前提

東海地方の塗装・防水会社が、職人出しから“丸ごと任される側”へ移ろうとしている現在地

東海地方で塗装・防水、大規模修繕の一部まで手がける十数名規模の専門工事会社では、既存取引を大切にしながら、より利益を残しやすい仕事の受け方を模索していました。

この会社は、単に現場へ職人を出すだけではなく、足場、下地補修、塗装、防水、現場管理まで一定範囲をまとめて担える体制を持っています。公共工事そのものを大きく伸ばしたいというより、「公共工事にも対応できる体制がある会社」と見られることで、民間やゼネコン向けにも信用を示しやすくしたいという考え方です。

社長の言葉を借りると、「職人さんさえいればいい、というお客さんもいる。でも、計画から見積もりまで任せてくれる会社さんのほうが、やっぱり単価はいい」という感覚です。

ここには、専門工事会社にとって大事な分岐があります。何を施工できるかだけでなく、どこまで任せられる会社かによって、商流も利益も変わるということです。

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課題

職人だけを出す商流では単価が伸びにくく、任される範囲で利益が変わる構造

専門工事会社が利益を確保しにくくなる典型は、発注側が営業・見積・管理をすべて握り、こちらは職人だけを出す形になることです。

もちろん、仕事が切れにくい、現場数が安定するという良さはあります。ただ、発注側から見ると「施工人員の提供」に近くなるため、比較される軸はどうしても人工単価や施工単価に寄りやすくなります。

一方で、利益を残しやすい仕事は少し違います。たとえば、発注側が専門外の工事を抱えていて、次のような相談を受けるケースです。

  • 大規模修繕の全体像を見てほしい
  • 足場から防水までまとめて考えてほしい
  • 見積の組み立て方から相談したい
  • 資格者や保険、建設業許可の面も含めて任せたい
  • 元請けや管理会社の担当者が細かく見なくても進むようにしてほしい

この場合、専門工事会社は単なる施工班ではなく、発注側の不足機能を補う会社になります。ここに単価の差が出ます。

相談企業でも、「何もしなくても勝手にやってくれる業者を使いたい、という会社さんがある」という話がありました。言葉は少し強いですが、発注側の本音としては自然です。ゼネコン、管理会社、地場工務店、不動産会社の担当者も、人手不足や管理負荷を抱えています。だからこそ、施工だけでなく、段取り・判断・管理まで担える会社に仕事が寄りやすいのです。

背景

大規模修繕やリニューアルでは、発注者側も“任せられる先”を探している現実

大規模修繕やリニューアル工事では、発注者が求めるものが単純な施工力だけではなくなっています。

背景には、既存建物の修繕需要があります。マンション、ビル、工場、公共インフラ、収益物件など、建て替えではなく直して使う案件が増えています。一方で、ゼネコンや管理会社の現場担当者は、すべての専門工種を細かく差配できるほど余裕があるわけではありません。

そのため、専門工事会社にとっては追い風があります。ただし、どの商流に入るかで成果は変わります。

たとえば、相談企業では大手ゼネコン系のリニューアル部門と直接つながりがありました。ただし、そこに大々的に営業を広げることには慎重でした。理由は明確です。既存取引先とバッティングすると、不義理になってしまう可能性があるからです。

この感覚は、中小の専門工事会社ほど重要です。新規開拓で売上を増やすことだけを見れば、ゼネコンや大手管理会社へ直接行く選択肢はあります。しかし、すでに紹介元や一次下請けとして長く付き合っている会社がある場合、急に同じ発注元へ表立って営業すると、既存の信頼を傷つけることがあります。

もう一つの背景は、会社の対応キャパです。相談企業でも、「向こうから来てもらう分には全然いいが、あまり広げると対応できる・できないがある」という話がありました。これは堅実な判断です。

“丸ごと任される会社”になるほど、案件単価は上がりやすい一方で、管理責任・資金繰り・資格要件・顧客折衝の負荷も増えるためです。特に管理組合からの直接受注や大きな金額の工事では、特定建設業許可の要否、口座開設、保証、住民対応など、施工以外の難しさも出てきます。

だからこそ、狙うべきは単純な元請け化ではありません。自社が無理なく責任を持てる範囲で、任される範囲を広げることです。

解決

狙う相手を“会社名”ではなく、任される余地のある商流で見極める営業設計

専門工事会社が利益を残しながら商流を上げるには、営業先を有名企業名だけで選ばないことが大切です。見るべきは、その相手が自社に何を任せたいのかです。

判断軸は大きく4つあります。

1つ目は、相手側の管理体制です。発注側に施工管理機能が強くあり、「職人だけ出してくれればよい」という体制なら、単価は厳しくなりやすいです。一方、専門工種の判断や見積、現場段取りを任せたい相手なら、自社の価値を出しやすくなります。

2つ目は、既存取引先とのバッティングです。既存の一次下請けや紹介元が強く入っている発注元に、正面から営業するのは慎重に進めるべきです。接点を増やす場合も、紹介、別部署、別エリア、リニューアル部門、管理会社経由など、角が立ちにくい入り方を考える必要があります。

3つ目は、自社の許可・資格・保険・管理体制で受けきれる案件かどうかです。公共工事に対応できる水準の体制、資格者、保険、書類対応があると、ゼネコンや管理会社から見た安心材料になります。「施工できます」ではなく、「会社として任せても大丈夫です」と言える材料を揃えることが、商流を上げる土台になります。

4つ目は、案件の出口です。大規模修繕でも、管理組合から直接受けるのか、ゼネコンの下で受けるのか、ビル管理会社経由で受けるのか、収益物件を扱う不動産会社から相談を受けるのかで、求められる対応は変わります。

相談企業のような塗装・防水会社であれば、次のような営業先が現実的な候補になります。

  • リニューアル工事を増やしたいゼネコン、準大手・地場ゼネコン
  • マンションやビルの修繕を抱える管理会社、ビルメンテナンス会社
  • 収益物件やビル売買を扱う地場不動産会社
  • 専門外の修繕相談を受けやすい工務店、設計事務所、他工種の協力会社
  • 顧客は持っているが大きな現場を自社だけでは受けにくい一人親方・協力業者

特に面白いのは、最後の「顧客を持っている職人・協力業者」です。相談企業でも、「お客様を求めるより、お客様を持っている営業マンや職人さんを求める方が近い」という話がありました。

一人親方や小規模な専門業者の中には、技術も人脈もあるけれど、会社を大きくしたいわけではない人がいます。大きな案件を紹介されても、許可、資金、書類、管理が面倒で断ってしまうことがあります。そこに、専門工事会社が会社名・管理体制・事務処理・信用を提供できれば、双方にメリットが出ます。

この形は、無理に社員数を増やすより現実的な場合があります。自社で抱える人員を増やすだけでなく、外部の人脈と顧客接点を活かして“受け皿”になるという発想です。

進め方としては、まず既存取引先を次の3分類に分けると整理しやすくなります。

  • 守るべき取引先:バッティングを避けるべき重要先
  • 深めるべき取引先:もっと任せてもらえる余地がある先
  • 広げるべき接点:ゼネコン、管理会社、不動産会社、協力業者など新しい入口

そのうえで、営業先ごとに「自社は何を任されたいのか」を決めます。職人手配なのか、見積協力なのか、現場管理込みなのか、足場から防水までの一括対応なのか。ここが曖昧なまま営業すると、結局は安い施工会社として見られやすくなります。

“丸ごと任せたい”と言われる会社になるには、任されたい範囲を自社から定義しておくことが必要です。

まとめ

専門工事会社にとって、単価や利益は施工力だけで決まるわけではありません。どの商流に入り、どこまで任される会社として見られるかで大きく変わります。

職人を出すだけの仕事は、安定する一方で価格競争に巻き込まれやすいです。一方、計画、見積、施工管理、資格者、保険、書類、協力業者の差配まで担える会社は、発注側の負担を減らせるため、利益を確保しやすくなります。

ただし、やみくもに元請け化やゼネコン直営業を進めればよいわけではありません。既存取引先との関係、対応キャパ、許可や資格、顧客折衝の負担を見ながら、無理のない商流を選ぶことが大切です。

狙うべきは、会社を大きく見せることではなく、発注者が安心して任せられる範囲を少しずつ広げることです。そこに、専門工事会社の次の利益づくりがあります。

自社に合う商流と営業先を整理したいときに

「ゼネコンに直接行くべきか」「管理会社や不動産会社のほうが合うのか」「既存取引先とのバッティングをどう避けるか」は、会社ごとに答えが変わります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。販路拡大や元請け開拓についても、いきなり営業先リストを増やすのではなく、既存商流、強み、資格・許可、対応キャパを踏まえて、どこから動くべきかを一緒に整理します。

「うちの場合は、どの発注者と接点を持つべきか」「何から整理すべきかわからない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、まずは状況整理の場としてご活用ください。

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