複数媒体を3年ほど試しても採用ゼロが続く、和歌山県北部の土木会社
和歌山県北部で土木工事を手がける、10名強の建設会社があります。施工管理者と現場作業員を採用するため、大手転職サービスやスカウト型媒体、公共職業紹介、建設業向け求人サイトを利用し、学校にも働きかけてきました。
有料・無料を問わず、考えられる手段には一通り取り組んでいます。それでも、直近3年ほどの採用実績はゼロ。実際の面接まで進んだ人も、記憶にある範囲では1人だけでした。
経営者の実感は、「媒体は使ってきたけれど、全然ヒットしない。そもそも人がおらんのではないか」というものです。
一方で、採用を止める選択肢もありません。社員の高齢化が進み、今後10年ほどの間には退職者が出てくる可能性があります。技術や仕事の進め方を引き継ぐには、退職直前ではなく、教育期間を見込んで早めに採用する必要があります。
採用の目的は単なる増員ではなく、現在の社員が動けるうちに次の世代へ仕事をつなぐことです。
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媒体の数ではなく、実際の採用可能エリアと候補者像が定まっていない状態
応募が来ないと、新しい求人媒体を追加したくなります。ただ、すでに複数の媒体、公共職業紹介、学校への働きかけまで試している場合、同じ条件の求人を別の場所に載せるだけでは結果が変わりにくいことがあります。
今回の会社で重要なのは、求人の掲載量よりも、そもそも誰が現実的な候補者になり得るのかを捉え直すことです。
特に地方の建設会社では、所在地から半径何キロという円だけで通勤圏を判断できません。経営者も、「通勤圏はコンパスで丸く囲めるものではない。道路事情があるから、通える範囲は限られる」と話していました。
同じ距離でも、幹線道路を使える地域と、迂回や渋滞が発生する地域では通勤時間が変わります。県内や同一地域という括りでも、生活圏が違えば候補者からは別の商圏に見えます。
さらに、募集対象も整理が必要です。この会社では、学歴や年齢を厳しく限定しているわけではありません。しかし、求人としては施工管理者と現場作業員を募集しており、両者では仕事内容も候補者が仕事を探す経路も異なります。
採用条件を広く持つことと、求人票の対象を曖昧にすることは別です。入口となる求人は、職種ごとに絞る必要があります。
人材母数の少なさに、道路事情・スマートフォン・地元のつながりが重なる採用環境
応募が少ない背景には、地域の人材母数だけでは説明しきれない複数の要因があります。
まず、実際の通勤圏が狭いことです。地方では自動車通勤が中心になりやすく、道路のつながり方によって採用可能な地域が細かく分かれます。会社からの直線距離が近くても通いづらい地域がある一方、距離が多少離れていても主要道路沿いなら候補になり得ます。
次に、若手が求人を探す経路の変化です。経営者は、「20代や30代は、紙よりスマートフォンから仕事を探すのではないか」と見ていました。大手媒体に掲載しているだけで若手に届くとは限らず、検索結果や求人ページをスマートフォンで見たときに、仕事内容と勤務条件がすぐ理解できるかまで確認する必要があります。
また、地方では地元の人間関係も採用先を左右します。若手が転職するとき、求人媒体上の条件だけでなく、「知り合いがいる会社」「身近な人から紹介された職場」に流れる傾向があるという実感も示されていました。
この環境では、全国規模の求人サービスが持つ登録者数が、そのまま自社の採用母数になるわけではありません。重要なのは、登録者全体の数ではなく、実際に通えて、土木の仕事を選択肢に入れ、転職を考えている人がどの程度いるかです。
加えて、これまでの応募経路が記録されていない点も見直しどころです。面接に進んだ1人がどの媒体から来たのか、明確には残っていませんでした。ホームページにつないだ建設業向け求人サービスから反応があった可能性はあるものの、媒体ごとの成果を比べられる状態にはなっていません。
「人がいない」という仮説を確かめるには、地域別・職種別・経路別に採用活動を分解する必要があります。
通勤圏、募集職種、応募経路の順に組み直し、媒体ごとの数字を残す採用設計
採用戦略を見直すときは、すぐに媒体を追加するのではなく、次の順番で整理すると動きやすくなります。
1.直線距離ではなく、実際の所要時間で通勤圏を設定する
会社を中心に円を描くのではなく、社員が利用している道路や主要な通勤ルートを基準に候補地域を分けます。
確認したいのは、次のような項目です。
- 自動車で無理なく通える所要時間
- 朝夕の渋滞や迂回の有無
- 現在の社員がどの地域から通っているか
- 隣接地域から会社まで使われる主要道路
- 現場への直行直帰と会社集合の違い
現在の社員の居住地域は、現実的な通勤圏を考えるうえで有効な一次情報です。そのうえで、候補地域ごとに求人タイトルや勤務地の伝え方を変えます。
採用エリアは行政区分や半径ではなく、候補者が毎日通える時間と道路で設定します。
2.施工管理者と現場作業員の求人を分ける
「良い人なら何人でも採用したい」という考え方は自然です。ただし、求人上では誰に何を任せたいのかを分けたほうが、候補者は自分に合う仕事かを判断しやすくなります。
施工管理者と現場作業員では、伝えるべき内容が異なります。
施工管理者には、担当する工事領域、現場管理の範囲、経験者に期待する役割を示します。現場作業員には、土木工事全般のうち実際に関わる仕事、未経験者が最初に覚えること、教育を担当する社員の存在などを整理します。
経験者だけを待つのか、若手や未経験者を時間をかけて育てるのかによっても、選ぶ媒体と求人内容は変わります。社員の高齢化を踏まえた技能継承が目的なら、完成された経験者の採用だけに絞らず、教育期間を取れる候補者を別枠で考える方法もあります。
採用人数を先に決めるより、「どの仕事を任せる人を、どの期間で育てるか」を職種別に決めることが先です。
3.若手が仕事を知る経路に合わせて情報を整える
若手がスマートフォンで情報収集しているなら、求人媒体の契約有無だけでなく、求人を見つけてから応募するまでの画面を確認します。
会社名を検索したときに採用情報へたどり着けるか、スマートフォンで仕事内容を読み取れるか、応募方法が複雑になっていないかを見直します。学校経由、公共職業紹介、求人媒体、建設業向けサイト、社員や知人からの紹介は、それぞれ別の採用経路として管理します。
地元のつながりが強い地域では、社員紹介も一つの経路です。ただし、「誰かいないか」と漠然と頼むだけでは動きにくいため、施工管理者なのか作業員なのか、未経験でもよいのか、どの地域から通えるのかを社員に共有しておくことが大切です。
4.応募ゼロの原因を判断できる数字を残す
採用活動では、採用人数だけを追うと、どこで止まっているのか分かりません。少なくとも月ごとに、次の数字を経路別に残します。
採用経路 | 求人の閲覧・接触 | 応募 | 面接 | 採用 |
|---|---|---|---|---|
求人媒体 | ||||
公共職業紹介 | ||||
学校経由 | ||||
自社ホームページ | ||||
社員・知人紹介 |
閲覧自体が少なければ、採用エリアや媒体選定に問題がある可能性があります。閲覧はあるのに応募がなければ、求人内容、条件、仕事内容の見せ方を見直します。応募はあるのに面接へ進まなければ、連絡方法や対応速度も確認対象です。
この数字があれば、「地域に人がいないのか」「候補者に求人が届いていないのか」「見られているが選ばれていないのか」を分けて考えられます。
媒体の良し悪しは知名度ではなく、自社の通勤圏にいる候補者との接点数、応募数、面接数で判断します。
まとめ
複数の求人媒体、公共職業紹介、学校への働きかけまで試して応募が来ない場合、次の媒体を追加するだけでは同じ結果が続く可能性があります。
見直したいのは、次の4点です。
- 道路事情を反映した実際の通勤圏
- 施工管理者と現場作業員を分けた候補者像
- 若手がスマートフォンや地元のつながりから仕事を探す経路
- 経路別の接触数、応募数、面接数、採用数
社員の高齢化に備えた採用では、退職者が出てから動くのでは教育期間が足りません。一方で、焦って媒体を増やすよりも、これまでの採用活動を分解し、どこで候補者との接点が切れているかを確かめたほうが、次の一手を選びやすくなります。
媒体を増やす前に、採用可能エリア、候補者像、応募経路を再設定することが、地方建設会社の採用戦略を立て直す出発点です。
自社の通勤圏と採用経路を整理したいときに
「うちの地域には本当に人がいないのか」「媒体と求人内容のどちらを見直すべきか」と感じても、自社だけで原因を切り分けるのは簡単ではありません。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の人材課題について、採用可能エリアや募集職種、求人内容、媒体ごとの実績を整理し、実行まで支援しています。採用だけを切り離さず、現場や組織の状況も踏まえながら、建設企業の持続的な成長につながる進め方を一緒に考えます。
何から整理すべきか分からない段階でも問題ありません。状況を伺ったうえで必要な選択肢を整理し、無理にサービスを勧めることはありませんので、気軽にお声がけください。




























