前提

首都圏の5名規模の専門工事会社に、九州の大型施設工事で10人・20人単位の動員相談が来ている状態

首都圏に拠点を置く、5名ほどの専門工事会社の話です。通信キャリア関連の店舗・施設工事を中心に、全国各地の案件を元請けに近い立場で受けてきました。

普段から愛知、福岡、広島、沖縄方面まで現場があり、社長自身も新幹線や飛行機で移動しながら、現場確認と協力会社との調整を続けています。固定客が中心で、ホームページも最近まで必要性をあまり感じていなかったほど、既存の取引で仕事が回っている会社です。

一方で、年齢や取引先との関係が積み上がるにつれて、以前より大きな話が入るようになってきました。たとえば九州の大型半導体関連施設のような現場で、「全体では1日1,000人以上が入る。そのうち10人でも20人でも30人でも出せないか」という相談です。

社長の言葉を借りると、悩みはかなりはっきりしています。

「でかい仕事が来るんです。でも、うちが受け切れない。人を出せるなら魅力はあるけど、その人たちのケツを拭かなきゃいけないのが一番怖い」

ここで起きているのは、単なる人手不足ではありません。大型案件を受けるための協力会社動員体制が、まだ会社の仕組みとして固まり切っていないという課題です。

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課題

人を集めるだけでは受注できず、品質・教育・責任まで背負えるかが問われている

大型案件で必要になるのは、「何人集められるか」だけではありません。むしろ重要なのは、集めた人を現場でどう動かし、どう品質を揃え、トラブルが起きたときにどこまで責任を持つかです。

この会社は、全国の現場で地元職人を使うこと自体には慣れています。ただし、基本方針は明確です。

現地の職人だけに丸投げしない。半分は自社側のメンバーを連れていき、仕事をまとめる。

理由は、施工品質と現場ルールの理解にあります。通信キャリア関連の工事では、一般的な内装工事の感覚だけでは通用しない部分があります。マニュアルに沿って、決められた仕様で確実に仕上げる必要があるためです。

社長も、「できると言われても、やってみないとわからない」「下手を打ってやり直しになるのが一番怖い」と話していました。これは多くの専門工事会社が感じている実感に近いはずです。

職人本人は悪気なく「できます」と言う。けれど、いざ現場に入ると、業界特有の組み上げ方や確認ポイントが違う。結果として、手直しや工程遅れが発生し、最終的には元請けとして受けた会社が責任を取ることになります。

大型案件では、このリスクが人数分だけ大きくなります。10人、20人、30人を出すということは、人数をそろえる力ではなく、複数班を管理する力が問われるということです。

背景

全国現場を社長の人脈と現場感で回してきた会社ほど、大型案件で属人管理の限界が出やすい

この会社は、協力会社をまったく持っていないわけではありません。むしろ全国に現場があるため、各地に知り合いはいます。現場メンバーのつながり、社長自身の人間関係、紹介で出会った職人や会社を使いながら、これまで仕事をつないできました。

ただ、全国対応には地域ごとの難しさがあります。

たとえば、同じ工事でも愛知と大阪では施工単価の感覚が違う。ある地域では材料が足りないと言われても、別の地域では在庫が十分にある。初めて取引する会社から前払いを求められ、支払った後に材料がそろっていないことがわかる。こうしたことは、現場で肌身をもって経験しないと見えてきません。

社長は、価格交渉も品質確認も、かなりの部分を自分で担っていました。現場中に電話が入り、クロスの品番変更を伝え、初めて取引する愛知の職人ともオンラインで顔を合わせてから依頼する。こうした動きが日常になっています。

このやり方は、小回りが利くうちは強いです。社長が直接見れば、相手の人となりも、金額感も、仕事の危なさもある程度判断できます。

しかし、大型案件になると話が変わります。社長一人が全員を直接見て、全日程を追い、毎日の動きを調整するには限界があります。

特に、大型施設工事で10人・20人単位を出す場合は、次のような管理が必要になります。

  • どの協力会社が、いつ、何人出せるのか
  • その職人は、どの工種・作業範囲なら任せられるのか
  • 現場ルールや仕様を事前に理解しているのか
  • 日々の出面、進捗、是正事項を誰が確認するのか
  • 手直しや欠員が出たとき、誰が補完するのか
  • 支払い条件やトラブル時の責任範囲をどこまで決めているのか

これらが曖昧なまま人だけ集めると、受注した会社が現場の最後の責任を抱え込むことになります。

つまり、背景にあるのは、社長の現場感で乗り越えてきた全国対応を、班単位で再現できる仕組みに変える必要性です。

解決

協力会社の社長にアプローチし、動員可能人数・教育・日々の稼働管理まで先に設計する

大型案件を受ける準備は、「人を探す」から始めると危うくなります。先に整理すべきは、どの規模の案件なら、どの条件で受けられるのかという受注基準です。

この会社の場合も、社長は「直接職人を採るというより、職人を抱えている会社の社長に対してのアプローチになる」と話していました。これは重要な視点です。

10人・20人単位の動員を考えるなら、個人の職人を点で集めるより、協力会社の社長と話し、会社単位・班単位で動員できる状態を作るほうが現実的です。

進め方としては、次の順番が考えやすいです。

まず、案件要件を分解します。大型案件と一口に言っても、必要な人数、工期、工種、求められる施工品質、現場ルール、入場条件はそれぞれ違います。「何人ほしいか」ではなく、「どの作業を、どの品質で、何日間、誰の管理下で進めるか」まで落とします。

次に、協力会社ごとの動員可能人数を把握します。ここでは、名簿を作るだけでは足りません。見るべきは、最大人数ではなく、安心して任せられる人数です。

たとえば、ある会社が「10人出せます」と言っても、その10人全員が同じ品質で動けるとは限りません。実際には、信頼できる職長が1人いて、その下に3〜4人なら安定する、というケースもあります。大型案件では、この見極めが受注判断に直結します。

そのうえで、班編成を設計します。初めての協力会社だけで1班を作るのではなく、自社側または既存協力会社の中核メンバーを班長・サブ班長に置き、初回は混成班にする。これにより、現場ルールや品質基準を現場内で伝えやすくなります。

この会社が普段から「半分は自社側のメンバーを連れていく」と考えているのも、同じ発想です。大型案件では、それを感覚ではなく、班編成ルールとして持つことが大切です。

さらに、現場に入る前の教育を用意します。教育といっても、分厚い資料を作る必要はありません。最初は、次のような項目をチェックシート化するだけでも効果があります。

  • この現場で絶対に守る施工手順
  • 一般工事と違う組み上げ方・納まり
  • 写真管理や報告のルール
  • 材料・工具の準備責任
  • NG施工と手直し基準
  • 当日の連絡先と判断フロー

ポイントは、「なぜそれをやるのか」まで伝えることです。社長が話していたように、初めて入る職人からすると、「なぜそんなことまでやらなきゃいけないのか」と感じることがあります。そこを事前に潰しておくことで、現場での衝突や手戻りを減らせます。

日々の稼働管理も、受注前に決めておきたい部分です。大型案件では、現場に入ってから管理方法を考えると遅れます。少なくとも、出面、作業範囲、進捗、是正事項、翌日の必要人数は毎日確認できる状態にしておく必要があります。

社長がすべての連絡を受けるのではなく、班長、現場担当、社長の間でどの情報をどこまで上げるかを決めておく。これだけでも、社長が「全部自分で見に走る」状態から少し抜けやすくなります。

最後に、責任範囲と支払い条件を先に決めます。ここを曖昧にすると、紹介した側・受けた側・元請け側の間で認識がずれます。

特に初めての協力会社では、前払い、材料準備、欠員時の対応、手直し費用、事故・破損時の負担などを口約束にしないことが重要です。大げさな契約書でなくても、発注書や確認書の形で、最低限の取り決めを残すだけでトラブルの芽は減らせます。

大型案件を受けるための準備は、結局のところ、次の3つに集約されます。

誰が出せるか。誰が教えるか。誰が毎日見るか。

この3つが見えていれば、10人・20人単位の相談が来たときに、「今回は受ける」「この条件なら受ける」「今は断る」と判断しやすくなります。

まとめ

大型案件の引き合いがある会社ほど、人手不足だけが問題ではありません。むしろ、チャンスが来ているからこそ、受けた後に品質と責任を守れるかが問われます。

今回のように、全国現場を社長の人脈と現場感で回してきた会社には、大きな強みがあります。地域ごとの単価感、職人の見極め、現場で起きるトラブルの勘所を知っているからです。

ただし、10人・20人・30人を動かす案件では、その強みを社長個人の経験だけに置いておくと、受注判断が難しくなります。

次に整理したいのは、協力会社の数ではなく、大型案件に耐えられる動員体制です。協力会社の社長にどう声をかけるか、何人までなら任せられるか、初回はどんな班編成にするか、現場ルールをどう事前教育するか、日々の稼働を誰が見るか。

ここまで準備できると、大型案件は「怖い話」ではなく、「条件を整えれば取りにいける話」に変わっていきます。

大型案件を受ける前に、協力会社動員の仕組みを一緒に整理する

「大きな話は来ているけれど、人をどう集め、どう管理すればよいかわからない」「協力会社を増やしたいが、品質や責任の面が不安」という段階では、まず現状の整理から始めるのが現実的です。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。大型案件に向けた協力会社開拓、動員可能人数の把握、現場ルールの整理、稼働管理の設計も、会社ごとの状況に合わせて一緒に考えることができます。

うちの場合はどう考えるべきか、何から整理すべきかわからない、という段階でも問題ありません。無理な営業はいたしませんので、まずは状況の整理先としてご活用ください。

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