前提

元請けが現場を開設し、一次下請けから順に施工体制と作業員名簿を整える安全書類の基本フロー

安全書類システムに作業員を登録する業務は、元請けだけで完結するものではありません。基本となるのは、元請けがシステム上に現場を開設し、一次下請け以降を順番に招待して、施工体制と作業員名簿をつくる流れです。

一般的な操作の順序は、次のように整理できます。

  1. 元請けが現場を開設する
  2. 元請けが一次下請けを招待する
  3. 一次下請けが二次下請け、二次下請けが三次下請けを招待する
  4. 各社が自社の作業員を作業員名簿へ追加する
  5. 元請け側で施工体制と入場予定者を確認する

一次下請けがすでにシステムのアカウントを持ち、従業員や作業員の情報をマスター登録していれば、現場ごとに一から入力する必要はありません。マスターから対象者を選び、「この現場にはこの作業員が入ります」と作業員名簿へ追加できます。

つまり本来は、自社の作業員情報は、その作業員を雇用・管理している会社が登録する設計です。ただし、多重下請けの現場では、この基本どおりに進まないことが少なくありません。

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課題

二次・三次下請けが操作できず、一次下請けに代行登録が集中する状態

現場で起きやすいのは、二次・三次下請けが安全書類システムを操作できず、一次下請けが下位会社の分まで登録する状態です。

実際の運用を知る担当者からは、次のような話がありました。

「二次、三次が自分たちで操作できれば、それぞれ招待して登録できます。ただ、大体の会社はできないので、一次下請けがまとめて作業員名簿をつくっているケースが多いです」

この場合、一次下請けは自社分だけでなく、二次・三次下請けについても、会社情報の確認、作業員情報の収集、システムへの入力、修正対応まで担います。入場直前に作業員が変われば、変更連絡を受けて再登録する必要もあります。

問題は、単に入力件数が多いことだけではありません。誰が情報の正しさに責任を持つのかが曖昧なまま、操作だけが一次下請けへ集まることにあります。

登録主体が決まっていないと、次のような状態になりやすくなります。

  • 下位会社から必要な情報がそろわない
  • 作業員の変更が一次下請けへ伝わらない
  • 同じ作業員を現場ごとに何度も入力する
  • 所属会社と登録上の会社が一致しない
  • 現場入場の直前に登録作業が集中する

「一次下請けが入力する」という運用自体が悪いわけではありません。下位会社のデジタル対応状況を考えれば、代行したほうが早く正確な現場もあります。ただし、その場合も代行する範囲と情報確認の役割まで決めておくことが欠かせません。

背景

アカウントやマスターが整わず、紙と番号で作業員をひも付ける現場運用

登録業務が一次下請けへ集中する背景には、会社ごとのシステム対応力だけでなく、作業員情報の持ち方が統一されていない事情があります。

ある現場では、職人の名前ではなく番号でシステムへ登録し、その後に紙を使って「この番号はこの人」とひも付けていました。画面上には協力会社が登録されず、作業員がすべて一社にひも付いている状態だったといいます。

この方法は、その場で入場者を管理するだけなら回るかもしれません。しかし、別の現場へ移るたびに情報を再利用したり、施工体制と実際の所属を照合したりする場面では扱いにくくなります。

安全書類システムの負担は、画面操作よりも、その前段にある作業員情報の収集と整備で決まります。

たとえば、下位会社が自社の作業員マスターを持っていなければ、現場が変わるたびに一次下請けが名前や所属を確認することになります。複数の安全書類システムやCCUSなどを併用していれば、同じ情報の入力先も増えます。

また、システムごとに権限や操作フローが異なる点も見逃せません。施工体制を作成できる権限、作業員を追加できる権限、下位会社を代行登録できる権限が分かれているため、業務フローを理解しないまま新しい仕組みを足すと、二重入力が増える可能性があります。

「どのタイミングで、誰が、どちらのシステムへ登録するのかが分からないと、連携の形も決められない」という指摘は、まさにこの問題の核心です。

解決

登録主体と代行ルールを先に決め、現場入場前のデータ連携を一本化する進め方

見直しの起点は、システムを変えることではありません。元請け、一次下請け、二次・三次下請けの役割を、現場入場までの時系列に沿って決めることです。

1.登録主体を階層ごとに決める

最初に、自社登録と代行登録のどちらを原則とするかを決めます。

  • 操作できる会社は、自社の作業員を自社で登録する
  • 操作が難しい会社は、上位会社が代行する
  • 作業員情報の正しさは、所属会社が確認する
  • 元請けは、施工体制と入場条件を確認する

ここで重要なのは、全社に同じ方法を求めないことです。自社登録できる会社まで一次下請けが代行すると、業務は減りません。反対に、操作できない会社へ無理に任せると、未登録や入力不備が増えます。

協力会社ごとに「自社登録」「一次下請けが代行」「個別確認が必要」の3区分程度に分けると、運用を整理しやすくなります。

2.代行登録への同意を記録する

一次下請けが二次・三次下請けの情報を代行登録する場合は、会社間の同意を残します。

運用上は、必ずしも紙の覚書だけが選択肢ではありません。書面で取り交わすシステムもあれば、プロダクト上で「代行登録に同意した」という履歴を残すものもあります。

大切なのは、誰が、どの会社の、どの情報を代行登録することに同意したのかを後から確認できる状態です。実際に必要となる同意方法や保存形式は、利用するシステム、元請けの運用、社内規程に合わせて確認します。

3.作業員マスターの管理元を一つにする

現場ごとの入力負担を減らすには、作業員マスターを整える必要があります。

少なくとも、作業員本人を識別できる情報、所属会社、登録状況、入場予定の現場が食い違わないようにします。番号と紙だけで対応するのではなく、システム上の作業員と実際の所属会社を追える状態にすることが重要です。

同じ作業員情報を複数の場所で別々に更新しないこともポイントです。どのシステムを基準データとするかを決め、ほかのシステムには連携または転記する形にします。

4.登録期限を「現場入場前」に置く

登録作業は、現場が始まってからではなく、作業員の入場前に完了させます。ただし、一律に何日前と決めるだけでは、急な応援や人員変更に対応しにくくなります。

そこで、次の二段階で管理すると実務に合わせやすくなります。

  • 通常の入場予定者は、元請けが確認できる期限までに登録する
  • 直前の変更者は、変更連絡と登録確認を同時に行う

一次下請けが代行する場合も、下位会社から情報を受け取る期限を別に設けます。元請けへの提出期限と、一次下請けが情報を受け取る期限を同じにしないことが、直前の集中を防ぐポイントです。

5.既存システムとの連携は入出力の可否から確認する

安全書類システム、CCUS、新たに導入する現場システムを連携させる場合は、それぞれの操作フローを先に確認します。

確認したいのは、次の点です。

  • どのシステムが作業員情報の基準になるか
  • CSVの出力と取り込みの両方が可能か
  • APIなどの連携手段があるか
  • 誰の権限でデータを登録・更新できるか
  • 登録内容をどのタイミングで同期するか

たとえば、CSV出力だけが可能で、取り込みには対応していないシステムもあります。この状態で「連携できる」と考えると、結局は別システムへの手入力が残ります。

連携方針は機能の有無だけでなく、現場開設から入場までのどこでデータを渡すかによって決まります。連携できない期間は、すべてを二重入力するのではなく、基準システムを決めたうえで差分だけを更新する運用が現実的です。

まとめ

多重下請け現場の作業員登録は、一次下請けが代行する場面を完全になくすことが難しい業務です。二次・三次下請けの対応状況によっては、一次下請けがまとめたほうが現場を円滑に進められます。

ただし、一次下請けが担うべきなのは無条件の丸抱えではなく、合意された範囲での代行登録です。

見直す順番は、次のとおりです。

  1. 階層ごとの登録主体を決める
  2. 代行登録への同意を記録する
  3. 作業員マスターの管理元を決める
  4. 現場入場前の登録期限を分けて設定する
  5. 既存システムとの入出力と権限を確認する

「誰が入力するか」だけでなく、「誰が情報を確認し、どのデータを正とするか」まで決めることで、一次下請けへの集中と二重入力を減らせます。まずは一つの現場を対象に、元請けによる現場開設から作業員入場までを書き出すと、自社で詰まっている箇所が見えやすくなります。

自社の作業員登録フローを一度整理したい方へ

安全書類の登録業務は、元請けの運用、協力会社の構成、利用中のシステムによって整理の仕方が変わります。「うちの場合は誰を登録主体にすべきか」「既存システムとの二重入力をどこから減らせるか」という段階からでも整理できます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場業務や組織体制、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行を支援しています。状況を伺ったうえで進め方を一緒に考えますので、無理にサービスを勧めることはありません。

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