前提

全国600店超の設備対応を8名で担い、売上の大半が一社に集中する電気工事会社

千葉県にある8名規模の電気工事会社では、全国展開する店舗チェーンの設備工事と保守を主力にしています。現場部門は社長を含む5名ほど。各地の協力会社と連携しながら、全国600店を超える店舗に対応してきました。

この仕事は、機器の選定や施工方法の整備といった立ち上げ段階から関わってきたものです。過去には複数の工事会社が参入していましたが、施工後の対応やトラブルへの向き合い方によって徐々に撤退。最後まで責任を持って対応してきた結果、現在は売上の大半を占める主力事業になっています。

「対応してきたから今がある。対応しなかった会社がいなくなっただけです」

特定取引先への依存には注意が必要ですが、この会社にとって主力取引は、単なる一社依存ではなく、長年の対応力によって築いた競争優位でもあります。 そのため、依存率だけを見て、すぐ別事業へ人を移せばよいとは限りません。

一方で、産業用蓄電池という次の機会も見えています。太陽光設備の施工・メンテナンス経験があり、蓄電池を扱う問屋との接点もあります。不動産関係者や工務店からは、雑草が生えたままの遊休地などについて「土地活用の相談に乗れないか」と声がかかっています。

既存技術と外部からの引き合いがつながり始めているものの、現時点では情報収集の段階です。 売上は年商1億円前後で、太陽光のメンテナンス収入は数%にとどまっています。

1週間で 14件の相談 がありました

  • 7月27日総合土木千葉県利益率向上の相談
  • 7月26日塗装工事会社神奈川県案件獲得の相談
  • 7月26日工務店兵庫県案件獲得の相談
  • 7月25日解体工事会社東京都業務効率化システムの相談
  • 7月25日総合建築茨城県高卒採用の相談
  • 7月25日内装工事会社東京都利益率向上の相談
  • 7月24日造園会社岐阜県案件獲得の相談
  • 7月24日空調設備工事会社愛知県案件獲得の相談
  • 7月24日防水工事会社兵庫県高卒採用の相談
  • 7月24日塗装工事会社愛知県案件獲得の相談
  • 7月23日電気設備工事会社愛知県高卒採用の相談
  • 7月23日工務店埼玉県人材育成の相談
  • 7月23日防水工事会社和歌山県人材育成の相談
  • 7月23日配管工事会社愛知県業務効率化システムの相談
  • 7月20日外構工事会社山口県協力会社探しの相談
  • 7月20日電気設備工事会社群馬県高卒採用の相談
  • 7月20日総合建築千葉県利益率向上の相談
  • 7月19日解体工事会社栃木県案件獲得の相談
  • 7月18日空調設備工事会社福井県高卒採用の相談
  • 7月18日リフォーム会社大阪府業務効率化システムの相談
  • 7月18日内装工事会社東京都案件獲得の相談
  • 7月18日リフォーム会社千葉県人材育成の相談
  • 7月17日塗装工事会社栃木県協力会社探しの相談
  • 7月17日リフォーム会社岩手県人材確保の相談
  • 7月17日総合土木山形県案件獲得の相談
  • 7月17日電気設備工事会社愛知県利益率向上の相談
  • 7月16日外構工事会社東京都業務効率化システムの相談
  • 7月16日塗装工事会社大阪府人材育成の相談
  • 7月16日内装工事会社群馬県案件獲得の相談
  • 7月16日総合建築岐阜県原価管理の相談
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課題

主力を守るほど次の柱に人を回せず、急いで広げるほど品質が薄まるジレンマ

新規事業の着手時期を難しくしているのは、案件の有無よりも社内の余力です。

社長は忙しい時期になると現場に入ります。今後は現場を任せ、経営や新しい事業に時間を使いたいと考えていますが、現状では新人教育も社長が直接見ることが多い状態です。

主力事業を担う社員は、図面作成、設計、発注、現場対応、現場管理まで一通り担当しています。対応する工種や案件数が増えると、机上で行う図面・設計業務の負担が膨らみ、残業時間にも影響します。

「手を広げたいというより、この仕事なら任せられるという人が育ったら、その人に担当を持たせたいんです」

この言葉からも、売上を先に増やしたいのではなく、任せられる人と体制ができてから広げたい意向が分かります。

新規事業に必要なのは、空いている社員ではなく、主力事業を崩さずに新しい仕事を管理できる人と時間です。 今の人数のまま蓄電池まで本格化すれば、主力取引の品質が落ちるか、社員の負担が増える可能性があります。

とはいえ、社内体制が完全に整うまで何もしなければ、すでに来ている土地活用の相談や問屋との接点を生かせません。ここに、既存事業への集中と取引先依存リスクの間で起きるジレンマがあります。

背景

図面・設計から現場管理まで一人で担う体制と、社長に集中する教育負担

新規事業を急げない大きな背景は、仕事が属人的だからではなく、一人が担う業務範囲が広すぎることです。

この会社では、現場作業だけを増員しても、すぐに社長や既存社員の負担が減るとは限りません。図面、設計、発注、管理まで任せられるようになるには教育期間が必要です。未経験者でも1年ほどで独り立ちできる見込みはありますが、その1年間は社長や先輩社員の教育時間が増えます。

現在は3名ほど増員したい意向があり、採用活動も始めています。ただし、採用できた時点が新規事業の開始時期ではありません。主力事業を任せられる状態まで育ち、社長の現場時間が実際に減って初めて、新規事業へ継続的に時間を使えるようになります。

また、蓄電池事業には既存事業との親和性があります。

  • 太陽光設備の施工・メンテナンス経験がある
  • 電気設備や省エネ提案に関する知見がある
  • 蓄電池を扱う問屋との接点がある
  • 遊休地活用について外部から相談が来ている
  • 太陽光関連の制度変更についても問い合わせがある

ゼロから始める異業種ではありません。一方で、相談があることと、継続的に受注できることは別です。相談内容、導入主体、予算、実施時期が見えていなければ、引き合いの確度はまだ判断できません。

「技術的にできそう」と「事業として収益化できる」の間を埋める準備が、着手前に必要です。

解決

新規事業を「準備」「試行」「本格化」に分け、五つの条件で進める段階設計

この会社に合う進め方は、新規事業を始めるか、始めないかの二択にしないことです。今から準備を始め、主力事業が社長不在でも回り始めた段階で試行し、収益化の見通しが立ってから本格化する形が現実的です。

着手時期は、次の五つの条件で判断できます。

1.主力事業を任せられる人員がいるか

人数だけでなく、誰がどこまで任せられるかを確認します。現場作業だけでなく、図面、発注、協力会社との調整、現場管理まで含めて見ることが大切です。

新入社員を採用した場合は、独り立ちまでの約1年を前提に置きます。社長が教育と新規事業の両方を抱えないよう、どの業務を既存社員へ引き継ぐかも先に決めておきます。

2.社長が継続的に時間を確保できるか

一時的に現場が空いたことは、着手の合図にはなりません。毎週または毎月、情報収集や案件検討に使える時間が確保できるかを見ます。

「忙しくない日がある」ではなく、「新規事業に使う時間を予定として確保できる」ことが判断基準です。

3.既存技術との親和性をどこまで生かせるか

蓄電池は、太陽光や電気設備の経験を使える点で有力です。ただし、既存社員がそのまま対応できる範囲と、新たに学ぶ必要がある範囲は分けて整理します。

既存技術を使えるほど教育負担は軽くなります。反対に、設計や制度確認など机上業務が増えるなら、現場人員だけでなく管理側の負担も見なければなりません。

4.引き合いが具体的な案件に近づいているか

「相談が多い」という感触だけでは、本格投資の根拠としては弱くなります。まずは現在来ている遊休地活用の相談を整理します。

  • 誰が導入を検討しているのか
  • どの土地・施設が対象なのか
  • 何を期待して相談しているのか
  • 実施時期は決まっているのか
  • 自社が担う範囲はどこまでか

この情報がそろえば、単なる情報提供で終わる相談と、受注につながる可能性がある相談を分けやすくなります。

5.収益化までの期間を許容できるか

新規事業は、問い合わせが来てすぐ売上になるとは限りません。相談から提案、契約、施工、売上計上までにどれくらいかかるかを確認します。

主力事業を回しながら準備費用と人件費を負担できる期間なのか。いつまでに最初の案件を形にするのか。見込みより長引いた場合に、どの段階で見直すのか。ここまで決めておくと、新規事業が際限なく社長の時間を使うことを防げます。

進め方としては、次の三段階が考えられます。

  1. 準備期:主力事業に集中しながら、人材採用、教育、業務分担、蓄電池関連の情報収集を進める
  2. 試行期:既存のつながりから来ている相談を絞り、小さな範囲で案件化の可能性を確かめる
  3. 本格化:主力事業の品質を維持でき、担当者と収益化の見通しが立った段階で事業として広げる

この会社の場合、向こう1〜2年は人材と管理体制の整備を優先し、3年目を試行の目安に置く考え方が合っています。ただし、準備まで3年後に延ばす必要はありません。

新規事業の本格化は待っても、情報収集、相談内容の整理、必要技術の確認は今から始められます。 これなら主力取引への責任を保ちながら、次の柱を育てる機会も失いません。

まとめ

特定取引先への依存が大きい会社では、依存率だけを理由に新規事業を急ぐ必要はありません。長年の対応によって築いた主力取引は、会社の強みでもあるからです。

一方で、主力事業だけに集中し続け、次の準備を何もしない状態も避けたいところです。

判断の軸は、人員、管理体制、既存技術との親和性、引き合いの確度、収益化までの期間の五つです。 主力事業が社長不在でも回り始め、社員の負担を増やさず、具体的な案件と収益化の道筋が見えたときが、本格着手のタイミングになります。

それまでは、採用と教育、業務分担を進めながら、すでに来ている相談を整理する準備期間です。既存事業か新規事業かを選ぶのではなく、既存事業を強くすることを新規事業の土台にする。 この順番なら、無理のない形で次の柱をつくれます。

新規事業へ進む前に、自社の着手条件を整理したい方へ

「うちの場合は何年後がよいのか」「人を採るのが先か、案件を確かめるのが先か」と迷う場合は、現在の人員配置、社長の現場負担、既存取引、引き合いの内容を並べるところから始められます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。新規事業を勧めることを前提にせず、主力事業へ集中すべき時期なのか、準備を始められる段階なのかを一緒に整理します。

まだ何から考えるべきか決まっていない段階でも差し支えありません。無理にサービスを勧めることはありませんので、次の整理先の一つとしてご活用ください。

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