前提

関西圏の老舗専門工事会社が余剰建材を業者間で売買するアプリを立ち上げた段階

関西圏で長く建築系の工事を手がけてきた、30名弱規模の専門工事会社の話です。人手不足や若手人材の採用難が続くなかで、本業の施工管理だけに依存しない事業を育てたいという考えから、余った建築資材を業者間で売買できるアプリを開発しました。

狙いはかなり現場に根ざしています。建設業では、現場が終わったあとに材料が余ることがあります。品番違い、仕様変更、ロット違い、モデルルームで一度取り付けただけの設備、クロスや床材の端材に近い在庫など、使えるのに倉庫に眠ったり、置き場がなく処分されたりするものです。

相談者の言葉を借りると、「店はできたけど、商品が並んでいない状態」でした。アプリ自体はリリース済みで、ホームページもあります。ただ、本格的な営業はこれから。何人か登録してくれた人はいるものの、売る人・買う人が十分に揃っておらず、サービスの価値がまだ伝わりにくい段階です。

建設業向けのマッチングサービスは、機能が完成しただけでは立ち上がりません。最初に必要なのは、広告予算よりも「商品が並び、実際に動いている状態」を意図的に作ることです。

1週間で 12件ダウンロード されました

  • 6月18日総合土木東京都
  • 6月18日空調設備工事会社兵庫県
  • 6月18日防水工事会社岡山県
  • 6月16日配管工事会社青森県
  • 6月16日総合建築神奈川県
  • 6月16日電気設備工事会社東京都
  • 6月15日総合土木千葉県
  • 6月15日内装工事会社島根県
  • 6月15日設備保全会社群馬県
  • 6月14日内装工事会社栃木県
  • 6月14日塗装工事会社神奈川県
  • 6月13日解体工事会社神奈川県
  • 6月11日総合建築和歌山県
  • 6月11日総合土木静岡県
  • 6月11日プラント工事会社京都府
  • 6月11日空調設備工事会社神奈川県
  • 6月11日空調設備工事会社茨城県
  • 6月11日総合土木長野県
  • 6月10日総合建築広島県
  • 6月10日総合土木奈良県
  • 6月10日総合建築東京都
  • 6月10日内装工事会社愛知県
  • 6月9日設備保全会社京都府
  • 6月9日総合土木北海道
  • 6月9日設備保全会社山口県
  • 6月8日防水工事会社兵庫県
  • 6月8日電気設備工事会社神奈川県
  • 6月8日内装工事会社大阪府
  • 6月5日リフォーム会社愛知県
  • 6月5日プラント工事会社香川県
中小建設業のための新規採用成功ガイド 資料ダウンロード
課題

商品も利用者も少ない状態ではアプリの便利さが伝わらない

余剰建材のマッチングアプリで一番難しいのは、最初の利用者をどう集めるかです。出品が少なければ、買う側は見に来ても欲しいものが見つかりません。買う側が少なければ、出品する側は「出しても売れないのでは」と感じます。

これは、建設業向けアプリに限らずマッチング型サービス全般に起きる問題です。ただ、建設業の場合はさらに難しさがあります。

たとえば、建材は配送しづらいものが多くあります。木材、ボード、設備機器などは、宅配便で気軽に送れるものばかりではありません。実際には「近くなら取りに行く」「地図で場所が分かるなら検討できる」という使われ方になりやすいです。

また、建材の売買は誰とでもできるわけではありません。まっとうな会社ほど、一般のフリマアプリに出すことには抵抗があります。業者同士で、相手の顔が見え、請求・税務処理もきちんとできる状態でないと使いにくい。相談企業のアプリでも、名刺画像や事業者番号で建設業者であることを確認し、プロ向けに限定する設計がされていました。

一方で、広告だけを回しても初期利用は増えにくいです。対象は全国にいる小規模建設会社とはいえ、「余剰在庫を売りたい」「少量だけ欲しい」というタイミングは会社ごとにばらつきます。さらに、普段は既存の材料店や問屋との取引があり、多少安いだけでは購買行動は変わりません。

最初の課題は認知不足ではなく、利用する理由を実感できるだけの出品量・買い手候補・取引実績がないことです。

背景

余剰在庫は小規模な内装・リフォーム・設備会社ほど発生しやすい

このアプリの背景には、建設業の在庫の持ち方があります。大手ゼネコンや大手ハウスメーカーのような会社は、基本的に自社で余剰在庫を多く抱えにくい構造です。一方で、地域の専門工事会社や小規模リフォーム会社は、現場ごとに材料を手配し、余った材料を一時的に倉庫へ置くことがあります。

特に相性がよさそうなのは、以下のような業種です。

  • 内装工事会社
  • リフォーム会社
  • 水回り・設備工事会社
  • 電気工事会社
  • 塗装工事会社
  • 原状回復工事会社

理由は、扱う材料の種類が多く、少量需要も発生しやすいからです。クロスはロットが変わると色味が微妙に変わるため、余分に取ることがあります。キッチンや洗面台のような設備も、品番違いや仕様変更で新品同様のものが余ることがあります。リフォーム会社であれば、「大量にはいらないが、ちょうど合うものが安く手に入るなら欲しい」という場面もあります。

一方で、鉄筋工事のように現場ごとの手配が明確で、在庫の横展開がしにくい業種は、初期ターゲットとしては優先度が下がります。もちろん将来的な広がりはありますが、立ち上げ段階では、在庫が生まれやすく、買う理由も想像しやすい業種から始めるほうが現実的です。

相談者も「小規模でリフォームをやっている会社が一番のターゲットになってくる」と話していました。売上規模でいえば、地域の数億円規模までの会社が中心です。大きすぎる会社よりも、倉庫に材料が残りやすく、社長や現場責任者が判断しやすい会社のほうが初期ユーザーになりやすいと考えられます。

初期開拓では、建設業全体を狙うのではなく、余剰在庫と少量需要が同時に起きやすい業種に絞ることが重要です。

解決

地域と業種を絞って協力ユーザーを数社ずつ作り、出品と取引の実績から広げる

立ち上げ期にやるべきことは、全国広告ではなく、地域を絞った協力ユーザーづくりです。最初から全国の建設会社に向けて発信しても、画面上に商品が少なければ離脱されます。まずは地図上で見ても「このエリアでは動いている」と分かる状態を作る必要があります。

進め方としては、まず関西圏の数府県など、実際に取りに行ける距離感のエリアに絞ります。そのうえで、内装、リフォーム、水回り設備、塗装、電気などの業種ごとに、3社から4社程度の協力ユーザーを集めます。

このときの目的は、単に登録数を増やすことではありません。

  • 出品してくれる会社を作る
  • 買う可能性がある会社を作る
  • 実際に商品が並んでいる画面を作る
  • できれば数件の取引実績を作る
  • 利用者の声や具体例を蓄積する

初期ユーザーは「登録者」ではなく、「出品・閲覧・問い合わせ・購入の動きを作ってくれる協力先」として集めるべきです。

営業先のリストも、業種名だけで広く集めるより、在庫が出やすい条件で絞るほうが効果的です。たとえば、地域のリフォーム会社、内装仕上げ会社、原状回復会社、水回り設備会社などを中心に、売上規模や事業内容を見ながら優先順位をつけます。大手よりも、地域密着で倉庫を持っていそうな会社、現場ごとに材料を抱えやすい会社、社長や番頭が直接判断できそうな会社が候補になります。

営業トークも、アプリの機能説明から入るより、相手の現場課題から入るほうが伝わります。

たとえば出品者向けには、次のような切り口です。

「現場で余った材料や、倉庫に眠っている設備を、業者間で必要な会社に渡せる仕組みです。処分するしかなかったものを、少しでも現金化できる可能性があります」

購入者向けには、別の切り口になります。

「リフォームや小規模工事で、少量だけ必要な材料を探せる業者向けの仕組みです。近隣の出品場所が地図で分かるので、取りに行ける範囲の建材を確認できます」

ここで大事なのは、出品者と購入者を完全に分けすぎないことです。地域のリフォーム会社は、ある日は余剰在庫を売る側になり、別の日には少量材料を探す側になります。つまり、初期開拓では「売る人を集める営業」と「買う人を集める営業」を別々に行うより、両面の価値を伝えたほうが利用イメージが湧きやすくなります。

また、横流しや転売に見えない設計も重要です。普段取引している材料店やメーカーとの関係を壊すような見え方になると、建設会社は使いづらくなります。あくまで、現場で余った材料、返品できない材料、倉庫に眠っている資産を必要な業者へつなぐ仕組みであることを明確にする必要があります。

初期の2〜3か月は、次のような順番で進めると現実的です。

  1. 対象エリアを取りに行ける範囲に絞る
  2. 内装・リフォーム・設備など在庫が出やすい業種を選ぶ
  3. 業種ごとに数十社の候補リストを作る
  4. 出品者・購入者の両方に刺さる営業スクリプトを作る
  5. 協力ユーザーを業種ごとに数社ずつ集める
  6. 出品作業まで伴走し、商品が並ぶ状態を作る
  7. 問い合わせや取引実績を作り、次の営業材料にする

その後に、業界団体、協力会、教育コンテンツ、既存ネットワークを使った認知拡大へ進むのが自然です。たとえば、安全衛生教育や職長教育のように、建設会社や協力会社が集まる接点で紹介する方法もあります。ただし、そこでも商品が並んでいない状態では効果が薄くなります。

広告や業界向け発信は、最初の動きが見えてからのほうが効きます。「こういう余剰建材が出ている」「実際に近隣の業者が活用している」「処分予定だったものが売れた」といった具体例があると、見た人が自社の倉庫を思い浮かべやすくなります。

立ち上げの順番は、認知拡大が先ではなく、狭い地域で出品と取引の実績を作り、その実績を持って広げることです。

まとめ

建設業向けのマッチングアプリは、プロダクトが完成した瞬間から自然に広がるものではありません。特に余剰建材の売買は、商品が並び、近くで使っている業者がいて、取引の安心感が見えて、ようやく利用イメージが湧きます。

今回のようなサービスでは、まず全国展開を急がず、地域と業種を絞ることが大切です。内装、リフォーム、設備、塗装、電気など、在庫が発生しやすく、少量需要もある業種から始める。業種ごとに数社ずつ協力ユーザーを作り、出品と取引の実績を積む。そのうえで、業界団体や教育コンテンツ、既存ネットワークを使って認知を広げる。

この順番で進めると、アプリの価値が「便利そう」ではなく「うちでも使えそう」に変わります。

最初の利用者集めで見るべき数字は、登録数だけではありません。どの業種で、どの地域に、どれだけ商品が並び、誰が買う可能性を持っているか。その密度を作ることが立ち上げの土台になります。

最初の協力ユーザーづくりから整理したいときに

建設業向けの新規サービスやアプリは、現場の課題に合っていても、最初の広げ方でつまずくことがあります。特にマッチング型の仕組みは、出品者と購入者の両面をどう集めるか、どの地域から始めるか、どの業種を優先するかを整理するだけで、動き方がかなり変わります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。販路拡大や新規事業の立ち上げについても、「うちの場合は誰にどう広げるべきか」「営業リストやスクリプトをどう作るべきか」という段階から一緒に考えることができます。

何から整理すべきかわからない段階でも問題ありません。無理な営業はいたしませんので、状況の整理先としてご活用ください。

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