関東圏で改修工事を手がける数十名規模の会社が、10名近い人手不足を抱えながら採用人数を絞っている状況
関東圏でオフィスや集合住宅の改修を手がける、数十名規模の専門工事会社の話です。
営業、施工管理、事務まわりで人手が足りず、本音では「10名近くほしい」という状況でした。ところが、実際の採用目標を確認すると、すぐに10名を採るという話にはなりませんでした。
理由は明確です。
「欲しいのは欲しいんですけど、一遍に入られても教える体制が全然まだ追いつかなくて。一人ずつ増やしていくイメージです」
採用意欲が低いわけではありません。むしろ人は必要です。ただ、採用した後に育てきれる人数が限られているため、現実的には「3ヶ月に1人」「年間で4名程度」といったペース感になっていました。
これは多くの建設会社で起きていることです。人手不足の問題に見えて、実はその手前に教育キャパシティの問題があるケースです。
現場同行と手取り足取りの教育に頼るほど、採用人数を増やせなくなる構造
この会社では、新しく入った人への教育が、かなり属人的になっていました。
教育の実態を確認すると、「とにかくついていって覚える」という形です。現場に同行し、先輩や上司が横で説明しながら、一つひとつ覚えてもらう。建設業では自然な育て方ですが、これだけに頼ると採用の上限がすぐに来ます。
特に営業や施工管理に近い仕事では、覚えることが幅広くなります。外回り、現場での立ち回り、顧客ごとの注意点、社内の申請、請求や手配との連携など、机上で説明しづらいことが多くあります。
その結果、既存社員から見ると、教育は通常業務に上乗せされます。
「一緒に行きたいけど行けない、みたいな人も出てきている」
この状態で採用人数だけを増やすと、教える側が先に詰まります。新人も十分に教わりきれず、既存社員も疲弊しやすくなります。さらに、時間をかけて教えた人が早期に辞めてしまうと、会社としての損失も大きくなります。
つまり課題は、単に「応募が足りない」ではありません。入社後に育つ仕組みが足りないため、採用を強く踏み込めないことにあります。
教える内容が毎回同じなのに、毎回人が説明していることが負担を大きくしている
対話の中で印象的だったのは、教育内容の多くが「毎回ほぼ同じ」だという点です。
「皆さんに教えることは、0から10まで結局全部一緒みたいな形なんですか」と確認すると、「割と一緒」「とにかくついていって覚える感じ」という反応でした。
ここに改善余地があります。
新人に教える内容には、もちろん人が直接伝えるべきものがあります。仕事への向き合い方、顧客との距離感、現場での判断、会社として大事にしている価値観などは、対話や同行の中で伝わる部分が大きいです。
一方で、何度も同じ説明をしている内容もあります。
たとえば、次のようなものです。
- 社内の経費申請や事務処理の流れ
- パソコン画面を見せながら説明している操作手順
- 現場で最初に確認すること
- 顧客や物件ごとの守るべき注意事項
- 新人が最初に覚えるべき仕事の順番
こうした内容まで、毎回先輩が口頭で説明していると、教育負担は減りません。
「何回しゃべればいいんだよ、となりますよね。辞められたらもう最悪です」
この言葉は、多くの会社の実感に近いはずです。教えること自体は大事です。ただ、毎回同じ説明を人に依存させ続けると、採用するほど現場が苦しくなるのです。
採用目標を教育キャパシティに合わせて段階化し、動画と画面録画で教える土台を作る進め方
まず大事なのは、採用人数を「欲しい人数」だけで決めないことです。
この会社のように、本音では10名近く必要でも、現時点で育てきれる人数が限られているなら、最初は「3ヶ月に1人」「年間4名」など、教育できる人数から逆算した採用計画にする方が現実的です。
そのうえで、次の採用に備えて教育体制を整えていきます。ポイントは、いきなり立派な研修制度を作ろうとしないことです。現場で何度も説明している内容を、まず切り出して残すところからで十分です。
進め方としては、次の順番が考えやすいです。
- 新人が最初の1ヶ月で覚えることを書き出す
- 毎回同じ説明になっている業務を選ぶ
- スマホ動画やパソコン画面録画で手順を残す
- 部署ごとに「最初に見る順番」を決める
- 同行や対面教育は、判断や応用に集中させる
たとえば、経費申請のやり方は、パソコン画面を録画しながら「ここを開いて、ここに入力して、ここで申請する」と残せます。現場ルールも、スマホで撮影しながら説明すれば、文字だけのマニュアルより伝わりやすくなります。
実際に対話の中でも、「動画で見るのが一番伝わりやすい」「文字情報だったら、あっても読むかなという感じがある」という話が出ていました。
建設業の教育は、紙のマニュアルだけでは限界があります。動き、順番、注意する視点、現場での振る舞いは、動画や画面録画の方が伝わりやすい領域です。
ただし、動画を撮れば解決するわけではありません。先に整理すべきなのは、「何を、どの順番で、誰が見ればよいか」です。動画が散らばると、結局見られなくなります。
最初は部署ごとに、次の3分類で整理すると進めやすくなります。
- 全員共通で覚えること
- 職種ごとに覚えること
- 顧客・現場ごとに注意すること
この形にしておくと、営業、施工管理、事務など、それぞれの部署で新人を受け入れやすくなります。理想は、特定の一人が教育係になるのではなく、部署ごとに常に新人を育てられる状態を作ることです。
まとめ
人手不足の会社ほど、採用を急ぎたくなります。ただ、教える体制が追いついていないまま採用人数を増やすと、既存社員の負担が増え、せっかく入った人も定着しづらくなります。
今回のように「10名ほしいが、一度には教えきれない」という状況では、採用を止める必要はありません。むしろ、採用は進めながら、教育できる人数に合わせて採用目標を段階化することが大切です。
同時に、毎回同じ説明をしている業務は、動画や画面録画で残していく。現場同行はゼロにできませんが、同行でしか伝わらないことに時間を使えるようになります。
採用力を上げることと、教育体制を整えることは別々の話ではありません。中小の建設会社では、育てられる会社になることが、結果的に採用人数を増やす土台になります。
自社の教育キャパシティを整理してから採用計画を考える
「人は必要だが、今の体制で何人まで育てられるのか」「動画化するなら、どの業務から始めるべきか」といった整理は、会社ごとにかなり違います。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の採用、人材育成、組織づくり、原価管理、デジタル活用までを横断して整理し、実行まで支援しています。ものづくりに集中できる建設業界へ向けて、現場の実情に合わせた進め方を一緒に考えます。
「うちの場合は採用を先に進めてよいのか」「教育体制をどこから整えるべきかわからない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、状況整理の場としてご活用ください。
































