前提

仕事を断るほど受注があるガラス・サッシ工事会社でも、次に見るべきは売上ではなく利益率

ある専門工事会社では、既存の取引先だけでも十分に仕事がありました。取引先は数十社あり、ホームページも「会社がありますよ」という名刺代わり。そこから新規案件を取るというより、長年の付き合いで現場が回っている状態です。

採用も極端に困っていません。若い人も入っています。社長も「別に今のままでも困ることはない」と話します。

ただ、話が案件選びに移ると、言葉の温度が変わりました。「大きい工事やから金額も張りますわね。でも、利益率ですわね」と。売上が立つ現場でも、利益が薄ければ意味がない。小さい現場でも、利益率が高ければ会社には残る。ここが出発点です。

課題

大きい現場ほど売上は立つ一方で、利益率と管理負荷が合わないことがある

建設業では、売上規模が大きい案件ほど魅力的に見えます。ビルや商業施設の工事は単価が大きく、年間の数字も作りやすいです。

一方で、社長はこう話していました。「大きいから結果利益が10とか言ったら意味ないやろし。ちっちゃくても利益率が50やったらいい」。この感覚はかなり実務的です。

案件を見るときに、売上だけで判断すると、儲かっているようで残らない状態になりやすくなります。さらに、一次請けに近づくほど管理責任も増えます。材料を持つか、工事だけか。協力会社を使うか、自社で抱えるか。ミスが出たときの負担も変わります。

「儲かるよ。でもミスしたときはとんでもないことになる」。この一言に、利益機会と損失リスクが同時に大きくなる現実が出ています。

背景

既存の商流を壊せないからこそ、新規開拓先は“ぶつからない相手”で選ぶ必要がある

この会社は、スーパーゼネコンの案件では二次請けで入ることがあり、小規模な工事店や地域の建設会社では一次に近い立場で仕事をすることもあります。

ただし、既存の一次請けを飛び越えて直接取引をすることはできません。社長もその点には強く反応していました。「もう、とんでもない」と。これは建設業の商流では自然な感覚です。

つまり、新しい取引先を増やすにしても、今の取引先とぶつからない販路でなければいけません。既存の関係を崩してまで売上を取りに行くのは、かえって損になります。

また、スーパーゼネコン案件が必ず高利益というわけでもありません。「昔やってたけど、とんでもない利益率やった」と話すように、名前の大きさと利益率は一致しません。

だからこそ、取引先選びでは、会社名の大きさより案件の中身を見る必要があります。

解決

取引先を増やす目的を、売上拡大ではなく“選択肢を増やすこと”に置く

受注に困っていない会社ほど、新規開拓の目的を間違えやすいです。仕事を増やすためではありません。選べる状態をつくるためです。

社長も「いろんな手があれば、利益率がいいところを自分で選んでいける」と話していました。ここが重要です。

整理すべき判断軸は、たとえば次のようなものです。

  • 利益率が見込めるか
  • 管理負荷が自社に合っているか
  • 材料手配まで含むのか、工事だけなのか
  • ミス時の損失を吸収できるか
  • 既存取引先の商流とぶつからないか
  • 自社の職人・協力会社で対応できるか

この順番で見ると、「大きい会社とつながりたい」という話が、より現実的になります。狙うべきは有名な会社ではなく、自社にとって利益が残る取引先です。

進め方としては、まず既存取引先を棚卸しします。売上額だけでなく、利益率、手間、トラブル時の負担、担当者との相性まで見ます。そのうえで、空いている商流を探します。

大切なのは、今の関係を壊さないことです。既存先に支えられている会社ほど、攻める前に守る線引きが必要です。

まとめ

仕事がある会社ほど、次の成長テーマは「もっと受注すること」ではない場合があります。

売上は立っている。人もいる。現場も回っている。だからこそ、次はどの仕事を選ぶかです。

大きい現場が悪いわけではありません。一次請けが正解とも限りません。二次請けでも利益が残る案件はあります。見るべきは、利益率、管理負荷、ミス時のリスク、そして既存商流との相性です。

「今は困っていない」会社こそ、選択肢を増やしておく意味があります。利益の残る取引先を選べる状態は、次の一手を楽にしてくれます。