前提

首都圏でオフィス内装を手がける12名弱の会社が、まず2〜3名の施工管理を採りたい状況

首都圏でオフィス内装を中心に手がける、12名弱の専門工事会社の話です。店舗内装も一部ありますが、主力はオフィス系。社長との距離は近く、社員同士も顔を合わせる機会が多い会社です。

採用はすでに動いていました。複数の求人媒体を使い、スカウト型のサービスも試しています。紹介会社にも声をかけています。それでも、思うように採用が進まない。

採用したい理由は、単純な売上拡大だけではありませんでした。

「今いらっしゃる皆さんの負担がすごく大きいんです」

この一言に、悩みの中心があります。人を増やしたい本当の目的は、既存社員の負担を軽くして、今の状態を少し穏やかにすることでした。

欲しいのは施工管理の経験者です。ただ、経験者採用はどの会社も苦戦しています。未経験者も対象外ではありません。けれど、未経験者を2人、3人と入れると、今度は教える側の負担が増えます。

「未経験の方も、2人3人となるとまた負担になってしまうので」

この感覚は、とても現実的です。採用人数を増やす前に、自社が何人まで育てられる状態なのかを見ておく必要があります。

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課題

人を採るほど現場が楽になるとは限らない採用と教育のズレ

採用の目的が既存社員の負担軽減であるほど、入社後の受け皿が重要になります。人が入っても、すぐに戦力になるとは限りません。特に施工管理や内装工事のように、現場ごとの差が大きい仕事ではなおさらです。

この会社でも、過去に1名採用できたものの、短期で離職してしまった経緯がありました。事情としては、会社側だけではコントロールしにくい面もありました。とはいえ、採用活動に時間もお金もかけた後の早期離職は、やはり現場にも管理側にも重く残ります。

ここで難しいのは、次の判断です。

  • 早く2〜3名採って、負担を分散したい
  • でも、未経験者が複数入ると教育負担が増える
  • 経験者が欲しいが、採用市場では取り合いになっている
  • せっかく採っても、定着しなければ現場は楽にならない

つまり、採用の問題に見えて、実際には「受け入れて育てる体制」の問題も重なっています。

人が足りない会社ほど、採用を急ぎたくなります。これは自然です。ただ、採用だけを増やしても、教える人が疲れてしまえば、既存社員の負担軽減という目的から離れてしまいます。

背景

社長との距離は近い一方で、内装工事の育成はマニュアル化しにくい

この会社には、受け皿としての良い土台もありました。小規模な会社なので、社長との距離が近い。社員同士もこまめに連絡を取る。意見も言いやすい。

「社長との距離はすごく近くて、何でも言えます」

これは大きな強みです。建設業では、社長や上司との距離が遠く、聞きたいことを聞けないまま現場で迷うケースも少なくありません。その意味では、この会社は定着の土台を持っています。

一方で、育成の難しさもはっきりしていました。

「明確にマニュアルがあるわけでもないですし、先輩とのやり取りでやっていく、昔ながらの感じはあります」

さらに、オフィス内装は同じものを毎回つくる仕事ではありません。現場ごとに条件が違います。納まりも違います。関係者も違います。だから、完全なマニュアルにはしにくい。

ここがポイントです。マニュアル化できない仕事だから育成できないのではなく、マニュアル化できる部分と、対話で引き継ぐ部分を分ける必要があります。

評価については、以前より明確になってきているという感触もありました。仕事を任せることも、その人を見ながら行っている。だからこそ、次の段階では「何をどこまでできれば一人前に近づくのか」を、もう少し言葉にしていくことが大切になります。

解決

採用人数を決める前に、教育できる人数と教える役割を決めておく

まず整理したいのは、採用人数ではなく教育可能人数です。今回の会社でいえば、「未経験は1名なら何とか見られる。2〜3名は負担が大きい」という感覚がありました。これは立派な判断材料です。

採用計画は、欲しい人数ではなく、育てられる人数から逆算した方が現場に合いやすくなります。

進め方は、難しく考えすぎなくて大丈夫です。最初に見るべき点は、次の5つです。

1つ目は、教育できる人数の上限です。未経験を同時に何名まで見られるのか。経験者ならどこまで自走を期待するのか。ここを曖昧にしたまま採ると、現場の負担が読めません。

2つ目は、教える役割分担です。誰が現場同行で教えるのか。誰が週次で振り返るのか。誰が困りごとを拾うのか。「みんなで見る」は、実際には誰も見ていない状態になりやすいので、役割だけは軽く決めておきたいところです。

3つ目は、入社後3か月で覚えることの整理です。内装工事のすべてを最初から教える必要はありません。まずは、現場での基本行動、報告の仕方、段取りの確認、先輩に聞くタイミングなど、最初に詰まりやすい部分からで十分です。

4つ目は、評価と成長の見え方です。給与や役職の話だけではありません。「何ができるようになれば次の仕事を任せてもらえるのか」が見えるだけで、新しく入る人の不安は減ります。

5つ目は、マニュアル化しにくい仕事の引き継ぎ方です。現場ごとの差が大きい仕事は、手順書だけでは伝わりません。代わりに、先輩が判断した理由を短く残す形が向いています。

たとえば、現場ごとに次のようなメモを残すだけでも効果があります。

  • 今回、先に確認したポイント
  • 判断に迷ったところ
  • 元請けや協力会社とのやり取りで注意した点
  • 次に同じような現場が来たら気をつけること

これなら、立派なマニュアルを作らなくても始められます。背中を見て覚える育成を、先輩の判断を言葉で渡す育成に少しずつ変えていくイメージです。

この会社のように、社長との距離が近く、意見を言いやすい環境があるなら、その強みを育成に使えます。月1回の大きな会議でなくても構いません。新しく入った人がつまずいた場面を、短く共有するだけでも、育成の精度は上がります。

まとめ

人を採って現場を楽にしたい。これは、多くの中小建設会社に共通する切実なテーマです。ただ、採用した人が育つ前に辞めてしまったり、教育負担が既存社員に集中したりすると、採用の効果は出にくくなります。

今回のような12名弱の内装工事会社では、いきなり採用人数を増やすよりも、まず受け皿を整理する方が現実的です。

見るべき順番は、採用媒体の追加ではなく、教育できる人数、教える役割、入社後3か月の育成内容、評価の見え方です。

もちろん、経験者採用を止める必要はありません。むしろ経験者は必要です。ただし、経験者が採れない期間にも会社が前に進めるように、未経験を1名ずつ育てられる形を持っておく。その方が、長い目で見ると採用の選択肢が広がります。

採用は入口です。定着と育成は、その後の受け皿です。入口だけを広げるのではなく、受け皿を少しずつ整えることが、既存社員の負担軽減につながります。

採用人数を増やす前に、自社の受け皿を一度整理してみる

「うちの場合、未経験は何人まで見られるのか」「経験者を待つべきか、育成体制を先に作るべきか」。このあたりは、会社の規模や現場の回し方によって答えが変わります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の採用、人材定着、育成体制、組織づくりを、現場の実態に合わせて整理し、実行まで支援しています。採用だけでなく、評価や教育、業務整理、デジタル活用まで横断して見ながら、ものづくりに集中できる状態づくりを一緒に考えます。

「まだ何から整理すべきかわからない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、自社の状況を一度言葉にする場としてご活用ください。

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