一人親方中心の地域で自社職人を増やすには、経験者採用だけでは足りなくなっている
地方の専門工事会社では、現場を支える職人の多くが一人親方や協力会社という地域も少なくありません。
ある九州地方の建設会社でも、施工は外部の職人に支えられていました。社内では経理や事務などのオフィス部門を整えつつ、今後は現場を納める職人も段階的に内製化していきたい、という話が出ていました。
ただ、現実は簡単ではありません。
「現場を収める職人がいなかったら、やっぱり現場を叩いていけない。でも一気に増やしすぎると落ちてしまう」
この感覚は、多くの建設会社に近いものだと思います。
一人親方は、仕事がある会社へ自由に動きます。会社に所属しない理由も、お金だけではありません。「会社に縛られたくない」「自分で動いた方がいい」という価値観がある以上、経験者を社員化するだけで自社職人を増やすのは難しいのが実情です。
だからこそ、採用対象を経験者だけに置かず、高校生・中退者・未経験者まで広げて考える必要があります。
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求人広告を出す前に、高校生や保護者に選ばれる理由が整理されていない
職人採用というと、求人広告、人材紹介、ハローワーク、SNS投稿を思い浮かべがちです。
もちろん入口としては必要です。ただ、求人を出す前に「なぜこの会社で働くのか」が言葉になっていないと、広告費をかけても反応は弱くなります。
特に高校生採用では、本人だけに伝えても足りません。
高校生は自分の意思を持っています。一方で、進路選択には保護者や先生の影響が大きく出ます。家庭の事情で早く働く必要がある子もいれば、進学できる環境の子もいます。その中で建設業を選び、さらに地元の会社を選ぶには、本人・親・学校のそれぞれに安心材料が必要です。
たとえば、次のような問いに答えられる状態です。
- この会社に入ると、どんな大人になれるのか
- 休日や給与は、どのような選択肢があるのか
- 未経験でも、誰がどう教えてくれるのか
- 職人の先に、施工管理や職長などの道があるのか
- 地元に残って働く意味を、会社としてどう考えているのか
ここが曖昧なまま「若い人を採りたい」と発信しても、高校生や保護者には届きにくいです。
採用ページを作る場合も同じです。会社案内の延長ではなく、求職者に向けて会社の魅力・働き方・育ち方を伝えるページとして設計する必要があります。
協力会社を縛れず技能実習生も減る中で、地域に残る意味まで会社が語る時代になっている
一人親方や協力会社に頼る体制は、短期的には柔軟です。
仕事量が読みにくい建設業では、繁忙期と閑散期の差があります。元請け側の工程に合わせて動かざるを得ない会社も多く、自社で抱えられる人数には限界があります。
相談の中でも、次のような悩みがありました。
「仕事のタイミングも、職人の人数も、こちらでコントロールできない。内製がすべて良いとは思っていないけれど、外注の割合は調整していくしかない」
この考え方はとても現実的です。自社職人100%を目指す必要はありません。ただ、仕事を受けたときに安定して施工できる最低限の内製力は、今後ますます大事になります。
一方で、これまで若手職人の確保で選択肢になっていた技能実習生も、以前ほど見込みやすい状況ではありません。日本に来る外国人材が減り、逆に若い日本人が海外へ出る動きもあります。採用の母集団は、簡単には増えません。
そうなると、地域の若者に向き合う必要が出てきます。
高校生。高校を中退した若者。中卒で働き口を探している若者。地元を出るか残るか迷っている若者。
ここに向けて、会社が何を見せられるかです。
地方では、若い人が県外や都市部に出る流れがあります。その中で建設会社が選ばれるには、単に「仕事があります」では弱いです。「この地域で働く意味」「この会社で成長する道」「地元の暮らしと仕事を両立できる安心感」まで伝える必要があります。
実際に、東海地方のある専門工事会社では、地域での評判を変えるところから採用を立て直しました。もともとは数名規模で、社長も職人上がり。外からの見られ方に課題がありました。
そこで、外出時の服装、食事や飲みの場での立ち振る舞いなど、会社としてのルールを整えました。そのうえで、会社の理念を作り直し、社員がなぜその会社で働き続けているのかを言葉にしました。
採用サイトでは、社長の言葉だけでなく、社員インタビューも載せました。高校回りでは、「うちはこういう会社です」「未経験でもこう育てます」と伝えられる資料を持っていきました。
数年かけて、数名規模から100名を超える組織へ広がっています。
もちろん、どの会社も同じスピードで成長できるわけではありません。ただ、ここで参考になるのは規模の伸びではなく、順番です。
求人を出す前に、会社の中身を整え、言葉にし、学校と保護者に伝わる形にしたことです。
理念・社員の声・キャリアビジョンを整えて、学校と家庭に届く採用導線を作る
高校生・未経験者に選ばれる採用は、広告運用より先に社内設計から始まります。
大きくは、次の順番で整理すると進めやすくなります。
1. まず社内の魅力を社員の言葉から拾う
採用の言葉は、社長の思いだけでは足りません。
今いる社員が、なぜ残っているのか。どこに働きやすさを感じているのか。逆に、どこを大変だと感じているのか。
ここを丁寧に聞くと、外に出すべき言葉が見えてきます。
たとえば、社員インタビューでは良い面だけを並べる必要はありません。建設業の現場は、体力的に大変な日もあります。朝が早い日もあります。暑さ寒さもあります。
それでも続けている理由があるはずです。
「大変だけれど、手に職がつく」「先輩が面倒を見てくれる」「地元で家族との時間を持てる」など、実際の社員の言葉が採用では一番強い材料になります。
2. 高校生向けに複数のキャリアビジョンを作る
高校生採用で特に重要なのが、働き方の選択肢です。
ある会社では、年間休日の異なる複数のキャリアコースを用意していました。たとえば、しっかり稼ぐコースと、休みを多く確保するコースです。給与には差をつけますが、本人のライフステージに応じて行き来できるようにしました。
若いときは稼ぎたい。家庭を持ったら土日休みを増やしたい。子どもが大きくなったら、また働き方を変えたい。
こうした変化を受け止められる会社は、高校生本人だけでなく保護者にも伝わりやすくなります。
「入社したらずっと同じ働き方」ではなく、「将来に合わせて働き方を選べる」ことが、若手採用では安心材料になります。
3. 未経験者を受け入れる教育体制を先に決める
未経験者を採るときに起きやすいのが、「入れたけれど教える人がいない」という状態です。
人を入れれば現場が楽になる、とは限りません。見る人がいなければ、若手は育つ前に辞めてしまいます。
そのため、採用前に次の点を決めておく必要があります。
- 誰が教育係になるのか
- どの作業を、どの順番で覚えるのか
- 一人前の基準をどう決めるのか
- 給与や役割のステップアップをどう見せるのか
社内に教育係が足りない場合は、中途で経験者を1〜2名入れて育成役にする方法もあります。あるいは、信頼できる協力会社の親方に一定期間預け、育成費を上乗せして面倒を見てもらう形もあります。
また、教え方を属人化しすぎない工夫も有効です。
たとえば、作業ごとの動画を撮り、QRコードで見られるようにする。A4のチェックシートを作り、できる作業にスタンプを押す。一定数クリアしたら給与が上がる。
こうした仕組みがあると、未経験者にも成長の道筋が見えます。
採用と教育は分けて考えず、「採った後にどう一人前にするか」までセットで設計することが大切です。
4. 採用サイトは「作ること」より「何を載せるか」を先に決める
採用サイトやホームページは、人を集めるうえで必要な土台です。
ただし、先に制作だけ進めると失敗しやすくなります。きれいなデザインでも、会社の言葉が入っていなければ伝わりません。
採用サイトで整理したいのは、次のような内容です。
- 社長が会社をどうしていきたいのか
- 社員がなぜこの会社で働いているのか
- 未経験者が入社後にどう育つのか
- 休日・給与・資格支援の考え方
- 職人から施工管理や職長へ進む道
- 地域で働く意味や、会社が地域にどう関わるのか
SNSも同じです。始めること自体が目的になると、数投稿で止まってしまいます。発信し続けられないなら、無理に広げない方がよい場合もあります。
採用サイトもSNSも、会社の魅力を言語化した後に使う道具です。道具から入るより、伝える中身から決める方が失敗しにくくなります。
5. 学校と保護者に伝える資料へ落とし込む
高校生採用では、学校訪問が重要です。
先生に伝わる資料。保護者が見て安心できる説明。本人が「ここなら働けそう」と思える写真や社員の声。
これらをそろえて初めて、学校との接点が採用につながりやすくなります。
採用ページを作るだけではなく、学校回りで使える資料、会社見学で話す内容、保護者に渡せる説明資料までそろえると、発信の一貫性が出ます。
高校生採用は、本人・先生・保護者の三者に同じ会社像が伝わる状態を作ることが大事です。
まとめ
職人採用は、求人広告だけで解決するテーマではありません。
一人親方中心の地域では、経験者を社員化するのは簡単ではありません。技能実習生に頼る採用も、今後は見通しにくくなります。だからこそ、高校生・中退者・未経験者に向けて、会社の受け皿を整えていく必要があります。
ポイントは、採用の前に土台を作ることです。
会社の理念を言葉にする。社員の声を拾う。複数のキャリアビジョンを用意する。未経験者を育てる教育体制を作る。学校と保護者に伝わる採用ページや資料へ落とし込む。
この順番で進めると、採用活動が「人を探す活動」から「選ばれる会社を作る活動」に変わっていきます。
自社職人を一気に増やす必要はありません。外注と内製のバランスを見ながら、まずは1人、2人を受け入れられる状態を作る。その積み重ねが、現場を安定して回す力になります。
若手職人に選ばれる採用の土台を整理したいときは
高校生採用や未経験者採用は、会社ごとの地域性、現場体制、教育できる人材の有無によって進め方が変わります。
「採用サイトを作るべきか」「学校回りの前に何を整えるべきか」「うちの場合、高校生と中途のどちらを優先すべきか」といった段階でも、整理する価値があります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の採用、人材確保、組織づくり、教育体制、デジタル活用まで横断して、建設企業の持続的成長を支援しています。ものづくりに集中できる建設業界へ向けて、現場の実情に合わせた進め方を一緒に考えます。
無理な営業はいたしませんので、「まず何から整理すべきか」を確認したい段階でも大丈夫です。
































