工事の軸を自社にも持つことです。

まずは一人。仕事量、育成余力、社長の現場時間を見ながら、段階的に増やす。この進め方が、内装工事会社にとって無理の少ない体制づくりにつながります。