前提

売上5億円台後半から10億円を目指す電気工事会社が、追加採用の手前で立ち止まっている状況

関東圏で改修・修繕を中心に動く、20名弱の電気工事会社の話です。

現在は、集合住宅の現状回復や共用部修繕を軸に、1人1台の車で各担当者が自走する体制を取っています。1人あたり月30〜40件ほどを回す動き方です。小口の改修を大量に、かつ確実にさばける点は、外から見るとかなり強い体制です。

売上は5億円台後半。2〜3年で10億円規模を目指したいという意欲があります。

ただ、採用には慎重です。

社長はこう話していました。

「今あと2人ぐらいいると、ちょうど回るんです。そこまでは必要。でも、さらに追加で人を入れるとなると、何をさせるのか。何で食わせていくのか、そこが見えていないんです」

ここが大事です。 いま不足している人員を補う採用と、売上を伸ばすための攻めの採用は、同じ採用でも判断軸が違います。

前者は、既存業務を円滑に回すための採用です。 後者は、新しい売上の柱をつくるための採用です。

この会社は、すでに前者の採用には動いています。求人媒体を変えながら、まずは足元の2名を探している段階です。

一方で、その先の採用には踏み切れていません。

理由はシンプルです。 採用した人に継続して任せる仕事が、まだ具体的に見えていないからです。

1週間で 6件ダウンロード されました

  • 7月2日防水工事会社茨城県
  • 6月30日ビルメンテナンス北海道
  • 6月30日ビルメンテナンス福岡県
  • 6月29日総合建築千葉県
  • 6月29日総合建築東京都
  • 6月28日配管工事会社富山県
  • 6月27日リフォーム会社山口県
  • 6月27日内装工事会社大阪府
  • 6月26日塗装工事会社秋田県
  • 6月26日配管工事会社三重県
  • 6月26日工務店宮崎県
  • 6月25日内装工事会社長野県
  • 6月23日プラント工事会社神奈川県
  • 6月23日外構工事会社岐阜県
  • 6月19日空調設備工事会社兵庫県
  • 6月19日総合建築鳥取県
  • 6月19日配管工事会社東京都
  • 6月18日総合土木東京都
  • 6月18日空調設備工事会社兵庫県
  • 6月18日防水工事会社岡山県
  • 6月16日配管工事会社青森県
  • 6月16日総合建築神奈川県
  • 6月16日電気設備工事会社東京都
  • 6月15日総合土木千葉県
  • 6月15日内装工事会社島根県
  • 6月15日設備保全会社群馬県
  • 6月14日内装工事会社栃木県
  • 6月14日塗装工事会社神奈川県
  • 6月13日解体工事会社神奈川県
  • 6月11日総合建築和歌山県
中小建設業のための新規採用成功ガイド 資料ダウンロード
課題

需要があると言われても、採用した人を食わせる仕事が見えないこと

電気工事の需要はあります。特に改修や修繕、小口工事をきちんと拾える会社は、発注側から見ても貴重です。

大型の新築、データセンター、工場系の工事へ人が流れる中で、集合住宅や管理物件の細かな電気工事を継続して対応できる会社は限られています。

ただ、需要があることと、自社が採用を増やしてよいことは別です。

社長の言葉が、その感覚をよく表しています。

「仕事先がないのに取るのは、ちょっと不安です」

「アクセルを踏むなら、ここだっていう道がないと人は雇えない」

これは弱気な判断ではありません。むしろ健全です。

採用は固定費です。しかも建設業では、採用して終わりではありません。教育、車両、道具、現場配置、資格、既存社員との役割分担までついてきます。

さらに、この会社のように既存業務がすでに高回転で動いている場合、無理に人を増やすと現場のバランスが崩れます。

たとえば、大きめの二次請け工事に入る案もあります。けれど社長はこう見ています。

「うちの体制だと、出せてもマックス3人で1週間ぐらいです。じゃないと今受けている仕事がこなせなくなっちゃう」

ここにも大事な論点があります。 成長のための仕事が、既存の稼ぐ仕組みを壊してしまうなら、その仕事は今の会社に合っていない可能性があります。

売上を伸ばしたい。 でも既存顧客の仕事は落とせない。 人は採りたい。 でも任せる仕事が見えない。

この板挟みが、「案件が先か、採用が先か」という悩みの正体です。

背景

小口改修を高速で回せる強みがある一方で、次の柱にする案件の単価と頻度が読めていないこと

この会社には、すでに強みがあります。

集合住宅の現状回復、共用部の修繕、絶縁不良の改修、LED化など、細かな電気工事を数多く回せます。1人1台で動き、現場代理人的に自走できる人がいる。これは簡単に真似できる体制ではありません。

ただ、社長自身はそこにまだ確信を持ちきれていません。

「自分はこの会社に入ってから電気工事を始めたので、周りの業界のことも知らない。どういう仕事が利益をつけられるのか、まだ現実を知らないんです」

この率直さは、多くの中小建設会社にも通じる話です。

自社の中では当たり前にやっていることが、外から見ると強みになっている。 でも、その強みをどの市場に当てればよいかが見えない。

たとえば、民間賃貸の現状回復は候補に上がります。けれど社長は慎重です。

「民間の賃貸って、あまりお金をかけないと思っているんです。掃除してクロスを貼り替えて終わり、ぐらいじゃないのかなと」

「1件やって平均1万円ぐらいしか出ないなら、やる意味がない」

もちろん、すべての民間賃貸がそうとは限りません。エアコン更新、分電盤、浴室乾燥機、インターホン、共用部LED化など、一定単価になる工事もあります。

ただ、問題はそこではありません。

知りたいのは“案件があるか”ではなく、“継続して人を食わせられるだけの単価・頻度・手離れがあるか”です。

社長は、紹介や人脈だけでは判断できないとも話していました。

「こういう仕事がありますよ、という話はありがたい。でも、1件あたり平均いくらぐらいで、うちの電気工事だとどれくらい利益が出そうなのか。そういうリアルな数字がないと、うんとは言えない」

「一回受けちゃったら、途中で投げ出すわけにいかないですから」

ここは非常に実務的です。

営業の入口では、どうしても「紹介できる」「つながれる」「需要がある」という話になりがちです。けれど、採用判断に必要なのはもっと現場寄りの情報です。

具体的には、次のような情報です。

  • 1件あたりの売上単価
  • 粗利の見込み
  • 月に何件出るのか
  • 工期は何日か
  • 何人必要か
  • 現場の段取りは安定しているか
  • 追加や手戻りが多くないか
  • 既存業務から何人抜けるのか
  • 新人や若手に任せられる工程があるか

この会社の場合、候補になりやすいのは、アパート・マンション向けのインターホン更新、共用部照明のLED化、防犯カメラ更新、店舗・テナント・オフィスの改装に伴う電気工事などです。

一方で、一般住宅向けの工事は「やりたくない」と明確に外しています。店舗系も、工程が崩れやすい相手は避けたいという考えがあります。

「ちゃんと工程を引いてくれて、ちゃんと工程通りにいくところがいいです」

この一言も重要です。 単価が高くても、工程が崩れて既存社員が疲弊する仕事は、成長の土台になりにくいからです。

解決

採用を急ぐ前に、現有体制で小さく受注して“人を増やせる仕事”か検証すること

採用か、案件獲得か。 この二択で考えると迷いやすくなります。

実際には、順番を分けると考えやすくなります。

まず既存業務を回すための不足人員は採用する。次に、成長採用の前提になる仕事を小さく検証する。

この会社でいえば、足元の2名採用は既存業務を円滑にするための採用です。ここは別枠です。

その先の採用は、まだ踏み込まない。 代わりに、「この仕事なら5人、10人増やしても食わせられる」と思える案件を探しにいく。

ただし、いきなり大きく受ける必要はありません。

社長が求めていたのも、巨大案件ではありませんでした。

「1,000万、2,000万、3,000万の大きい仕事ください、というスタンスではないんです。10万でも100万でもいいので、ちょこちょこ継続的に出してくれるところがいい」

この方向性は、採用判断と相性が良いです。

採用前に見るべきなのは、派手な売上ではありません。 小さくても、繰り返し出て、任せ方を型化できる仕事かどうかです。

進め方は、次の順番が現実的です。

まず、今の体制で対応できる工事を棚卸しします。

この会社の場合、アパート・マンション向けのインターホン更新、共用部LED化、防犯カメラ更新は「規模感によるが対応可能」という認識でした。店舗・テナント・オフィスも、相手と工程次第では対応可能です。

次に、受けない仕事も決めます。

一般住宅は外す。工程が崩れやすい店舗系は慎重に見る。大型新築や長期で人を張り付ける工事も、今の体制には合いにくい。

この線引きがあると、営業先や紹介先に伝える言葉が変わります。

「うちはこういうスタイルで動いています。10万〜100万円規模でも、継続して出る改修・修繕系の仕事を探しています。こういう会社の使いどころはありますか」

社長自身も、まさにこの聞き方を望んでいました。

「うち今こういうスタイルで動いてます。新しい仕事が欲しいんですけど、こういう会社って使いどころありますかね、って聞いてもらったほうがいい」

「ないならないで、うちのこのやり方じゃ無理なんだって悟れる」

この聞き方は、非常に実務的です。

発注側の上層部よりも、現場に近い支店長、部長、現職の担当者のほうが、リアルな頻度や単価を知っていることがあります。採用判断の材料にするなら、抽象的な需要感よりも、現場側の数字が必要です。

小さく検証するときは、次の5つを見ます。

  1. 単価:1件あたり10万円なのか、100万円なのか、それ以上なのか
  2. 頻度:月1回なのか、毎週あるのか、年数回なのか
  3. 手離れ:見積・段取り・追加対応にどれだけ時間を取られるか
  4. 人数:1人で回せるのか、2〜3人必要なのか
  5. 既存業務への影響:今の主力業務から人を抜いても崩れないか

この5つが見えれば、採用の判断がかなりしやすくなります。

たとえば、月に数件あり、1〜2人で対応でき、工程が安定していて、粗利も残る仕事なら、1人採用する理由になります。

逆に、単価は高くても、3人を1週間取られ、既存業務が詰まる仕事なら、今の段階では見送る判断もあります。

採用のアクセルは、“案件が取れそう”で踏むのではなく、“この仕事で何人を何か月稼働させられるか”が見えてから踏むほうが安全です。

そのためには、営業活動も採用活動も同時に進めるのではなく、役割を分けて進めるのが良いです。

既存業務の不足分は採用する。 成長分は、まず仕事の型を検証する。 検証できたら、採用人数を決める。 採用後に任せる工程を決める。

この順番なら、採用が賭けになりにくくなります。

まとめ

売上を伸ばす局面では、「案件が先か、採用が先か」で悩みます。

電気工事会社の場合、需要があることは追い風です。小口改修や修繕をきちんと回せる会社は、発注側から見ても価値があります。

ただし、需要があるから採用する、では少し粗い判断になります。

今回の会社のように、すでに高回転で既存業務を回している場合はなおさらです。

大事なのは、採用を止めることではありません。 既存業務を守る採用と、成長のための採用を分けて考えることです。

足元で必要な人は採る。 その先は、採用した人に任せる仕事を先に検証する。

見るべきは、案件名ではありません。

単価、頻度、手離れ、必要人数、既存業務への影響です。

この5つが見えれば、「この道で踏んでいこう」という判断がしやすくなります。

採用は勇気がいる意思決定です。だからこそ、気合いで踏むより、踏める道を先につくる。 そのほうが、会社にも現場にも無理が出にくくなります。

採用前に任せる仕事を整理したいときは

「人を採りたいが、何を任せるかがまだ見えない」 「売上を伸ばしたいが、既存業務を崩したくない」 「うちの体制に合う案件がどこにあるのか、整理したい」

こうした段階では、採用計画だけを見るよりも、案件の種類、単価、稼働人数、現場負荷を一緒に整理したほうが考えやすくなります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、販路拡大、人材確保、組織づくり、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。

まだ「うちの場合は何から考えるべきか」という段階でも大丈夫です。無理な営業はせず、状況を伺いながら次の整理先を一緒に考えます。

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