前提

増収を機に、30代後半から40代前半の業界経験者を幹部候補として迎えたい建設会社

あるリフォーム・不動産管理系の建設会社では、営業職や営業事務の採用は着実に進んでいる一方、幹部候補の採用だけが思うように進んでいませんでした。

会社は売上10億円前後の規模で、足元の業績は増収基調です。今後の成長を考えると、社長の下で営業組織をまとめ、いずれは経営に近い役割を担える人材を迎えたい状況でした。

想定していたのは、30代後半から40代前半を中心とした、建設・リフォーム・不動産管理などの業界経験者です。単に営業成績がよいだけではなく、メンバーをまとめた経験があり、自ら現場に入りながら組織を動かせる人をイメージしていました。

待遇も一般社員より高い管理職水準を想定し、年齢や経験によって柔軟に調整できる求人です。それでも担当者からは、次のような声が出ていました。

「幹部候補で出しているのに、バリバリやってきた感じの人がなかなか来ない」

営業や事務の採用が進んでいても、幹部候補は同じ設計、同じ媒体、同じ進め方では採れないことがあります。

1週間で 19件の相談 がありました

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課題

「営業リーダー」という求人名と広い待遇幅が招いた、幹部候補像とのずれ

応募者とのずれは、求人への反応が少ないことだけではありません。応募はあっても、想定する年齢、業界経験、マネジメント能力との乖離が大きい状態でした。

さらに、一部の求人媒体では、幹部候補の募集が「営業リーダー」というタイトルで掲載されていました。会社側は将来の経営幹部を求めていても、求職者からは営業チームの現場責任者に見える可能性があります。

「幹部候補」と「営業リーダー」では、応募する人が想像する責任範囲も、その後のキャリアも異なります。

待遇についても、経験に応じて幅を持たせる考え方自体は自然です。ただし、下限と上限の差が大きい求人では、求職者が「自分はどの役割で、どの水準になるのか」を判断しにくくなります。

たとえば、同じ募集枠の中に次の人材像が含まれていると、求人の訴求がぼやけます。

  • 業界経験があり、営業メンバーをまとめたことがある人
  • 部門責任者として数値や組織を管理してきた人
  • 経営に近い位置で営業戦略や事業運営に関わってきた人

この3者は、期待する役割も市場での待遇も違います。にもかかわらず、ひとつの求人で広く募集すると、会社が最も欲しい層にメッセージが届きにくくなります。

「業界経験者で、できれば比較的若く、マネジメントもできる人が欲しい」と媒体側へ伝えても、該当者の母数が少なければ、条件に近い人を広めに紹介されます。結果として、応募者の数は出ても、面接したい人が増えない状態になりやすいのです。

背景

必須条件と任せるミッションが曖昧なまま、総合求人媒体へ先に出した採用設計

根本にあったのは、欲しい人物の解像度よりも先に求人掲載を進めたことでした。

社内には「将来の幹部が欲しい」「業界を知っている人がよい」「営業組織をまとめてほしい」という共通認識があります。一方で、その人に入社後何を任せ、どこまで自力でできることを求めるのかは、十分に言語化されていませんでした。

担当者の言葉にも、状況が表れています。

「ペルソナが曖昧だから、打ち手も曖昧になっている感じがする」

幹部候補の採用では、年齢や業界経験だけを並べても人物像は固まりません。重要なのは、入社後のミッションを具体化することです。

たとえば、営業組織をまとめる役割でも、必要な能力は会社の状態によって変わります。

  • 既存の営業メンバーを管理し、行動量を安定させる
  • 営業の進め方を整理し、組織として再現できる形にする
  • 社長が担ってきた営業判断を引き継ぐ
  • 将来的に部門全体の数値と人員を管理する

このうち、最初から任せたい仕事は何か。入社後に覚えてもらえる仕事は何か。ここが分かれていないと、すべての条件を満たす人を探すことになり、対象者が極端に少なくなります。

また、利用していたのは幅広い職種や業界を扱う総合型の求人媒体や人材紹介が中心でした。総合型にも幹部候補は登録していますが、登録者全体に占める割合は高くありません。さらに建設・リフォーム業界の経験まで加えると、対象者は限られます。

採用チャネルの良し悪しではなく、欲しい人材が多く集まる場所を選べているかが問題です。

総合型で反応が少ないからといって、求人票の表現だけを何度も直しても、母集団そのものが違えば成果は大きく変わりません。まずは「その媒体に求める人がいるのか」を確認する必要があります。

解決

ミッションからペルソナを固め、市場・待遇・チャネルの順で検証する採用の進め方

幹部候補採用を立て直すときは、求人票の修正から始めるのではなく、ミッション、条件、市場、待遇、チャネルの順で整理することが有効です。

1.入社後1年で任せたいミッションを決める

「幹部候補」という肩書だけでは、必要能力を判断できません。まずは入社後1年程度で、どの状態をつくってほしいのかを具体化します。

整理する項目は、次の4つで十分です。

  • 担当してもらう部門と人数
  • 引き継いでもらう社長や既存幹部の仕事
  • 持ってもらう売上・利益・組織上の責任
  • 入社後1年で実現してほしい状態

たとえば「営業をまとめる」ではなく、「社長が直接見ている営業メンバーを引き継ぎ、案件状況と行動を管理できる状態をつくる」と置けば、必要な経験が見えやすくなります。

幹部候補のペルソナは、理想の経歴ではなく、任せたい仕事から逆算してつくります。

2.必須条件と入社後に育成できる条件を分ける

次に、候補者へ求める条件を3段階に分けます。

区分

判断の考え方

必須条件

入社時にないと、任せたいミッションを遂行できない条件

歓迎条件

あれば立ち上がりが早くなる条件

育成可能

入社後の同行や引き継ぎで身につけられる条件

業界経験を必須とする場合も、「同じ工事領域でなければならないのか」「建設・リフォーム・不動産管理の近接業界まで広げられるのか」を検討します。

年齢についても、年齢そのものではなく、期待する経験との関係で見直します。若さと豊富な管理職経験を同時に求めるほど、対象者は少なくなります。どちらを優先するかを決めることが必要です。

「全部できる人」を探すのではなく、入社時に欠かせない能力と、自社で補える能力を切り分けることで、採用可能な範囲が見えてきます。

3.該当する人材が市場にいるかを媒体側へ確認する

ペルソナを固めたら、求人媒体や人材紹介会社へそのまま共有します。確認したいのは応募予測だけではありません。

  • 条件に合う登録者は実際に何人程度いるか
  • 該当者の現在の役職と待遇はどの程度か
  • 転職時に重視される役割や条件は何か
  • 条件をひとつ緩和すると候補者がどれだけ増えるか
  • 過去に近い人材の採用実績があるか

「このペルソナに近い人は集まりそうですか」と聞くだけでなく、具体的な登録人数や紹介実績まで確認します。

市場にほとんどいない人を求人表現だけで集めることはできません。条件を変えるのか、待遇を変えるのか、探す場所を変えるのかを判断するための確認です。

4.待遇と責任範囲を市場水準に合わせる

求める人材が市場にいても、提示する待遇と役割が釣り合っていなければ応募にはつながりません。

今回の会社は業績が伸びており、よい人材であれば待遇を引き上げる余地がありました。ただし、その判断には市場水準の把握が必要です。

「管理職経験者ならこの水準」「経営に近い役割まで求めるならこの水準」と、ミッションごとに待遇を分けて考えます。求人票にも、どの経験を持つ人がどの役割と待遇になるのかを示したほうが、候補者は判断しやすくなります。

待遇を上げることだけが解決ではありません。裁量、社長から引き継ぐ範囲、入社後の役職、将来のキャリアを明確にすることも重要です。

5.ペルソナに応じて採用チャネルを組み替える

ペルソナと市場水準が見えたら、採用チャネルを選び直します。

  • 幅広く候補者へ接触するなら総合求人媒体
  • 建設、リフォーム、不動産管理の経験を重視するなら業界特化型
  • 部長級や経営に近い経験を求めるならハイクラス向け
  • 条件に合う人へ直接接触するならスカウト型

ひとつに絞る必要はありません。ただし、すべてのチャネルへ同じ求人を掲載するのではなく、それぞれの登録者層に合わせて求人名や訴求を変えます。

業界特化型には施工・管理領域との親和性を伝え、ハイクラス向けには経営に近い責任範囲や裁量を明示する、といった使い分けです。

総合型だけで待つのではなく、業界経験とマネジメント経験のどちらを優先するかによって、チャネルを組み合わせることが大切です。

まとめ

幹部候補の求人に期待する応募者が来ないとき、原因を媒体の集客力だけに置くと、求人の出し直しが続きやすくなります。

今回のように、会社が求めるのは将来の経営幹部である一方、求人名が「営業リーダー」になっていたり、ひとつの求人に複数の人材像が含まれていたりすると、応募者とのずれが生まれます。

整理する順番は明確です。

  1. 入社後に任せるミッションを決める
  2. 必須条件と育成可能な条件を分ける
  3. 該当者が人材市場にいるか確認する
  4. 待遇と責任範囲を市場水準に合わせる
  5. ペルソナに合う採用チャネルを選ぶ

ペルソナが具体的になれば、求人票、待遇、媒体選定、面接で確認すべきことまで一本につながります。

応募者の数を増やす前に、「誰に何を任せたいのか」を社内で揃える。それが、幹部候補採用を前へ進める最初の一手です。

自社に合う幹部候補の人物像から整理したい方へ

幹部候補の採用は、求人票だけを見直しても解決しないことがあります。経営者が担っている仕事、今後の組織体制、採用後に任せる役割まで一緒に整理することで、必要な人物像と採用方法が具体的になります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。

「うちの場合、どこまでを必須条件にすべきか」「総合型と業界特化型のどちらを使うべきか」といった段階でも構いません。状況を伺いながら次の整理先を一緒に考えます。無理にサービスをご案内することはありませんので、気軽にお声がけください。

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