千葉県西部の10名ほどの専門工事会社で、協力職人の高齢化が施工力の先行きに直結している状態
千葉県西部で大手住宅メーカーの住宅工事を中心に請けている、10名ほどの専門工事会社の話です。社員は現場管理と事務を含めて少数精鋭。社内には20代、30代の社員もいますが、施工を支えている職人側は年齢が上がってきています。
現場の感覚としては、「若いのがあまりいない」「年取ってるのが引退してくるので、先はプラスマイナスゼロ」という見立てでした。いまの施工量がすぐに大きく落ちるわけではありません。ただ、数年後を考えると、協力業者や一人親方に頼るだけでは、施工力を維持しにくくなる局面に入っています。
一方で、希望もあります。若い職人の中には、18歳から始めて23歳前後で親方として動けるようになっている人もいます。現場でも「4年、5年しっかりやればできる」という感覚があります。つまり、育たない業種ではありません。問題は、採った若手を何年で、誰が、どこまで育てるかを会社として設計できているかです。
若手を採る前に「誰が教えるのか」が決まっていないと、採用そのものが定着につながらない
若手採用を考えると、求人票、給与、休日、学校訪問などに目が向きます。もちろん入口は大切です。ただ、自社職人化を考える会社ほど、入口の前にもう一つ決めておくべきことがあります。
若手を採ったあと、誰が教えるのか。何年で一人前にするのか。どの資格・技能まで会社として持たせるのか。
現場ではよく、「取ったはいいが、誰が教えるんだ」という壁に当たります。今回の会社でも、若手採用の目標を考える中で、いきなり年間何人も採るより、まずは3年の間に1名から3名、状況によっては5名を目指すくらいの現実的な線が見えてきました。
理由はシンプルです。教える側のキャパがあります。現場を回しながら育てる以上、採用人数は“欲しい人数”ではなく、“育て切れる人数”から逆算する必要があります。
「3年あればイーブンに持っていける」という見立てがあるなら、3年間の中身を分解することが大切です。
- 1年目は、現場の基本動作、安全、道具、会社の考え方を覚える
- 2年目は、任せられる作業範囲を増やし、資格取得にも着手する
- 3年目は、工程や周囲との連携を理解し、後輩を支えられる状態に近づける
こうした道筋がないまま採用すると、若手は「自分が何を覚えれば上がるのか」が見えません。教える側も「何をどこまで教えればよいのか」が曖昧になります。結果として、現場任せ、親方任せになりやすいのです。
一人親方で人が来る時代から、会社が職人を育てる時代へ変わっている
これまでの専門工事会社は、腕のある一人親方や協力業者と組むことで施工力を確保してきました。その形が悪いわけではありません。むしろ、多くの会社がその関係性で現場を守ってきました。
ただ、これからは少し前提が変わります。職人の高齢化が進み、若い一人親方が自然に集まる時代ではなくなっています。だからこそ、会社側が未経験者を社員として迎え、育成し、施工力として残す仕組みを持つ必要が出ています。
今回の会社でも、中心事業は大手住宅メーカーの住宅工事です。今すぐ別の仕事に大きく広げる段階ではありません。ただ、将来を考えると、特定の仕事だけに技術が閉じるより、複数の施工領域に応用できる力を育てたほうが会社は強くなります。
会話の中でも、「一つの仕様だけで終わらないように」「他の仕事も覚えながら」という方向性が出ていました。これは採用広報の飾り文句ではなく、育成方針そのものです。
若手にとっても、“この会社に入れば一つの作業だけでなく、複数の技能を身につけられる”という道筋は魅力になります。 大工系の技能、躯体系の技能、将来的な施工管理系資格など、会社の事業に必要な範囲で「次に何を覚えるか」が見えると、働く側も成長を実感しやすくなります。
もう一つ大事なのは、教える側の準備です。職人として腕があることと、人を育てられることは別です。現場で強く言う、背中を見て覚えろと言う、相手によって態度が変わる。こうした昔ながらのやり方は、若手には伝わりにくくなっています。
「4月の一番大事な時期に放置していたら、良い人材が入っても辞めますよ」という言葉がありました。まさにその通りで、入社直後の数か月は、若手を育てる会社かどうかが伝わる最初の勝負どころです。
採用人数、教育担当、資格、複数技能、独立後の関係までを3年計画に落とし込む
自社職人を育てる計画は、難しい制度から始めなくても構いません。まずは、3年分の育成計画を一枚に整理することです。大切なのは、きれいな資料を作ることではなく、経営側と現場側で同じ絵を持つことです。
最初に決めたいのは、採用人数です。今回の会社のように教える人員に限りがある場合、初年度から多く採るより、「今年は1名、3年で3名を目標にする」くらいの現実的な計画のほうが育成に集中できます。 職人側から見ても、急に何人も若手を預けられるより、1人をしっかり育てるほうが受け入れやすいはずです。
次に、教育担当を決めます。ここでは「腕の良い人」だけで選ばないことが大切です。
- 若手に説明する時間を取れるか
- 感情ではなく、作業基準で伝えられるか
- 会社の方針を理解しているか
- 後輩の成長を自分の役割として受け止められるか
こうした観点で選ぶ必要があります。場合によっては、既存職人にコミュニケーション研修やリーダー研修を入れるのも有効です。「教わっていないことを、教えろと言われても難しい」からです。 教える側にも、教え方を学ぶ機会が必要です。
三つ目は、資格と技能のマップです。たとえば、入社1年目で安全教育と基本作業、2年目で会社が必要とする資格、3年目で複数職種の補助ができる状態、というように段階を置きます。建築施工管理技士のような資格も、今すぐ必要かどうかだけで判断せず、将来の事業展開に効くかどうかで考えたいところです。
資格手当や受験費用の会社負担も、単なる福利厚生ではなく、育成方針を伝えるメッセージになります。 「会社は本気で技術者を育てるつもりがある」と若手に伝わるからです。
四つ目は、複数技能の習得です。一つの住宅工事だけでなく、関連する作業や別仕様の施工も覚えられるようにしておくと、本人の市場価値も会社の対応力も上がります。現場で「二刀流」ができる人材は、工程の谷間にも強くなります。
最後に、社内職人として残る道と、将来独立して協力関係を続ける道を分けて考えます。若手の中には、いずれ自分でやりたいという人も出てきます。そのときに会社が引き止めるだけだと、関係が切れてしまうことがあります。
だからこそ、最初からこう伝えられると健全です。
「まずは4年、5年しっかり覚えてほしい。社内で職人として上を目指す道もあるし、将来独立するなら、うちと良い関係で仕事を続ける道もある」
社内に残る道と、独立後も協力関係を続ける道を両方用意しておくと、育てた技術が会社の外に消えるのではなく、施工ネットワークとして残りやすくなります。
まとめ
一人親方や協力業者に支えられてきた会社ほど、これからは自社職人の育成が大きなテーマになります。ただし、若手を採れば自然に育つわけではありません。
採用の前に、育成の設計が必要です。 誰が教えるのか、何年で一人前にするのか、どの資格を取らせるのか、複数技能をどう身につけるのか。さらに、社内に残る道と独立して協力する道をどう整理するのか。
今回のように、職人側の平均年齢が上がりつつも、若い職人が5年ほどで親方化している実例が社内外にある会社は、まだ十分に手を打てます。3年後に施工力を落とさないためには、今年採る1人をどう育てるかを決めることが出発点です。
採用計画は人数の話で終わらせず、育成計画とセットで考える。そこまで決めて初めて、求人票や学校訪問で語る内容にも芯が通ります。
自社職人を育てる計画を、まず一緒に整理する
「うちも職人の年齢が上がってきた」「若手を採りたいが、誰が教えるか決まっていない」「社員として残す道と、将来独立する道をどう考えればよいかわからない」。そうした段階でも、整理できることは多くあります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の採用、育成、組織づくり、原価管理、デジタル活用まで横断して、現場に合う進め方を一緒に整理しています。ものづくりに集中できる建設業界へ向けて、まずは自社の施工力をどう次世代に残すかから考えていく形でも大丈夫です。
無理な営業はいたしませんので、「うちの場合は何から決めるべきか」を確認する場としてご活用ください。
































