30名弱の専門工事会社が施工管理経験者を採用しようとしている状況
関東近郊のある専門工事会社では、施工管理経験者の採用に向けて、人材紹介会社やスカウト媒体を複数立ち上げていました。
媒体数は6〜8社ほど。人材紹介会社との初回面談も進み、40代の経験者候補について「こういう方がいます」という話も出始めていました。
一方で、早い段階で見えてきたのが、求人票を出せば自然に応募が集まるわけではない、という現実です。
人材紹介会社からは、年収レンジの見せ方に加えて、社長がどんな会社にしたいのか、入社した人にどんな役割を期待しているのかまで整理しないと、候補者が振り向きにくいという話がありました。
現場感のある言葉で言えば、課題は「応募が来ない」だけではありません。より手前に、候補者に興味を持ってもらえないという壁があります。
「仕事内容は書いている。媒体も開けている。でも、経験者から見ると決め手が弱い」。
中小建設会社の経験者採用では、この状態がよく起きます。
仕事内容だけの求人票では経験者に選ばれる理由が伝わらない
施工管理経験者や現場経験者は、求人票を見るときに仕事内容だけを見ているわけではありません。
もちろん、担当工種、現場エリア、元請け・下請けの立ち位置、残業、休日、年収レンジは大事です。ただ、それだけでは他社との違いが見えにくくなります。
特に中小建設会社の場合、大手のように知名度や制度の整備で勝ち切る採用は簡単ではありません。だからこそ、求人票には「なぜこの会社で働くのか」を言葉にする必要があります。
今回の会社でも、人材紹介会社との会話の中で次のような話が出ていました。
「年収レンジも考えて出していかないと厳しいです。ただ、中小企業の場合は、社長のビジョンや、どういう会社にしたいかまで求職者に伝えないと、興味を持ってもらいにくいみたいなんです」
ここで重要なのは、求人票の問題を「文章の書き方」だけで捉えないことです。
求人票に書けないのは、そもそも社内で整理できていないからかもしれません。
たとえば、次のような内容です。
- 採用した経験者に、現場担当を任せたいのか
- 将来的に番頭や管理職を期待しているのか
- 社長は会社をどの規模・どの方向へ伸ばしたいのか
- 既存社員との役割分担をどう考えているのか
- 候補者にとって、今の会社から移る意味は何か
ここが曖昧なまま求人票を出すと、「施工管理募集」「経験者歓迎」「年収応相談」のような、よくある求人に見えてしまいます。
経験者ほど、求人票の奥にある会社の本気度を見ています。
複数媒体を開けても、会社の将来像が揃っていないと紹介会社も動きにくい
今回の会社では、媒体や人材紹介会社の立ち上げ自体はかなり前向きに進んでいました。
求人票をまとめ直し、複数の紹介会社に説明し、スカウト媒体もチューニングしていく。さらに、良さそうな紹介会社とは2週間に1回程度の定例を組み、応募状況や足りない訴求を確認していく流れも検討されていました。
これは大事な動きです。
ただし、紹介会社を増やすだけでは採用力は上がりません。紹介会社の担当者が候補者に会社を勧めるとき、手元にある情報が弱ければ、どうしても条件面の話に寄ってしまいます。
そうなると、比較される軸は年収、休日、勤務地、会社規模になります。
もちろん待遇は避けて通れません。経験者採用では、年収レンジを現実的に設計することは前提です。
ただ、中小建設会社が待遇だけで勝とうとすると、どうしても苦しくなります。だからこそ、待遇と同じくらい、次の情報が必要になります。
社長がどんな会社にしたいのか。
入社後にどんな役割を任せたいのか。
その人が入ることで、会社と本人の未来がどう変わるのか。
ここまで話せると、人材紹介会社も候補者に伝えやすくなります。
たとえば、同じ施工管理経験者募集でも、候補者への伝わり方は変わります。
「現場管理をお願いします」だけでは、今の会社との違いが見えません。
一方で、「今は社長と数名の中核社員で現場を回しているが、今後は現場を任せられる人を増やし、社長が営業や組織づくりに時間を使える体制にしたい。その中心を担ってほしい」と伝えると、候補者は自分の役割を想像しやすくなります。
経験者は、単に仕事を探しているだけではありません。
「この会社に移ったら、自分はどう扱われるのか」 「今までの経験は、どこで活きるのか」 「社長は本気で任せるつもりがあるのか」
そうした点を見ています。
求人票を出す前に、社長の言葉・任せたい役割・候補者への訴求を揃える
経験者採用でまず取り組みたいのは、求人票の作成そのものではなく、求人票に載せる前の整理です。
特に中小建設会社では、社長の言葉を採用情報に変換することが大きな差になります。
きれいな採用コピーを作る必要はありません。むしろ、現場に近い言葉のほうが伝わることも多いです。
整理する順番は、次の4つです。
1. 会社をどうしたいのかを、採用とつながる言葉にする
まずは、社長が会社をどうしていきたいのかを言葉にします。
売上を伸ばしたい、元請けを増やしたい、現場を任せられる体制にしたい、若手を育てたい、社長依存を減らしたい。方向性は会社ごとに違います。
大事なのは、それを採用ポジションと結びつけることです。
たとえば、施工管理経験者を採るなら、次のような問いを置くと整理しやすくなります。
- なぜ今、経験者が必要なのか
- 採用できたら、社長や既存社員の何が変わるのか
- 3年後、その人にどんな立場を期待するのか
- 会社として、どんな案件や顧客を増やしたいのか
ここが固まると、求人票の「募集背景」が単なる欠員補充ではなくなります。
候補者にとっては、自分が入る意味が見える求人になります。
2. 任せたい仕事を「作業」ではなく「役割」で書く
求人票では、仕事内容を細かく書くことも大切です。
ただし、経験者採用では「何をするか」だけでなく、「どこまで任せるか」が重要です。
たとえば、次のように整理します。
- 現場の段取りまで任せるのか
- 協力会社との調整を任せるのか
- 若手の育成も期待するのか
- 積算や見積もりにも関わるのか
- 将来的に管理職候補なのか
経験者は、自分の経験がどのレベルで求められているのかを気にします。
「施工管理業務全般」では幅が広すぎます。
「まずは既存顧客の改修案件を中心に、工程・品質・協力会社調整を担ってもらい、慣れてきたら若手の相談役もお願いしたい」のように書くと、入社後の姿が見えます。
3. 年収レンジは曖昧にせず、理由とセットで伝える
人材紹介会社からも出ていた通り、経験者採用では年収レンジの設計が欠かせません。
ただ、単に高く出せばよいわけではありません。
大事なのは、どの経験に対して、どの待遇を用意するのかを整理することです。
たとえば、同じ経験者でも、現場を一人で任せられる人、補佐から入る人、協力会社調整に強い人、資格を持っている人では評価軸が変わります。
求人票では、最低額と最高額だけでなく、どういう人なら上限に近づくのかを伝えられると、候補者も判断しやすくなります。
紹介会社にも同じ説明をしておくと、候補者との会話でズレが起きにくくなります。
4. 人材紹介会社との定例で、候補者の反応を拾って直す
求人票は、一度作って終わりではありません。
今回の会社でも、良さそうな紹介会社を数社に絞り、2週間に1回ほど定例を回す案が出ていました。
これは実務上、とても有効です。
定例で確認したいのは、応募数だけではありません。
- 候補者はどこで興味を持ったのか
- どこで辞退・見送りになったのか
- 年収なのか、勤務地なのか、会社規模なのか
- 仕事内容が伝わっていないのか
- 社長の考えや将来像が伝わっているのか
この反応をもとに、求人票やスカウト文面を直します。
特に経験者採用では、最初から完璧な求人票を作るより、候補者の反応を見ながら訴求を磨くことが現実的です。
人材紹介会社任せにせず、会社側も一緒に言葉を整えていく。ここが採用成果を分けます。
まとめ
中小建設会社の経験者採用では、求人票に仕事内容だけを書いても、候補者に選ばれにくい場面があります。
媒体を増やすことも、人材紹介会社を動かすことも大切です。ただ、その前提として、会社側が伝えるべき中身を整理しておく必要があります。
特に重要なのは、次の3つです。
- 社長がどんな会社にしたいのか
- 採用後にどんな役割を任せたいのか
- 候補者が転職する意味を感じられる訴求になっているか
経験者は、条件だけでなく「自分がこの会社でどう活きるか」を見ています。
だからこそ、求人票は単なる募集要項ではなく、会社の方向性を伝える資料でもあります。
求人票を出して反応が弱いときは、媒体の問題だけにせず、まずは会社の言葉が候補者に届く形になっているかを見直すのがよさそうです。
経験者採用の打ち出し方を整理したいときは
「求人票は出しているが、候補者に響いている感じがしない」 「紹介会社に何を伝えればよいか整理できていない」 「社長の考えを、採用で使える言葉に落とし込みたい」
そう感じている場合は、求人票を直す前に、採用したい人材像や入社後の役割、会社の将来像を一度整理してみると進めやすくなります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。経験者採用についても、求人票づくりだけでなく、人材紹介会社との向き合い方や訴求軸の整理から一緒に考えることができます。
「うちの場合は何を打ち出せばよいのか」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、状況の整理先として必要なときにご相談ください。

































