前提

東北圏で鉄道・高速道路まわりの改修を担う20名弱の会社が、二次請け中心のまま売上拡大を考えている状態

東北地方に本社を置く、20名弱の専門工事会社の相談です。鉄道関連工事、高速道路まわりの改修、内装、解体、建築一式に近い工事を幅広く受けており、年商は数億円規模。現在は、一次請け会社の下に入る二次請けの立場で仕事を受けることが多い会社です。

仕事の出どころは安定しています。鉄道会社や道路会社に関連する工事は毎年一定の予算があり、主要駅の改修やトンネル関連の工事など、継続的な案件があります。一方で、発注者と直接つながっているわけではなく、実際には一次請け会社から声がかかり、その下で現場を納めている構造です。

社長の言葉で印象的だったのは、次の一言でした。

「売上を倍にするなら、どこかで一次請けくらいにならないと難しいとは思うんです」

ただし、今すぐ一次請けに上がりたいという単純な話ではありません。現在も、ある一次請け会社には管理者として2〜3名を出し、現場ごとに協力会社を組み合わせて納めています。社長自身も「Aの現場があれば、うちから管理者を出して、下請けを使って現場を収める形が理想」と話していました。

つまり、この会社の現在地は、完全な職人部隊でもなく、完全な一次請けでもないという位置です。現場を動かす力はある。協力会社のネットワークもある。けれど、元請け・一次請けとして前面に立つには、まだ慎重に見ている状態です。

課題

売上を倍にしたい一方で、一次請け化には許可・書類・管理負荷の壁がある

二次請け中心の会社が売上を伸ばすとき、よく出てくる論点が「一次請けになるべきか」です。

一次請けになれば、発注者や元請けに近い立場で案件を受けられます。単価交渉の余地も広がり、仕事の見通しも立てやすくなります。二次請け・三次請けで間に入る会社が減れば、利益も残しやすくなります。

ただ、一次請けになることは、単に「上の商流に行く」という話ではありません。相談企業でも、直接取引の話が出たことはあるものの、社長はこう話していました。

「特定建設業許可を持ってないとダメだよ、と言われることがあるんです」

「取ろうと思えば取れます。ただ、そこまでやってどうなのかな、というのはあります」

「一次さんを見ていると、結構大変じゃないですか。やることが多いので」

ここに、二次請け会社が一次請け化を考えるときの本質があります。一次請けになるには、施工力とは別の会社機能が必要になります。

たとえば、次のような負荷です。

  • 特定建設業許可など、受注金額や下請発注に応じた許可・要件への対応
  • 発注者・元請けが求める信用力、実績、財務面の見え方
  • 安全書類、施工体制台帳、各種届出、報告書類への対応
  • 工程・品質・安全・原価を自社で握る現場管理体制
  • 協力会社を束ねる購買・手配・支払管理
  • 事故・遅延・追加変更への責任範囲の拡大

二次請けのときは、一次請け会社が前面で受けていた負荷を、自社で持つことになります。売上が増える可能性がある一方で、管理負荷と責任も一段上がるということです。

背景

既存の一次請け会社の一員のように動ける力があるからこそ、次の商流を迷っている

この会社が一次請け化を考える背景には、すでに「現場を任される力」があることが大きく関係しています。

社長は、もともと職人として足場、型枠、鉄筋など幅広い現場を経験してきました。今の会社でも「これしかできません」ではなく、内装、解体、建築一式に近い対応をしながら、必要に応じて協力会社を組み合わせています。

発注側から見れば、これはかなり頼みやすい存在です。一次請け会社にとっても、単なる作業員の応援ではなく、現場を一緒に納めてくれるパートナーに近い立ち位置です。

実際、社長もこう話していました。

「対応が無理な工種であれば、管理する人間はいるので、協力会社をくっつけたりしています」

「だから外注が多いんです。自社の人間が何でもできるわけではないので」

ここで大事なのは、同社が目指している成長が「自社職人を大量に増やす」方向だけではないことです。むしろ、管理者を置き、若い協力会社や外注先を組み合わせて現場を納める形を理想にしています。

そのため、いきなり一次請けに上がるよりも、まずは今の強みを評価してくれる一次請け会社を増やすほうが現実的な場合があります。

相談の中でも、「今付き合っている一次請け会社のような会社が、もう1社増えるとどうか」という話になりました。社長の答えは、「まずは1社くらいでいい」というものでした。3社も4社も増えると、今度は自社側がキャパオーバーになるからです。

これは非常に現実的な判断です。売上を伸ばすには取引先を増やす必要がありますが、受け切れない仕事を増やしても信用を落とすだけです。一次請け化を考える前に、まず自社の管理者数、協力会社の動員力、書類対応力、現場を並行して回せる数を見ておく必要があります。

解決

いきなり元請けを狙うより、有力な一次請けを紹介してもらう成長ルートから始める

二次請け会社が売上を伸ばすとき、選択肢は「今のまま」か「いきなり一次請け」だけではありません。むしろ、成長ルートは段階的に考えたほうが進めやすくなります。

まず整理したいのは、一次請け化を目的にしないことです。目的は売上と利益を伸ばし、会社として安定して仕事を受けられる状態をつくることです。そのために一次請けが必要なのか、強い一次請けの下で二次請けとして厚く広げるほうがよいのかを見極めます。

今回のような会社であれば、現実的には次の3段階が考えられます。

1. 既存の強みが刺さる一次請け会社を増やす

現在の強みは、鉄道・道路・駅・施設改修のような、継続的に工事が出る領域で実績があることです。内装、解体、建築一式に近い対応ができ、必要に応じて協力会社を組めることも強みです。

この強みを活かすなら、まず狙うべきは、発注者や大手元請けから仕事を受けている有力な一次請け会社です。

ただし、飛び込みで一次請け会社に営業しても、なかなか話は進みません。相手からすると、知らない二次請け会社にいきなり重要な現場を任せる理由がないからです。

そこで有効なのが、発注者・元請け側から「この会社、一度会ってみて」と紹介してもらうルートです。大手元請けや発注者側も、一次請け会社の人手不足や協力会社不足に困っていることがあります。そこに、現場を納められる二次請け会社がいれば、一次請け会社にとってもプラスになります。

つまり、狙うべきは元請けの中を直接攻略することではなく、元請けが信頼している一次請けを紹介してもらうことです。

2. 二次請けのまま、管理者を出せる会社として取引を深める

紹介で接点ができたら、最初から一次請けを取りに行く必要はありません。まずは二次請けとして入り、管理者を出し、協力会社を束ね、現場をきちんと納める実績をつくります。

ここで見るべきポイントは、単発の案件金額ではなく、次のような相性です。

  • 年間を通じて案件が出る領域か
  • 自社の管理者を活かせる現場か
  • 内装・解体・建築一式に近い対応力が評価されるか
  • 協力会社を使う前提を理解してもらえるか
  • 書類・安全・工程面で、今の体制で無理なく対応できるか

この相性がよければ、二次請けのままでも売上は伸ばせます。特に、既存の一次請け会社に近い役割をもう1社で持てると、売上の柱が分散します。

3. 一次請け化は「取る案件」と「体制」が見えてから判断する

一次請けになるかどうかは、営業先が見えてから判断しても遅くありません。

たとえば、特定建設業許可を取ること自体は可能でも、それを活かせる案件がなければ、許可を取っただけで終わってしまいます。逆に、継続的に一次請けとして受けられる案件が見え、社内の管理者、書類対応、協力会社網、資金繰りまで準備できるなら、一次請け化は十分に検討する価値があります。

判断軸は、次の4つです。

  1. 売上増加分に対して、管理負荷が見合うか
  2. 特定建設業許可や信用要件を満たす意味がある案件があるか
  3. 現場代理人・管理者・書類担当を無理なく置けるか
  4. 既存の一次請け会社との関係を傷つけずに進められるか

特に4つ目は重要です。今の二次請けの売上をつくってくれている会社を飛び越える形になると、短期的には案件を取れても、長期的な信用を失うことがあります。一次請け化を狙うなら、既存商流とは別の発注者・元請け・一次請けルートで進めるほうが安全です。

まとめ

二次請け中心の建設会社が売上を伸ばすとき、一次請け化は魅力的な選択肢です。商流が上がれば、利益率や案件の見通しが改善する可能性があります。

ただし、一次請けになることは、施工力だけでなく、許可、信用、書類、現場管理、協力会社管理、資金繰りまで含めて会社の機能を一段上げることです。売上を伸ばす手段として一次請け化を考えるべきであって、一次請けになること自体を目的にしないほうがよいです。

今回のように、すでに一次請け会社の下で管理者を出し、協力会社を組み合わせて現場を納めている会社であれば、まずはその強みを評価してくれる一次請け会社を増やすルートが現実的です。

発注者や大手元請けを直接取りに行くのではなく、そこから信頼されている一次請け会社を紹介してもらう。二次請けとして実績を積みながら、必要な許可・管理体制・書類対応を整える。そして、案件と体制が見えた段階で一次請け化を判断する。

この順番なら、今の仕事を壊さずに、売上拡大への道筋をつくりやすくなります。

一次請け化の前に、自社に合う商流の上げ方を整理する

「うちは一次請けを目指すべきなのか」「二次請けのまま取引先を増やすほうがよいのか」は、会社の施工力だけでは判断できません。既存取引先との関係、管理者の人数、協力会社網、許可の状況、書類対応力、狙いたい発注者や元請けの特徴まで見て整理する必要があります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の販路拡大、組織体制、原価管理、デジタル活用まで横断して、現場に合う成長ルートづくりを支援しています。

「うちの場合は、一次請けに上がるべきか」「まずはどんな一次請け会社とつながるべきか」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、考えを整理する場としてご活用ください。

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