埼玉県東部で7億円台まで伸びる土木会社が、社長と親族役員で現場を支えている状態
埼玉県東部で土木関連工事を手がける、従業員18名ほどの専門工事会社の話です。創業から20年前後、ゼネコン案件と公共工事の下請けを中心に仕事は安定しており、売上も7億円台が見えている状況でした。
一方で、現場をまとめられる人材は限られていました。社長のほか、創業期から一緒にやってきたいとこ、奥様の弟にあたる親族幹部が中心です。2人とも役員になっており、現場にも出ていますが、社長としては「役員とは別に、職長として現場を任せられる人がほしい」という感覚を持っていました。
職人は一定数います。若手や外国籍の職人も増えてきています。ただ、ゼネコン担当者とやり取りし、工程や人員を見ながら、若手をまとめられる職長層が足りない。社長の言葉を借りると、「職人は増えてきた。でも、本当にほしい職長がいない」という状態です。
この規模の会社では、社長と親族幹部の信頼関係で踏ん張れる時期があります。むしろ、その信頼関係があるからこそ成長できた面も大きいです。ただ、売上や現場数が次の段階に入ると、親族だけで現場と経営を両方支える形には、少しずつ限界が出てきます。
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外から職長を採るだけでは、親族中心の組織に入る不安を越えにくい
職長不足と聞くと、まず「経験者を採用しよう」と考えたくなります。もちろん外部採用は大事です。現場経験があり、ゼネコンとの会話もでき、若手をまとめられる人が入れば、会社の成長スピードは大きく変わります。
ただ、親族幹部が強い会社では、外から来る職長候補にとって別のハードルがあります。「この会社に入って、自分は本当に意思決定に関われるのか」「親族の中に入って、孤立しないか」という不安です。
実際、会話の中でも「親族2人で引っ張っている会社に、番頭として入るのは勇気がいる」という話が出ていました。会議や現場判断の場面で、社長・いとこ・義弟という関係性がすでにある。そこに非親族の職長候補が入ると、本人から見れば「2対1になるのでは」と感じることもあります。
これは、親族経営が悪いという話ではありません。むしろ中小建設会社では、親族が幹部として支えることで、意思決定が早く、苦しい時期も乗り越えられる強さがあります。
問題は、次の職長を迎える・育てる段階では、親族の信頼関係だけではなく、非親族が安心して役割を持てる仕組みが必要になるということです。
社長の頭の中には候補者がいるが、本人に将来像が伝わっていない
この会社には、社内に職長候補として見ている社員が2人いました。社長は「可能性がある」と感じています。一方で、親族幹部の見立ては少し慎重で、社長はこんな趣旨のことを話していました。
「2人いるんですけど、うちの幹部は『たぶん今すぐは無理だろう』と言っているんです。そこは何とかならないのか、という話で」
ここに、職長育成の難しさがよく出ています。
職長は、単に作業がうまい人ではありません。現場を読めること、職人に指示できること、元請けと会話できること、危ない兆候に気づけること、若手に教えられること。いくつもの力が重なります。
そのため、現場の先輩から見ると「まだ無理」と見えるのは自然です。特に創業期から苦労してきた親族幹部ほど、職長に求める基準が高くなります。
ただ、ここで止まってしまうと、候補者本人はいつまで経っても「自分が次を任される側なのか」が分かりません。社長の頭の中にある期待が、本人の人生設計や日々の行動に接続されていないのです。
たとえば、5年後にどの現場を任せたいのか。どの資格を取ってほしいのか。どのくらいの給与水準を目指せるのか。将来的に主任、職長、工事部の中心、別部門の責任者といった道があるのか。
ここが曖昧なままだと、候補者は「頑張れ」と言われても、何をどう頑張ればいいのか分かりません。家族に対しても「この会社でこうなっていく」と説明しづらくなります。
職長育成は、技術を教える前に、会社の未来と本人の未来をつなげる仕事です。
社内候補の育成と外部採用を分けず、役割・教育・評価を同時に整えること
次の職長をつくるには、社内育成か外部採用かを二択で考えないほうが進めやすくなります。今回のような会社では、社内候補2人に望みをかけながら、外部からも職長候補を探す両輪が現実的です。
そのうえで、最初に整理したいのは「誰を職長にしたいか」ではなく、自社にとって職長とは何をする人かです。
たとえば、次のように分解します。
- 元請けとの打ち合わせで、工程・安全・人員の話ができる
- 若手や外国籍の職人に、作業内容を分かる言葉で伝えられる
- 社長や役員に、現場の問題を早めに上げられる
- 原価や手戻りを意識して段取りできる
- 怒る・急かすだけでなく、次にできる行動を示せる
この定義がないまま「職長になれ」と言うと、本人も幹部も評価しづらくなります。逆に、役割が見えると、今足りない力も見えます。
次に、社内候補には将来役割を言葉で伝えることです。社長が「お前には5年後にこの現場を任せたい」「この資格を取ったら、次は職長補佐として動いてほしい」「将来はこのくらいの給与を目指せるようにしたい」と話すだけでも、本人の受け止め方は変わります。
ここで大切なのは、約束を大きく見せることではありません。会社の成長ストーリーの中に、その社員の名前と役割を入れて伝えることです。
外部採用を進める場合も同じです。給与条件だけで勝負するのではなく、「親族幹部の下に入る人」ではなく「次の現場運営を一緒につくる人」として迎える設計が必要です。そのためには、入社後に誰へ相談できるのか、どこまで任されるのか、評価は何で決まるのかを明確にしておく必要があります。
具体的には、次の順番で進めると整理しやすくなります。
- 社長・親族幹部で、職長に求める役割をすり合わせる
「現場ができる人」ではなく、打ち合わせ・指示・安全・育成・報告などに分けて言語化します。
- 社内候補2人について、現在地を同じ基準で見る
作業力、段取り力、伝える力、責任感、周囲からの信頼を分けて見ます。「まだ無理」で止めず、何ができれば次に進めるかを決めます。
- 本人に将来の期待を伝える面談を行う
いきなり役職を渡すのではなく、「職長補佐」「小さな現場の一部管理」など、段階をつくります。
- マネジメント教育を入れる
中小建設会社の職長候補は、管理職研修を受けたことがないケースが多いです。教え方、叱り方、報告の仕方、元請けとの話し方は、経験任せにせず練習する価値があります。
- 評価基準を整える
資格、任せられる現場規模、後輩育成、安全意識、報告精度などを給与や役割に結びつけます。これにより、本人も家族も将来を描きやすくなります。
この流れをつくると、外部から来る人にとっても入りやすい会社になります。社内に相談できる人がいて、役割が決まっていて、評価の見え方がある。非親族でも上がっていける道筋が見えることが、職長採用と定着の土台になります。
まとめ
社長と親族幹部で現場を支えてきた会社は、弱い組織ではありません。むしろ、信頼できる人たちで難しい局面を越えてきた強い会社です。
ただ、売上や現場数が増え、若手職人も増えてくると、次の課題は自然と「非親族の職長をどう育てるか」に移ります。
そのときに必要なのは、即戦力採用だけではありません。社内候補の見立て、本人への将来役割の提示、職長に必要なマネジメント教育、相談できる体制、評価基準の整備を同時に進めることです。
「今すぐ職長は無理」と見える社員でも、何が足りないのかが分かれば育成の道筋はつくれます。外部から迎える人も、親族中心の会社に入る不安を越えられる材料があれば、力を発揮しやすくなります。
次の職長づくりは、人を探す前に、会社の中で“任せる準備”を整えるところから始まります。
次の職長をどう育てるか、まずは自社の現在地を整理する
「うちにも候補者はいるが、任せていいのか分からない」「外から職長を採りたいが、親族中心の組織に合うか不安がある」という段階では、まず社長・幹部・社員それぞれの見え方を整理することが大切です。
ネクスゲートは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。職長候補の見立て、育成ステップ、評価基準、採用時の伝え方まで、会社の実情に合わせて一緒に組み立てることができます。
「何から整理すべきか分からない」「うちの場合は社内育成と外部採用のどちらを優先すべきか」といった段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、考えを整理する場としてご活用ください。































