前提

東北地方で5名弱の元請リフォーム会社が、年商1億円台半ばから抜け出せずにいる状況

東北地方の県庁所在地近郊で、住宅リフォームを中心に営む会社の話です。

社員数は役員を含めて5名弱。売上の大半は、一般のお客様から直接受けるBtoCの元請工事です。屋根・外壁まわりに強みがあり、水回りも単体ではなくセット工事として提案してきました。

売上規模は、ここ数年おおむね1億円台半ばで推移しています。今期は、前期からずれ込んだ工事もあり、数字だけ見れば前年より数千万円ほど上振れしそうな状況でした。

ただ、経営者の実感は明るいものではありません。

「数字だけ見れば増えているんです。でも、肝心の中身、利益が全然担保できていないんです」

この言葉に、住宅リフォーム会社が直面している難しさが詰まっています。

契約は取れている。売上もある。けれど、手元に利益が残らない。しかも、広告費は上がり、資材の入りは読みにくく、相見積もりもきつい。

この状態で必要なのは、単純に「もっと売る」ことではありません。まず見るべきは、どの工事で粗利が残り、どの工事で消耗しているのかです。

課題

契約件数ではなく、粗利が残る工事を選べていないこと

相談の中心にあったのは、売上不足ではありませんでした。

むしろ、契約は取れています。

「競争に対しての成約は悪くないんです。取れてはいるんです。ただ、それに合わせて中身が取れていない」

ここでいう「中身」とは、粗利です。

住宅リフォームは、契約金額だけを見ると案件が積み上がっているように見えます。けれど、実際には次のような要素で利益が削られます。

  • 資材が入らず、現場が予定通り動かない
  • チラシやポスティングなどの広告費が年々上がる
  • Web集客やポータルサイト経由で相見積もりになりやすい
  • 小口工事が増え、移動・見積・管理の手間が利益を食う
  • 単体工事ばかりになり、客単価を上げにくい
  • 売上は立っても、入金までの時間が長い

とくに印象的だったのは、資材遅延の影響です。

住宅リフォームでは、設備機器や建材が入らないと、契約済みでも現場が止まります。工事が進まなければ、請求も進みにくい。売上予定はあっても、現金化できません。

一方で、外構・エクステリアのように、比較的納期の制約が少なく着工しやすい工事は、先に回して回収につなげていました。

「やれる工事、外構・エクステリア関係を回しながら、とりあえずお金の回収をさせていただいている」

これはかなり現実的な対応です。

ただし、ここで止まると、その場しのぎになりやすいです。大事なのは、現金回収しやすい工事を優先する考え方を、会社の受注判断に組み込むことです。

背景

広告費上昇、相見積もり、資材遅延が重なり、BtoC元請の利益構造が薄くなっていること

住宅リフォームの元請は、本来は魅力のある事業です。

お客様と直接つながれる。提案の自由度がある。会社の評判も積み上がる。屋根・外壁・水回りのように、地域で信頼を取れれば継続紹介も生まれます。

ただ、近年は利益構造がかなり難しくなっています。

相談企業でも、紙の広告に長く取り組んできました。チラシ、ポスティング、Webページ、集客用ページ、ポータルサイト。やるべきことは一通りやっています。

それでも、経営者の実感はこうでした。

「チラシだ、ポスティングだっていう経費も、毎年値上がりしています。広告宣伝費が重んでいくばっかりなんです」

さらに、Web集客も簡単ではありません。

「インターネット系の集客も、毎日のようにいろんな業者さんから連絡が来る。でも、うまくいかなかったこともある」

この状態で広告費を増やし続けると、売上は作れても、粗利が残りにくくなります。

さらに相見積もりです。

リフォームのお客様は、複数社を比較します。ポータルサイトや一括見積もり経由であれば、なおさら価格競争になりやすいです。競争の中で契約を取るために値引きが入り、利益が薄くなる。

つまり、問題は「集客できない」ではありません。

集客して、見積もって、契約しても、利益が残る設計になっていないことが問題です。

もう一つ、会社としての迷いもありました。

「うちは何でも屋さんみたいな案件には、基本的に乗っかりたくないんです」

これは大事な感覚です。

小規模なリフォーム会社ほど、売上を追うと「何でも受ける」方向に流れがちです。しかし、何でも受けるほど、現場管理・協力会社手配・見積作成・お客様対応が分散します。

その結果、得意な屋根・外壁や、水回りセット提案のような勝ち筋に集中できなくなります。

売上を増やしたい局面ほど、実は受けない工事を決めることが利益改善の入り口になります。

解決

工事別の粗利と回収スピードを見える化し、屋根・外壁・水回りセットに受注を寄せていくこと

立て直しの順番は、販路を増やす前に、まず受注の中身を整理することです。

新しい案件ルートを探すこと自体は有効です。法人案件や小口修繕、アパート・マンション改修などを増やすことも選択肢になります。

ただし、利益が残らない状態のまま販路だけ増やすと、忙しさだけが増える可能性があります。

まずは、既存の受注を次の5つで分けて見ます。

  1. 工種別の粗利:屋根、外壁、水回り、外構、内装、小修繕で利益率を見る
  2. 集客経路別の粗利:紹介、OB客、チラシ、Web、ポータルサイトで粗利を見る
  3. 契約単価:単体工事か、セット工事かを見る
  4. 回収スピード:契約から入金までの期間を見る
  5. 管理負荷:見積回数、現調回数、職人手配、クレーム対応の重さを見る

ここで大事なのは、売上高だけで判断しないことです。

たとえば、300万円の工事でも、相見積もりで値引きが大きく、工期が延び、入金が遅く、管理に手間がかかれば、会社には残りにくいです。

反対に、100万円台の工事でも、得意工種で職人手配が安定し、追加提案ができ、入金が早ければ、経営には効きます。

見るべきは、粗利額と回収の早さのバランスです。

屋根・外壁は「得意工事」として単価設計を作る

相談企業は、屋根・外壁を得意としていました。これは大きな軸になります。

屋根・外壁は、診断、補修、塗装、防水、雨漏り対策など、提案の幅があります。単なる「塗って終わり」ではなく、建物を長持ちさせる提案にしやすい領域です。

ここで考えたいのは、工事メニューを単品で並べるのではなく、標準パッケージ化することです。

たとえば、屋根点検から外壁診断、必要な補修、塗装、防水、雨樋まわりまで、一定の組み合わせを作る。価格も、最低ライン・標準ライン・長持ちラインのように分ける。

そうすると、相見積もりになったときも「一式いくら」の価格勝負だけではなくなります。

お客様にも、何にお金がかかっているのかが伝わりやすくなります。

水回りは単体ではなく、セット提案で粗利を作る

相談企業では、水回りについても、単体のトイレ交換だけで売るのではなく、セット工事として提案していました。

この考え方は、利益改善に直結します。

水回りは、単体工事だと価格比較されやすいです。トイレ、洗面台、給湯器などは、商品価格が見えやすく、お客様も比較しやすいからです。

一方で、キッチン・浴室・洗面・トイレをまとめる。内装や床の補修も同時に提案する。配管や下地の確認も含めて提案する。

そうすると、単なる設備交換ではなく、暮らし全体の改善提案になります。

小規模会社にとっては、現調・見積・職人手配を一度にまとめられることも大きいです。管理コストが下がり、客単価も上がります。

資材遅延がある時期は、現金化しやすい工事を優先する

資材が入らない時期に、契約残だけを積み上げても資金繰りは楽になりません。

このときは、受注済み案件の中で、次のような工事を優先して動かす判断が必要です。

  • 資材の納期影響を受けにくい工事
  • 工期が短い工事
  • 完工後すぐ請求しやすい工事
  • 職人手配が安定している工事
  • 追加提案につながりやすい工事

相談企業が外構・エクステリアを先に回していたのは、この考え方に近いです。

大切なのは、それを場当たり的にやるのではなく、月次で「今月現金化できる工事」「来月以降にずれそうな工事」を分けることです。

売上予定表ではなく、入金予定表として現場を見る。これだけでも、経営判断はかなり変わります。

BtoCだけに頼らず、法人案件を「利益の安定装置」として考える

BtoC元請をやめる必要はありません。

むしろ、地域の一般のお客様を大事にすることは、リフォーム会社の基盤です。

ただ、BtoCが売上の9割以上になると、広告費・相見積もり・季節変動・個別対応の影響を強く受けます。

そこで考えたいのが、法人案件の比率です。

相談企業にも、すでに法人寄りの仕事はありました。介護施設の改修、不動産オーナーが保有するアパート・マンションの外装、防水、舗装などです。1件で大きな金額になる工事もありました。

つまり、まったく未経験ではありません。

「個人のお客様専用で、そこしかやらないという考えは別にないです」

この姿勢があるなら、法人案件は検討できます。

ただし、ここでも何でも取りに行くのは危険です。

見るべきは、次の3つです。

  • 自社の得意工事と合っているか
  • 粗利が残る条件で受けられるか
  • 支払い条件と現場管理負荷が合うか

たとえば、アパート・マンションの原状回復や外壁、防水、屋根まわり。介護施設や小規模店舗の修繕。ハウスメーカーや不動産会社の保有物件改修。

こうした案件は、屋根・外壁・水回り・内装の対応力を活かしやすいです。

一方で、単価が厳しすぎる下請けや、管理負荷が重すぎる案件は、売上が増えても利益が残りにくいです。

法人案件は、売上を増やすためではなく、広告依存を下げ、粗利を安定させるために組み込むのがよいです。

新しい販路に乗る前に、判断基準を決めておく

相談の中では、公共系・小口修繕系の案件ルートにも関心がありました。

「何十件も打ってみて、やってみて、というスタイルらしいんです。でも、やり方も考え方もまるっきり違うので、戸惑いがあります」

新しい販路は、可能性があります。

ただ、入る前に基準を決めておくことが大事です。

たとえば、次のような基準です。

  • 1件あたりの最低粗利額
  • 現調・見積にかけられる上限時間
  • 支払いサイトの許容範囲
  • 自社で対応する工種と、外注前提の工種
  • 継続受注につながる発注者かどうか
  • 自社の実績として次に使える案件かどうか

特に小規模会社では、社長や限られたメンバーの時間が最大の資源です。

粗利が薄い案件を大量に追うと、見積だけで疲弊します。逆に、粗利が残る工種と発注者を絞れば、少人数でも利益体質に近づけます。

新しい販路を検討するときほど、売上ではなく粗利と時間で見ることが大切です。

まとめ

住宅リフォームで売上はあるのに利益が残らないとき、最初に考えるべきことは「もっと集客する」ではありません。

まず、いま取れている工事を分解します。

どの工種が残っているのか。どの集客経路が利益を削っているのか。どの工事が現金化しやすいのか。どの案件が見積や管理の手間に見合っていないのか。

そのうえで、屋根・外壁・水回りセットのような得意領域に受注を寄せていく。単体工事ではなく、セット提案で単価を設計する。資材遅延がある時期は、回収しやすい工事を優先する。

さらに、BtoC元請を大事にしながらも、法人案件を一定比率で組み込む。アパート・マンション、介護施設、小規模店舗、不動産オーナーなど、自社の得意工事が活きる発注者を選ぶ。

利益体質を作り直すポイントは、売上を増やす前に、粗利が残る受注の型を決めることです。

契約が取れている会社ほど、立て直しの余地はあります。すでにお客様から選ばれているからです。

あとは、その力を「忙しいのに残らない」方向ではなく、得意工事で残る会社へ向け直していくことです。

うちのリフォーム事業はどこから利益を見直すべきか整理したい方へ

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、販路拡大、原価管理、組織、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。

住宅リフォームで「契約は取れているのに利益が残らない」「広告費を増やすべきか、法人案件を増やすべきか迷っている」「屋根・外壁・水回りの強みをどう単価設計に変えるべきかわからない」といった段階でも、まずは現状の整理から一緒に考えられます。

無理な営業はいたしません。うちの場合は何から見直すべきか、という段階でも大丈夫です。

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