前提

施工管理が売上の9割を占める設備工事会社が、設計の比率を高めたいという現在地

滋賀県内を中心に関西圏で給排水・衛生・空調まわりを手がける、10名弱規模の設備工事会社の話です。民間工事が中心で、地場の建築会社や中堅ゼネコンとの取引が主な売上になっています。

現状は、売上の約9割が施工管理で、設計やメンテナンスは一部にとどまっている状態です。自社で職人を大きく抱えるというより、協力会社の職人と組みながら現場を回してきました。

ただ、材料費や人件費の上昇、職人の高齢化、取引先ごとの発注量の偏りが重なり、施工管理だけに寄せた事業構成には限界も見え始めています。社長の言葉も率直でした。

「なるべく施工の割合を減らしていきつつ、設計を増やしていきたいんです」

設計を増やしたい理由もはっきりしています。設備設計は材料を大きく抱えずに済み、外部環境の影響を受けにくく、利益率を高めやすい仕事だからです。

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課題

施工前提の設計依頼だけでは、設計売上は大きく増えにくい

いま設計の仕事がまったくないわけではありません。むしろ、施工会社としての経験を活かして、マンション、規模の大きい注文住宅、改修工事、工場などの設備設計にも対応しています。

ただし問題は、依頼の入り口です。

現状の設計依頼は、建築会社から「この工事をやる前提で、先に設計もお願いしたい」という形が多くなっています。つまり、設計単体の仕事ではなく、施工につながる案件の一部として設計が発生しているということです。

この形だと、設計の売上は施工案件の量に連動します。施工管理の比率を下げたいのに、設計の入口が施工ありきのままだと、事業構成はなかなか変わりません。

社長もそこをよく分かっていました。

「それやと、自分のところが工事をやる図面しか描かないので、少ないですよね」

施工管理から設備設計へ比重を移すには、既存の建築会社経由だけではなく、設計事務所から直接、設備設計の相談が来る流れをつくる必要があります。

背景

地域規制と納まりを理解した設備図面に、施工会社ならではの強みがある

設備設計を増やすうえで、やみくもに設計事務所へ営業すればよいわけではありません。特に給排水や消防が絡む設備設計では、地域性が大きく影響します。

水道や消防は、自治体ごとの考え方や運用の違いが出やすい領域です。社長も「地域の事情が分かっていないと描けないことがある」と話していました。だからこそ、対象は全国の大手設計事務所ではなく、地元の規制や協議の進め方を理解している、関西圏の設計事務所が中心になります。

もう一つ大事なのが、設計事務所側の困りごとです。

設備設計専業の会社や建築設計中心の事務所では、図面上は成立していても、実際に施工図へ落とすと「配管が収まらない」「勾配が取れない」「メンテナンススペースがない」といった問題が起きることがあります。

社長の言葉には、現場を知る会社ならではの実感がありました。

「実際に施工図にする場合に、全然収まってないことが多いんです。むちゃくちゃ多いです」

一方、この会社は施工会社として、現場で納まらない図面に対して代替案を出してきました。ある現場で設備設計者と打ち合わせをし、収まりの悪い部分を「こう変更すれば納まります」と提案し、結果としてきれいに収める。その経験から、次に「設計だけでもお願いしたい」と声がかかることもあります。

つまり、この会社の強みは単にCADで図面が描けることではありません。配管ルート、勾配、点検口、メンテナンススペース、施工手順まで考えた“納まる設備図面”を描けることです。

解決

設計事務所への営業は、案件規模・地域規制・納まり提案の3点から組み立てる

施工管理の依存を減らして設備設計を増やすなら、最初にやるべきことは営業先リストを増やすことではありません。どの設計事務所に、何を強みとして、どの入口商品で接点をつくるかを決めることです。

まず、ターゲットは案件規模で絞ります。この会社の場合、超大型案件ではなく、工事金額でいえばおおむね1億〜2億円規模の建物、規模の大きい注文住宅、マンション、工場、改修工事が現実的です。小規模すぎる戸建て中心の事務所や、意匠性だけを強く打ち出す事務所よりも、設備の実務で困りやすい案件を持つ事務所のほうが相性はよくなります。

次に、地域規制への理解を営業材料にします。給排水・消防は、自治体ごとの協議や運用を踏まえないと手戻りが出ます。だから、営業時には「設備設計できます」では弱く、“この地域の水道・消防の事情を踏まえて、施工まで見据えた図面にできます”と伝えるほうが刺さりやすいです。

さらに、納まり提案を見える化します。過去の現場で、設計図から施工図に落とす際に問題が出た箇所、そこに対してどんな変更案を出したのか、結果として何が改善したのかを整理します。守秘に配慮しながら、以下のような営業資料に落とし込むと使いやすくなります。

  • 配管ルートを変更して納まりを改善した事例
  • 勾配や梁との干渉を事前に回避した事例
  • メンテナンススペースを確保した設備図面の考え方
  • 古い配管ルートを確認し、現状図としてCAD化した対応範囲
  • 水道・消防の地域事情を踏まえた設計上の注意点

ここで大切なのは、施工会社としての実績を「現場を分かっています」で終わらせないことです。設計事務所が外注したくなる言葉に変換することです。

たとえば、営業の打ち出し方は次のように整理できます。

「施工会社として現場を見てきたので、描くだけの設備図面ではなく、施工図に落としたときに収まる設備設計を意識しています」

この一文は、設計事務所側の悩みに直結します。設備図面を外注したあと、現場で手戻りが起きると、設計事務所も建築会社も調整に追われます。そこを減らせる相手として認識されれば、単なる外注先ではなく、相談先になりやすくなります。

進め方としては、いきなり大きな設計一式を狙うより、入口を分けるのが現実的です。

最初は、既存図面の設備チェック、改修前の現地確認と図面化、給排水・消防まわりの事前相談、施工性を踏まえた設備計画のレビューなど、設計事務所が頼みやすい小さな入口を用意します。そこから相性が合えば、設備設計一式へ広げていく流れです。

同時に、受ける案件の線引きも必要です。施工管理を減らしたいなら、設計依頼が来たときに毎回施工までセットで受けていては、結局もとの構成に戻ります。

そのため、社内では次の判断軸を持っておくとよいです。

  • 設計単体で受ける案件か、施工前提で受ける案件か
  • 地域規制や協議の難易度に対応できる案件か
  • 現場確認や既存図面化まで含めて利益が出る案件か
  • 今後も継続的に設計依頼が見込める事務所か
  • 施工管理の負荷を増やさずに対応できるか

設備設計を増やす営業は、受注量を増やす営業ではなく、事業構成を変える営業です。だからこそ、どの仕事を増やし、どの仕事は増やしすぎないかまで決めておくことが大切です。

まとめ

施工管理中心の設備工事会社が、利益率の高い設備設計を増やすには、単に「設計もできます」と伝えるだけでは足りません。

大事なのは、施工前提の設計依頼から、設計事務所との直接取引へ入口を変えることです。そのためには、地域規制を理解していること、施工まで見据えて納まりを考えられること、設計事務所が頼みやすい小さな相談メニューを用意することが必要になります。

施工会社として現場で培ってきた経験は、設計事務所にとって大きな価値になります。特に、図面上は成立していても現場で収まらないという悩みは、多くの案件で起こります。

“現場で困らない設備図面を描ける会社”として立ち位置をつくれれば、施工管理に偏った売上構成から少しずつ抜け出す道筋が見えてきます。

うちの設備設計は、どの設計事務所に提案すべきかを整理したい方へ

施工管理の比率を下げたい、設備設計を増やしたい、ただどの設計事務所にどう提案すべきか分からない。そうした段階では、まず自社の強みと営業先の整理から始めるのが現実的です。

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