電気工事は需要が伸びる一方で、資格者と経験者を抱えられる会社が限られている状況
電気工事業は、仕事そのものの将来性は明るい領域です。首都圏の再開発、インフラ更新、省エネ・環境対応、EV関連設備、リニューアル工事など、電気に関わる工事は今後も幅広く発生します。
一方で、電気工事は誰でもすぐに始められる仕事ではありません。国家資格が必要で、資格を取った翌日から一人前に施工できるわけでもなく、現場で経験年数を積む必要があります。
建設業全体では就業者の高齢化が進み、農業に次いで高齢化率が高いとも言われます。電気工事業でも同じです。許可業者数は増えている一方で、1社あたりの社員数は小さくなっています。以前は5人、10人を抱えていた会社から若手が独立し、2〜3人規模の会社が増える。そんな構造です。
つまり市場には仕事があります。会社数もあります。けれど、人を抱え、育て、一定規模の仕事を受けられる会社はむしろ限られてきているというのが、いまの電気工事業の現在地です。
求人を出すだけではなく、若手が入社後の未来を描ける会社になる必要がある
採用難の中でよく出る悩みは、「そもそも応募が来ない」「若い人が電気工事に興味を持ってくれない」というものです。
ただ、現場の変化を見ていると、少し違う兆しも出ています。首都圏のある職業訓練系の学校では、電気工事関連の希望者が前年より増えているという話がありました。建設業の就業者数も一部では増加傾向が見られます。
背景には、AIに代替されにくい技能職への見直しがあります。ホワイトカラーの仕事がAIで変わっていく中で、手に職をつける仕事、現場で価値を出せる仕事に目を向ける若手が出てきています。
実際に、神奈川県東部のある電気工事会社では、若手採用が進み、1年で複数名を採用できたそうです。別の場面では、大学生から「電工ができないならいいです」と言われたという話もありました。現場管理だけでなく、電工として技能を身につけたい若手が出てきているのです。
ここで大事なのは、採用市場が単純に「人がいない」だけではなくなってきている点です。これからは、若手が電気工事業を選ぶ可能性がある一方で、その中で“どの会社を選ぶか”がよりはっきり分かれる時代になります。
求人票の見せ方だけでは足りません。入社した後に、どんな技術が身につくのか。どんな現場を経験できるのか。どのくらい稼げるようになるのか。管理側に進むのか、技能を極めるのか。そうした未来が見えない会社は、候補者の選択肢に残りにくくなります。
人を採れる会社は、利益を出して社員に還元し、教育に投資できる体質を持っている
若手に選ばれる会社の差は、採用広報だけで決まりません。根っこには、会社の収益力と経営体質があります。
ある電気工事会社の財務を見ながら、役員報酬、社員給与、工事原価、人件費の推移を確認する場面がありました。そこで出ていたのは、利益を出している会社ほど財務体質を強くでき、さらに社員への還元や教育投資に回しやすいという見方です。
もちろん、営業利益率が下がっているから悪い会社とは限りません。近年は人材確保のために賃金を上げる必要があります。会社に残していた利益を、社員の給与に回しているケースもあります。働き方改革への対応もあります。
大切なのは、利益率の数字を単体で見ることではありません。
- 売上と利益が長期的にどう推移しているか
- 人件費が増えている理由は、人員増なのか、賃金改善なのか
- 役員報酬と社員給与のバランスはどうか
- 外注依存なのか、自社で電工を抱えているのか
- 現場管理を担える人材と、施工を担う職人の両方をどう育てているか
こうした点を見ていくと、採用に強い会社の輪郭が見えてきます。
「人を抱えれば将来は明るい」という言葉がありました。電気工事業では、その通りだと思います。ただし、人を抱えるには先に利益体質が必要です。人材投資は気合いではなく、利益を出しながら続ける経営判断です。
紹介会社に費用を払って採用するにしても、教育担当を置くにしても、新卒を迎えるにしても、回収までには時間がかかります。50万円、100万円の採用費を短期のコストとして見るのか、数年かけて戦力化する投資として見るのか。ここで経営者の考え方が分かれます。
採用戦略は「若手に何を約束できる会社か」を経営から逆算して整える
若手に選ばれる会社になるには、求人媒体を増やす前に、会社として何を約束できるかを整理することが先です。
特に電気工事業では、次の6つが採用力の土台になります。
1つ目は、将来性のある仕事を持っていることです。 マンション、商業施設、工場、公共工事、リニューアル、弱電、EV関連など、自社がどの領域に強いのかを言語化します。若手は「この会社に入ると、どんな現場経験が積めるのか」を見ています。
2つ目は、利益を社員に還元する考え方です。 給与を上げるには原資が必要です。無理に賃金だけを上げるのではなく、粗利、外注費、材料費、現場管理の精度を見直し、利益を出せる仕事を増やすことが前提になります。
3つ目は、教育体制です。 電気工事は資格と経験が必要です。だからこそ、入社後にどの資格をいつ取るのか、誰が教えるのか、どの現場で何を覚えるのかを見える形にしておく必要があります。昔ながらの「見て覚えろ」だけでは、若手は不安になります。
4つ目は、キャリアの分岐を示すことです。 今後、AIやデジタル活用によって、現場管理の仕事の一部は変わっていく可能性があります。一方で、電工の技能そのものは代替されにくい領域です。現場代理人を目指す道と、電工として腕を磨く道。その両方を会社の中でどう評価するかが重要です。
5つ目は、DX・AI活用を経営者自身が前向きに捉えることです。 若手が入ると、勤怠、図面、写真管理、チャット、生成AIなど、仕事の進め方にも新しい感覚が入ってきます。社長がそれを面倒なものとして扱うか、会社を強くする道具として扱うかで、若手の定着感は変わります。
6つ目は、経営者の成長意欲です。 採用できている会社は、社長が「人を入れて会社をどうしたいか」を持っています。売上を伸ばすだけでなく、社員に環境を用意したい、技術を継承したい、地域で必要とされる会社でありたい。そうした姿勢は、面接や会社説明で自然に伝わります。
採用の打ち手としては、まず次の順番で整理すると進めやすくなります。
- 自社の主力工事と今後伸ばしたい工事を整理する
- 直近3〜5年の売上、利益、人件費、外注費の推移を見る
- 若手に任せられる仕事と教育担当を決める
- 資格取得、給与、キャリアの道筋を言語化する
- 求人票や採用ページに、現場経験と育成方針を反映する
採用は入口ですが、実際には経営体質づくりそのものです。 人を採る会社になるには、人を育てても崩れない利益構造と、人が残りたくなる環境を同時に整える必要があります。
まとめ
電気工事業は、人手不足が続く業界です。ただし、悲観だけで見る必要はありません。AIに代替されにくい技能職として、若手から見直され始めている面もあります。
これからは「誰も採れない時代」ではなく、選ばれる会社と選ばれにくい会社に分かれる時代になっていきます。
選ばれる会社は、仕事の将来性を語れます。利益を出し、社員に還元できます。教育体制を整えています。現場管理と職人技能の両方にキャリアを用意しています。DXやAIも、若手を受け入れるための環境づくりとして前向きに使います。
求人広告を出す前に、自社は若手に何を約束できるのか。そこから整理していくことが、採用戦略の第一歩です。
若手に選ばれる電気工事会社になるための整理を進めたい方へ
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「採用を強化したいが、何から整えるべきかわからない」「若手を採る前に、教育体制や利益構造を見直したい」「自社の場合、電工と現場管理をどう育てるべきか考えたい」といった段階でも大丈夫です。
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