前提

電気・設備の専門職人が見つからず、採用だけでは事業拡大の速度に追いつきにくい状況

首都圏で原状回復や設備工事を手掛ける、20名弱の専門工事会社があります。案件の相談は増えている一方で、施工を担う専門職人の確保が追いついていません。

特に不足しているのは、電気工事に加えて空調設備まわりまで対応できるような経験者です。

「今ほしいのは電気です。空調設備までできる職人が、待っていてもなかなか来ないんですよね」

求人を出しても、資格や実務経験を持つ人からの応募は月に1人いるかどうかです。電気工事の経験者は仕事を選びやすく、すでに忙しい人も多いため、求人を公開して待つだけでは接点をつくりにくくなっています。

若手を採用して育てる方法もありますが、専門業務を一通り任せられるまでには時間がかかります。既存社員が教育を担うことになるため、目先の施工力がすぐに増えるわけでもありません。

そこで浮上したのが、職人を一人ずつ採用するのではなく、職人と顧客基盤を持つ小規模会社を引き継ぐ選択肢です。

1週間で 19件の相談 がありました

  • 9月4日塗装工事会社神奈川県人材確保の相談
  • 9月4日電気設備工事会社山梨県原価管理の相談
  • 9月4日設備保全会社栃木県利益率向上の相談
  • 9月4日電気設備工事会社岐阜県利益率向上の相談
  • 9月3日外構工事会社群馬県案件獲得の相談
  • 9月3日総合土木広島県協力会社探しの相談
  • 9月3日外構工事会社新潟県人材確保の相談
  • 9月3日電気設備工事会社福島県協力会社探しの相談
  • 9月2日内装工事会社愛知県利益率向上の相談
  • 9月2日プラント工事会社群馬県人材確保の相談
  • 8月31日内装工事会社茨城県利益率向上の相談
  • 8月31日総合建築大分県業務効率化システムの相談
  • 8月31日空調設備工事会社埼玉県高卒採用の相談
  • 8月31日総合土木広島県業務効率化システムの相談
  • 8月30日内装工事会社東京都高卒採用の相談
  • 8月30日工務店福岡県利益率向上の相談
  • 8月30日電気設備工事会社兵庫県高卒採用の相談
  • 8月29日内装工事会社神奈川県案件獲得の相談
  • 8月29日総合建築宮崎県業務効率化システムの相談
  • 8月28日防水工事会社静岡県業務効率化システムの相談
  • 8月28日配管工事会社茨城県原価管理の相談
  • 8月28日塗装工事会社茨城県案件獲得の相談
  • 8月28日内装工事会社長野県協力会社探しの相談
  • 8月27日配管工事会社東京都人材確保の相談
  • 8月27日配管工事会社埼玉県業務効率化システムの相談
  • 8月27日外構工事会社大阪府人材確保の相談
  • 8月27日外構工事会社熊本県業務効率化システムの相談
  • 8月26日総合建築神奈川県業務効率化システムの相談
  • 8月26日配管工事会社福岡県業務効率化システムの相談
  • 8月26日電気設備工事会社兵庫県案件獲得の相談
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課題

10人を個別採用する労力と、小規模会社を譌り受ける負担をどう比較するか

M&Aを人材確保の手段として考える理由は、採用人数だけではなく、確保できる機能の違いにあります。

「一人ずつ採用するのも、10人ぐらいの会社を迎え入れるのも、かかる労力はそれほど変わらないんじゃないか」

個別採用では、募集、面接、条件調整、入社後の教育を一人ずつ繰り返します。一方、小規模会社の譲受では、複数の職人に加えて、既存顧客、現場経験、社内の役割分担までまとめて引き継げる可能性があります。

たとえば、すでに顧客がいて、黒字で事業が回り、若い職人と経験者が一緒に働いている会社であれば、自社だけでゼロからつくるよりも事業成長を早められるかもしれません。

ただし、M&Aは採用人数をまとめて増やすだけの手段ではありません。会社を引き継ぐ以上、財務上の問題や既存契約、社員の気持ち、仕事の進め方の違いも一緒に受け入れることになります。

そのため、比較すべきなのは採用費と譲受費用だけではありません。

  • 必要な職人を個別採用できるまでの期間
  • 入社後に戦力化するまでの教育負担
  • 既存社員が採用や教育に割く時間
  • 引き継げる顧客と案件の継続性
  • 財務・簿外リスクを調査する負担
  • 買収後に組織をまとめる経営負担

「何人採れるか」ではなく、「必要な施工機能を、どの方法なら持続的に確保できるか」で比較することが大切です。

背景

職人だけを見て会社を選ぶと、財務問題と組織の不一致を見落としやすい構造

職人不足を起点にM&Aを検討すると、どうしても在籍人数や保有資格に目が向きます。しかし、実際に確認すべき範囲はそれだけではありません。

過去には、足りない専門職を確保するために、同業の小規模会社を引き継ごうとしたこともありました。ところが財務状況を詳しく確認すると、表面上の数字だけでは判断できない資産や不自然な点が見つかり、慎重にならざるを得ませんでした。

「財務状況だけを見ると進められそうでも、よく調べてもらうと、気になるものが出てくることがあります」

中小建設会社では、経営者個人と会社の関係が近く、帳簿や決算書だけでは実態を把握しきれない場合があります。職人と顧客が魅力的でも、財務や簿外リスクの確認を省けば、譲受後の経営負担が想定以上に膨らみます。

もう一つの難しさが、人と文化の統合です。

対象会社の社員は、買い手の会社に入ることを前提に働いてきたわけではありません。社名や指示系統、評価する人、仕事の進め方が変わると聞けば、受け止め方は社員ごとに異なります。

「吸収されると聞いたとき、社員のモチベーションはどうなるんだろう」

この問いに対して重要なのは、買収そのものよりも説明の仕方です。何のために一緒になるのか、現場や雇用がどう変わるのか、誰が責任者になるのかが見えなければ、職人は自分の将来を判断できません。

さらに、旧経営者の影響も大きな判断材料です。社員や顧客が旧経営者についている会社では、譲受直後にその人が離れると、職人や取引先まで離れる可能性があります。一方で、旧経営者が残っても、権限や役割が曖昧なら新旧の指示系統がぶつかります。

仕事の進め方も各社で異なります。

「やり方は、会社ごとにみんな違います。最初の1年は大変だと思います」

人材を引き継げても、自社のやり方を一方的に当てはめれば、定着する前に関係が崩れます。採用より成長が早い可能性がある一方、統合には相応の時間と経営者の関与が必要です。

解決

採用の代替ではなく、施工力・顧客・組織を引き継ぐ経営判断として進めること

M&Aを検討する際は、候補会社を探す前に、まず自社が引き継ぎたいものを明確にします。

今回のようなケースであれば、「電気工事の職人が何人いるか」だけでは不十分です。必要なのは、どの工事をどの水準まで任せたいのか、その人たちが継続的に働ける案件があるのかまで含めた整理です。

1.引き継ぎたい機能を具体化する

最初に、次の項目を言葉にしておきます。

  • 必要な職種、資格、施工経験
  • 任せたい工事の範囲
  • 必要な現場責任者や職長の有無
  • 引き継ぎたい顧客や商圏
  • 自社の既存案件との組み合わせ
  • 譲受後に不足する管理機能

欲しいものを「職人10人」と置かず、「どの案件を自走できる施工チームか」と定義すると、対象会社を選びやすくなります。

2.対象会社を人数だけで選ばない

候補会社を見るときは、職人の人数、年齢、資格に加えて、事業が誰に依存しているかを確認します。

顧客との関係を旧経営者だけが持っているのか、現場をまとめられる社員がいるのか、若手が特定の人物について働いているのかによって、引き継げる価値は変わります。

特に確認したいのは、次の点です。

  • 職人が譲受後も働く意思を持てるか
  • 顧客との関係が会社に残るか
  • 旧経営者が抜けても現場が回るか
  • 自社と対象会社の施工品質や速度感が合うか
  • 両社の得意工事を組み合わせられるか

社員数が多くても、経営者が離れた瞬間に人と顧客が抜ける会社では、想定した施工力を引き継げません。

3.財務と簿外リスクは第三者の目も入れて確認する

決算書上の利益や純資産だけで、対象会社の状態を判断するのは避けたいところです。帳簿に載っている資産の実在性、負債や支払いの全体像、事業継続に必要な契約などを、資料と聞き取りの両方から確認します。

社内だけで判断せず、財務や法務を確認できる関係者に入ってもらうことも重要です。見る人が見れば気づける不自然さでも、職人や案件の魅力に意識が向いていると見落としやすくなります。

金融機関との調整も、候補会社がある程度固まってから始めるのでは遅い場合があります。対象会社の財務内容だけでなく、買収後に両社をどう運営し、返済と必要投資を両立するのかまで説明できる状態をつくる必要があります。

4.旧経営者の役割と処遇を先に決める

旧経営者が継続して働くことを希望する場合は、「残るか、辞めるか」だけで考えないことが大切です。

顧客の引き継ぎを担うのか、職人のまとめ役になるのか、営業を続けるのかによって、必要な権限と処遇は変わります。成果に応じた報酬を設計する方法もありますが、買い手側の経営者との役割分担が曖昧なままでは機能しません。

  • いつまで残るのか
  • 何を任せるのか
  • 誰が最終判断をするのか
  • 社員にはどちらから説明するのか
  • 顧客の引き継ぎをどう進めるのか

この5点は、社員への説明前にそろえておきたい項目です。

5.社員への説明と仕事の統合を段階的に進める

社員には、会社が変わる事実だけでなく、一緒になる目的と今後の見通しを伝えます。

説明では、買い手側の成長戦略ばかりを話すのではなく、対象会社の社員にとって何が変わり、何が変わらないのかを具体的に示すことが重要です。現場、役割、指示系統、評価の考え方など、日々の仕事に近い内容ほど丁寧な共有が必要です。

同時に、買い手側の社員にも説明します。新しく加わる人だけを特別扱いしているように見えると、既存社員との間に距離が生まれます。

仕事の進め方についても、初日からすべて自社方式に統一するのではなく、両社の違いを把握するところから始めます。

統一すべき安全・品質・収支管理と、当面残してよい現場運用を分けることが、買収後の定着を進めるポイントです。違いを放置するのでも、一気に矯正するのでもなく、現場が止まらない順番でそろえていきます。

まとめ

専門職人を採用できない会社にとって、M&Aは十分に検討余地のある選択肢です。個別採用では得にくい職人、現場責任者、顧客、仕事の流れをまとめて引き継げる可能性があります。

一方で、職人の人数だけを目的に進めると、財務問題や社員の離職、顧客離れ、文化の衝突を見落とします。

判断の要点は次の通りです。

  • 採用人数ではなく、必要な施工機能を定義する
  • 採用にかかる時間と、買収後の統合負担を比較する
  • 職人・顧客・旧経営者の関係を見極める
  • 財務と簿外リスクを第三者も交えて確認する
  • 金融機関には買収後の運営計画まで説明する
  • 社員への説明と仕事の統合を段階的に進める

「最初の1年は大変でも、成長は早い」という見方は、M&Aの特徴をよく表しています。採用の近道としてではなく、人材と顧客が定着する会社を新しくつくる取り組みとして考えることが、成功に近づく第一歩です。

職人採用と会社の譲受を、同じ経営計画の中で整理するために

職人不足への対応は、求人を増やすかM&Aをするかの二択ではありません。若手採用と育成を続けながら、専門職人を持つ会社との連携や譲受も並行して検討できます。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の人材確保を起点に、現場体制、組織、原価、資金面、デジタル活用まで横断して整理し、実行を支援しています。

「うちの場合は採用を続けるべきか」「どのような会社なら引き継ぐ意味があるのか」「何から整理すればよいかわからない」という段階でも問題ありません。無理に話を進めることはありませんので、今の施工体制と今後必要な人材を整理する場としてご活用ください。

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