千葉県北西部の防水工事会社が、営業代行頼みから自社の販路づくりへ動き始めている状況
千葉県北西部にある、数名体制の防水工事会社の相談です。主な工事は、マンション・アパート・団地・公共施設などの屋上防水や修繕系の防水工事です。戸建ての小規模補修よりも、ある程度まとまった屋上防水や改修工事を得意としています。
現在の受注は、既存取引先からの紹介に加えて、外部の営業代行会社経由の案件が大きな割合を占めています。営業代行会社が一括で工事を受け、その中から防水工事を振ってくれる形です。仕事自体は来ていますし、会社としても「かなり助かっている」という実感があります。
一方で、社長の中には次のような感覚もあります。
「営業代行にお願いしている仕事はありがたいです。ただ、儲かる案件の入口を見ていると、自分でも取りに行けたらなと思うんです」
ここで大事なのは、営業代行を否定する話ではないということです。むしろ、今の売上を支える販路として機能しているなら、急に切り替える必要はありません。ただ、売上を安定させ、将来的に5億円、6億円規模を狙うなら、外部から来る案件を待つだけでなく、自社で関係を作る販路が必要になります。
この会社の場合、今は協力会社が数社あり、将来的には番頭クラスを2〜3名置き、その下に職人をつけながら、協力会社とも組んでいく構想があります。つまり、販路開拓は単に「仕事を増やす」ためだけではなく、人員体制・協力会社体制に合う仕事を選ぶためのテーマでもあります。
大手元請けに入りたいわけではなく、利益を残せる直接取引先をどう選ぶか
販路開拓というと、まず大手ゼネコン、大手管理会社、大手デベロッパー、ハウスメーカーなどを思い浮かべることがあります。名前のある会社とつながれば仕事が増えそうに見えますし、実績としても見栄えがあります。
しかし、今回の相談では社長の感覚がはっきりしていました。
「大手とはつながりたくないです。叩かれるというか、競争がすごいので」
これはかなり重要な視点です。大手案件は、入口が広く見えても、実際には競争が激しく、見積もり参加社数も多くなりがちです。相談の中でも、ある人気案件について「一つの入札に50社、100社と入る。宝くじを当てるようなもの」という表現が出ていました。
大手との取引は、受注できれば売上は大きくなります。ただし、専門工事会社にとっては以下のような負担もあります。
- 価格競争に巻き込まれやすい
- 報告・書類・管理の手間が増える
- 下請け階層が深くなり、利益が薄くなりやすい
- 継続取引につながっても、自社主導で提案しにくい
- 小規模な自社体制では対応負荷が大きい
もちろん、大手との取引がすべて悪いわけではありません。体制が整っていて、単価・工期・管理条件が合うなら、有力な販路になります。ただ、今回のように数名体制で、協力会社も2〜3名規模が中心の場合、最初から大手の競争案件を主戦場にするのは、体力を削りやすい選択です。
社長が求めていたのは、「大手の二次、三次に入ること」ではありませんでした。
「お客さんと直接やりたいですね」
ここでいう直接取引とは、必ずしも施主直という意味だけではありません。地場ゼネコンや不動産管理会社、公共工事に強い会社などと、防水工事会社として一次に近い立場でつながることです。防水だけを分離して任せてもらえる、または入札や修繕案件の中で防水部分を指名してもらえる関係を作ることが、今回の販路開拓の本質です。
営業代行が一括受注する構造では、防水会社としての関係資産が残りにくい
現在の営業代行経由の仕事には、良い面があります。営業部隊を自社で持たなくても、案件を持ってきてもらえる。大きめの現場がまとまって入ることもある。防水会社としては、施工に集中しやすい面があります。
一方で、構造的な限界も見えていました。
営業代行会社は、防水だけではなく、塗装・足場・外壁・図面の拾い出し・見積もり作成などを含めて、工事全体を受けられる体制を持っています。発注者側から見ると、防水だけを個別に依頼するより、全体をまとめて管理できる会社に頼んだ方が楽です。
社長もその点をよく理解していました。
「防水だけを分離で投げるのと、全体を一括で管理できる人がいるのと、どっちに仕事を振りますかって話ですよね」
つまり、営業代行会社は単なる紹介者ではなく、発注者の面倒を引き受ける受け皿になっています。そのため、現場で良い仕事をしても、発注者から直接「次もお願いします」となりにくい場合があります。
実際には、「あの防水会社を入れてほしい」と指名されることはあっても、直接依頼にはつながりにくい。ここに販路開拓上のもどかしさがあります。
この構造を整理すると、課題は次の3つです。
1つ目は、案件は来るが、取引先との関係が自社に蓄積しにくいことです。営業代行経由の案件では、発注者との窓口を営業代行側が持つため、自社の営業資産になりにくい面があります。
2つ目は、自社の得意な仕事を選びにくいことです。今回の会社は屋上防水、修繕、団地・マンション・公共施設系に強みがあります。しかし、流れてくる案件に合わせるだけでは、得意領域に寄せていくことが難しくなります。
3つ目は、協力会社を増やすための安定感を作りにくいことです。協力会社を増やすには、「仕事が安定してある」「この会社についていくと先が見える」という状態が必要です。スポットで案件が来るだけでは、協力会社側も動きにくくなります。
今回の会社も、協力会社を増やしたい意向はあります。ただ、先に仕事が安定してから増やしたいという順番でした。これは自然な判断です。だからこそ、販路開拓では単発案件を追うよりも、継続的に小〜中規模案件が出る相手を見つける必要があります。
狙うべきは大手競争案件ではなく、分離発注と修繕に強い地場の取引先
このケースで優先すべき販路は、大きく3つに整理できます。
1つ目は、地場の中堅ゼネコンです。大手ゼネコンの下に入るのではなく、地域で修繕・改修・公共施設・集合住宅を扱っている地場ゼネコンとつながるイメージです。
特に相性がよいのは、以下のような会社です。
- マンション・団地・公共施設の改修実績がある
- 屋上防水や外壁改修を定期的に扱っている
- 大手ほど価格競争が激しくない
- 協力業者の入れ替え余地がある
- 現場監督や工事部門が専門業者を探している
このとき、会社規模だけで判断しないことが大切です。売上規模が大きい会社ほど良いとは限りません。今回の相談でも、社長は「会社の規模感はあまり気にしない」と話していました。見るべきは規模よりも、防水工事を分離して任せる余地があるかです。
2つ目は、不動産管理会社・修繕に強い不動産系会社です。大手管理会社ではなく、地域で賃貸マンション、アパート、団地、商業ビルなどの修繕を抱えている会社です。
不動産会社と聞くと、売買仲介や賃貸仲介のイメージが強いかもしれません。しかし、管理戸数を持っている会社、オーナーとの関係が深い会社、修繕工事を定期的に手配している会社は、防水工事会社にとって有力な入口になります。
ただし、ここでも注意点があります。小さすぎる戸建てバルコニー補修ばかりでは、今回のような会社の得意領域と合わない可能性があります。狙うなら、屋上防水・共用部修繕・中規模改修につながる管理会社です。
3つ目は、公共工事や住宅修繕の入札に強い会社です。相談の中で印象的だったのは、公共住宅や空き家修繕に強い会社とのつながりです。その会社は、公共系の書類作成や入札対応に慣れており、年に数本でも利益率の高い案件につながる可能性がありました。
社長も、こうした会社への関心を示していました。
「役所の工事で入札するから、この物件の見積もりをお願い、という形なら全然できます。図面から拾って出せます」
これは重要です。現地調査に何度も行く必要がある営業活動は、繁忙期には負担になります。一方で、図面や仕様書があり、拾い出しと見積もりで対応できる案件なら、現場を止めずに進めやすい。防水工事会社にとっては、入札対応力のある会社の下で専門工事を担うという販路も現実的です。
では、実際にどの順番で開拓すべきか。判断軸は5つです。
1. エリアは「近いほどよい」を前提に、移動時間で線を引く
今回の会社は、千葉県北西部を起点に、東京東部、埼玉南部、茨城南部、栃木南部、神奈川は川崎周辺までが現実的な範囲でした。
販路開拓では、単に「対応エリアは関東一円」と広げない方がよいです。営業先を広げすぎると、現調・打ち合わせ・緊急対応・職人の移動が重くなります。
まずは、片道1時間〜1時間半で動ける範囲を中心にする。そのうえで、利益率が高い案件、図面対応で済む案件、継続性が高い案件だけ、少し遠方も許容する。この線引きが必要です。
2. 工事種別は「屋上防水」「修繕」「団地・マンション・公共施設」に寄せる
何でもできます、という営業は便利に見えて、相手に刺さりにくくなります。今回の会社の場合は、屋上防水を中心に、マンション、アパート、団地、公共施設、学校などの修繕系に実績があります。
この場合、営業先への伝え方は「防水工事全般」では少し弱いです。むしろ、屋上防水・集合住宅修繕・公共施設の防水改修のように、発注者が自分ごと化しやすい言葉にした方がよいです。
3. 案件規模は、協力会社が回せるサイズから逆算する
現在の協力会社は数社で、1社あたり2〜3名規模が中心です。この体制で、いきなり大型案件を複数取りに行くと、受注できても施工体制が詰まります。
まず狙うべきは、小さすぎず、大きすぎない修繕案件です。数名の協力会社で回せる規模の現場が、継続的に出る相手が理想です。
大きな案件は魅力的ですが、体制を超えた受注は現場にも経営にも負荷が出ます。販路開拓では、売上額だけでなく「今の人員で利益を残して終われるか」を見る必要があります。
4. 直接取引先は「分離発注してくれるか」で見極める
防水工事会社にとって最大の分岐点は、相手が防水工事を分離して発注する考えを持っているかどうかです。
外壁・塗装・足場・防水をすべて一括で出したい会社の場合、防水会社が単独で入り込む余地は少なくなります。一方で、専門工事ごとに信頼できる業者へ分けたい会社、入札後に専門業者を探す会社、現場監督が防水業者の手配に困っている会社は、有力な対象です。
初回面談では、いきなり売り込むよりも、以下を確認するとよいです。
- 防水工事は普段どのように手配しているか
- 既存業者で困っていることはあるか
- 屋上防水の見積もりは誰が拾っているか
- 修繕案件は年間どのくらいあるか
- 公共・集合住宅・管理物件の比率はどのくらいか
ここで、相手の発注構造が見えてきます。狙うべきは、防水の専門性を必要としているが、固定業者に依存しきっていない会社です。
5. 入札・書類・図面対応に強い相手を味方にする
防水工事会社が単独で公共工事の元請けを狙うのは、体制面で重いことがあります。書類、入札、図面、積算、管理、実績要件などが絡むためです。
しかし、公共工事や公的住宅修繕に慣れている会社とつながれば、防水工事会社は専門工事に集中しながら、利益率の良い案件に関われる可能性があります。
今回の相談でも、「書類や入札に慣れている会社」「公共住宅や空き家工事に強い会社」は、かなり相性が良い対象として見えていました。
つまり、販路開拓の優先順位はこうなります。
- 近隣エリアの地場中堅ゼネコン
- 集合住宅・団地・公共施設の修繕に強い会社
- 管理物件を持つ不動産管理会社
- 公共工事・住宅修繕の入札対応に強い会社
- そのうえで、条件が合う大手・準大手案件を選別する
大手を完全に避ける必要はありません。ただ、最初から競争の激しい大手案件に突っ込むより、利益と関係性が残る相手から開拓する方が、中小の専門工事会社には合いやすいです。
まとめ
専門工事会社が売上を伸ばすとき、単に「大きい会社とつながる」ことが正解とは限りません。今回の防水工事会社のように、営業代行経由で仕事が来ている会社ほど、次に考えるべきは自社に関係資産が残る販路です。
特に、数名体制で協力会社を使いながら伸ばしていく会社では、以下の視点が重要になります。
- 大手の競争案件ではなく、地場の直接取引先を探す
- 屋上防水・修繕・集合住宅・公共施設など得意領域を明確にする
- 分離発注してくれる相手を見極める
- 協力会社が回せる案件規模から逆算する
- 入札や書類対応に強い会社を味方につける
営業代行は、今ある販路として活かせばよいです。そのうえで、自社でも少しずつ取引先を作っていく。いきなり営業部を持たなくても、まずは狙う相手を絞り、紹介や顧問人脈を使って会う機会を作るところから始められます。
大切なのは、「どこでもいいから仕事が欲しい」ではなく、「うちの体制で利益を残せる仕事はどこから来るのか」を決めることです。そこが定まると、営業先も、会社案内の見せ方も、協力会社の増やし方も、かなり整理しやすくなります。
自社に合う販路を整理したいときは、取引先の選び方から一緒に考えられます
「営業代行に頼っている状態から、自社でも販路を作りたい」「大手に行くべきか、地場を狙うべきか迷っている」「どんな会社に声をかければ分離発注につながるのか分からない」という段階でも、整理できることは多くあります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大、組織づくり、原価管理、採用、デジタル活用まで、現場の実態に合わせて横断的に整理し、実行まで支援しています。ものづくりに集中できる建設業界へ向けて、無理に大きく見せるのではなく、会社の体制に合う成長の道筋を一緒に考えます。
うちの場合はどんな取引先を狙うべきか、何から整理すればよいか、という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、必要なタイミングでご相談ください。
































