次々に入る案件を社長が電話で受け、その場で判断して管理者へ振り分けている専門工事会社
創業から数年のある専門工事会社では、取引先から入る仕事の連絡を、ほぼすべて社長が電話で受けていました。立ち上げ当初から「声をかけてもらえれば、何でもやります」という姿勢で信用を積み重ねてきたため、社長が窓口になること自体は自然な流れでした。
案件が少なかった時期は、社長が依頼内容を覚え、その場で施工方法を判断し、対応できそうな仕事を管理者へ口頭で振る形でも回っていました。しかし、信用が増してA案件、B案件、C案件と連絡が重なるようになると、同じ進め方では負担が追いつかなくなります。
社長は当時の状況を、次のように話していました。
「次から次へと案件が来るので、それをさばきながら、方法はこうすると自分で判断しています。何でもやっているので、もう回らなくなってきました」
一方、管理者は現場作業と管理業務を行き来しながら、社長から渡された一部の作業に対応していました。
「社長のところに連絡が行って、私に降りてきて動くことが多いです。全体を把握できていないまま、一部だけ振られて対応しています」
この会社で起きていたのは、単なる連絡不足ではありません。案件の受付、情報の保管、優先順位付け、施工方法の判断が、すべて社長個人に集まっている状態でした。
1週間で 20件の相談 がありました
- 9月8日内装工事会社茨城県業務効率化システムの相談
- 9月8日工務店秋田県人材確保の相談
- 9月8日工務店広島県人材確保の相談
- 9月8日内装工事会社和歌山県高卒採用の相談
- 9月7日塗装工事会社三重県利益率向上の相談
- 9月7日総合建築長崎県案件獲得の相談
- 9月7日防水工事会社三重県業務効率化システムの相談
- 9月6日内装工事会社東京都協力会社探しの相談
- 9月5日設備保全会社東京都高卒採用の相談
- 9月5日総合土木北海道原価管理の相談
- 9月5日内装工事会社千葉県案件獲得の相談
- 9月5日設備保全会社茨城県協力会社探しの相談
- 9月4日塗装工事会社神奈川県人材確保の相談
- 9月4日電気設備工事会社山梨県原価管理の相談
- 9月4日設備保全会社栃木県利益率向上の相談
- 9月4日電気設備工事会社岐阜県利益率向上の相談
- 9月3日外構工事会社群馬県案件獲得の相談
- 9月3日総合土木広島県協力会社探しの相談
- 9月3日外構工事会社新潟県人材確保の相談
- 9月3日電気設備工事会社福島県協力会社探しの相談
- 9月2日内装工事会社愛知県利益率向上の相談
- 9月2日プラント工事会社群馬県人材確保の相談
- 8月31日内装工事会社茨城県利益率向上の相談
- 8月31日総合建築大分県業務効率化システムの相談
- 8月31日空調設備工事会社埼玉県高卒採用の相談
- 8月31日総合土木広島県業務効率化システムの相談
- 8月30日内装工事会社東京都高卒採用の相談
- 8月30日工務店福岡県利益率向上の相談
- 8月30日電気設備工事会社兵庫県高卒採用の相談
- 8月29日内装工事会社神奈川県案件獲得の相談
口頭で一部の作業だけを渡しても、案件全体の情報と判断は社長から離れない状態
案件情報の属人化が進むと、管理者に仕事を振っているつもりでも、社長の負担はなかなか減りません。管理者へ渡っているのが「この現場をお願い」「先方へ連絡しておいて」といった個別作業だけで、案件全体の情報が共有されていないためです。
管理者が把握できるのは、自分に割り当てられた作業に限られます。依頼の経緯、取引先との約束、ほかの案件との優先順位、施工上の注意点などは、社長の頭の中に残ります。状況が変わったときには、再び社長へ確認しなければなりません。
この構造では、次のようなことが起こりやすくなります。
- 社長しか案件の全体像を説明できない
- 管理者が次に何を進めるべきか自分で判断できない
- 口頭で伝えた内容が、ほかの案件に埋もれる
- 対応状況を確認するために、社長と管理者の会話が増える
- 社長が施工方法まで判断し続けるため、窓口を分けても負担が残る
「誰が作業するか」だけを分担しても、「誰が案件を管理し、判断するか」が変わらなければ、権限移譲にはなりません。
社長が忙しいから、すぐに新しい担当者を置けば解決するとも限りません。情報が社長の頭の中にあるまま人だけを増やすと、新しい担当者も社長へ確認する場面が増え、かえって連絡経路が複雑になる可能性があります。
創業期に信用をつくった「何でも受ける」動き方が、案件増加後も変わっていないこと
この状態の背景には、社長の抱え込みというより、会社を軌道に乗せるために有効だった動き方が残っていることがあります。
相談企業の社長は、会社を大きくしたいから無条件に案件を増やしていたわけではありません。立ち上げから1、2年の苦しい時期を繰り返さないため、まず案件を確保し、取引先からの信用を得ようとしていました。
「目の前では、会社を大きくするというより信用を得たいんです。苦しかった頃に戻らないため、とにかく案件を抱えることを優先してきました」
創業期には、この動き方が会社を支えます。社長自身が電話を受け、その場で判断し、できる仕事を次々と引き受けることで、対応の速さと柔軟性を示せるからです。
ただし、案件が増えた後も同じ形を続けると、信用をつくった社長の即応力が、そのまま会社の処理能力の上限になります。
加えて、電話はその場で話が進むため、記録を後回しにしやすい手段です。社長には依頼の背景まで見えていても、管理者には「何をするか」しか伝わらないことがあります。管理者側も全案件を見渡せないため、社長の判断を引き取るところまで進めません。
社長は将来的に、若手や管理者が自分たちなりの仕事の進め方をつくることを望んでいました。しかし、任せる側に情報が渡っていなければ、自分で優先順位を決めたり、対応方法を考えたりする土台がありません。
権限を渡す前に、判断に必要な情報を渡せる状態をつくる必要があります。ここを飛ばして「もっと主体的に動いてほしい」と求めても、管理者にとっては判断材料が足りないままです。
受付項目を絞って案件を見える化し、管理者へ渡す判断範囲を段階的に広げる進め方
最初に取り組みたいのは、高機能なシステムの導入ではなく、電話を受けた直後に残す情報と、その後に誰が判断するかを決めることです。
1.現在の窓口を変える前に、案件の入口を一本の一覧につなげる
取引先との関係上、すぐに電話窓口を社長から変更できない会社もあります。その場合、まずは社長が電話を受ける形を残したまま、受けた案件を一つの共有先へ集めます。
共有表でも、普段使っている連絡ツールでも構いません。重要なのはツールの種類ではなく、社長と管理者が同じ案件一覧を見られることです。
電話、口頭、個人のメモと入口が分散すると、一覧にない案件が生まれます。「正式に受けるか迷っている相談」も含め、仕事につながる連絡は一度同じ場所へ置く形にします。
2.記録項目は、入力を続けられる最小限に絞る
案件数が多い会社で細かな入力を求めると、記録そのものが社長の新しい負担になります。最初から詳細な工事台帳を完成させようとせず、管理者が次の行動を起こせる項目に絞るのが現実的です。
最低限そろえたいのは、次の項目です。
- 受付日時
- 取引先または依頼者
- 現場名・場所
- 依頼内容
- 希望日・回答期限
- 次に対応する人
- 社長の判断が必要か
- 未対応・確認中・手配済みなどの状況
入力時点で内容が決まっていなければ、空欄を無理に埋める必要はありません。「現場確認が必要」「日程未定」と残せば、管理者が次に確認すべきことが分かります。
記録の目的は、きれいなデータをつくることではなく、案件を社長の記憶から会社の共有情報へ移すことです。
3.案件の優先順位を、社長の感覚だけに置かない
案件一覧をつくっても、管理者がどれから着手するか分からなければ、判断は社長に戻ります。そこで、優先順位を決める軸も共有します。
この会社のように次々と依頼が入る場合は、少なくとも次の観点を確認できる形が必要です。
- 取引先へ回答を約束した期限
- 現場対応が必要な日程と緊急性
- 必要な人員や技術に対応できるか
- 既存案件との日程の重なり
- 社長でなければ判断できない事項があるか
優先度を細かく点数化する必要はありません。「今日判断」「今週調整」「保留」のように、管理者が並べ替えられる程度から始めれば十分です。
4.権限移譲は、役職ではなく判断内容ごとに区切る
「管理者に任せる」とだけ決めても、どこまで進めてよいかが曖昧だと、確認は減りません。任せる範囲は、案件や判断の種類ごとに区切ります。
たとえば、次の3段階に分けると整理しやすくなります。
- 管理者が自分で決めて進めること
- 方針案を管理者がつくり、社長が確認すること
- 社長が直接判断すること
日程確認、現場への連絡、既に対応実績のある作業の手配などは、比較的移しやすい領域です。一方で、新しい施工方法、対応経験のない依頼、重要な取引先との約束などは、当面社長判断として残す選択もあります。
すべてを一度に手放すのではなく、繰り返し発生し、判断基準を説明できる業務から移すことがポイントです。
5.短い確認時間で、判断基準を管理者へ移す
案件ごとにその都度電話や口頭で確認するのではなく、一覧を見ながら未判断の案件だけをまとめて確認します。その際、社長が答えを伝えるだけでなく、「なぜこの案件を先にするのか」「なぜ今回は受け方を変えるのか」まで共有します。
この積み重ねによって、管理者は社長の判断基準を理解できます。同じ種類の案件が来たときに、前回の判断を基に動けるようになります。
権限移譲とは、仕事を丸投げすることではありません。情報、判断基準、任せる範囲をセットで渡し、社長への確認が必要な案件を少しずつ減らすことです。
まとめ
案件情報が社長に集中する会社では、社長の仕事量だけを見て「人を増やす」「ツールを入れる」と考えても、根本的な負担が残ることがあります。問題の中心は、案件を受ける人と、情報を持つ人と、判断する人がすべて社長になっていることです。
まずは、次の順番で整理すると進めやすくなります。
- 電話で受けた案件を一つの一覧へ集める
- 管理者が動くために必要な項目だけを記録する
- 優先順位を決める軸を共有する
- 管理者が判断できる範囲を明文化する
- 一覧を使った確認で、社長の判断基準を移していく
社長が築いてきた信用を維持しながら会社の対応力を広げるには、案件を減らす前に、案件情報と判断を組織で扱える形へ変えることが大切です。
自社に合う案件管理と権限移譲の形を整理するために
案件の受付方法や任せられる判断範囲は、取引先との関係、工事内容、管理者の経験によって異なります。「うちの場合は何を記録すればよいか」「どの判断から任せるべきか」と迷う段階から整理して問題ありません。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、組織、原価、採用、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。社長に集中している案件情報や業務を棚卸しし、入力負担を増やしすぎない共有方法と権限移譲の進め方を一緒に検討できます。
状況を伺わずに特定のシステムや進め方を勧めることはありません。無理な営業もいたしませんので、まずは自社の現在地を整理する場として気軽にご活用ください。
































