6月中旬から7月まで予定が埋まる一方で、自社班を出せる現場が限られている状態
東北南部を拠点に、重量物の据付や設備解体を手がけるある専門工事会社では、6月以降の仕事が一気に入り始めていました。
「6月中旬ぐらいから7月ぐらいまでは、だいたいもう埋まっています」
仕事があるのはありがたいことです。しかも内容は、工場内の機械入替、電気設備・空調設備まわりの重量物、蓄電池や変電設備、自動倉庫のラック組みなど、今後も伸びが見込める領域です。
ただ、そこで出てきたのが人の問題でした。
「逆に、人が足らなくなってくる状態ですね」
この会社では、採用媒体を複数運用し、求人内容の見直しも進めようとしていました。けれども、単に応募数を増やせば解決する状況ではありません。足りないのは、現場条件に合う人材です。
求人を広く出しても、泊まり出張・夜間・体力仕事に入れる人へ届いていないこと
建設業の採用では、「作業員募集」「未経験歓迎」「経験者優遇」といった求人票になりがちです。
しかし、この会社の現場条件を聞くと、それだけでは足りませんでした。
たとえば、原発や大規模プラントの仕事では、放射線管理手帳が必要になる場合があります。一度入ると、単発で抜けにくい現場もあります。通勤だけで片道2時間近くかかる場所もあり、入場時には車両確認や通行証チェックで渋滞します。
「8時作業なら、7時ぐらいから入場しないと門が詰まって入れないんです。うちから出るなら5時ぐらいに出ないと間に合わない」
高速道路関係の仕事では、夜間作業も多くなります。夏場は暑さもあります。60歳前後の職人を入れていた現場で、「年齢的に体力的に厳しいのでは」「もっと若い人を」と言われる場面もありました。
つまり、求人で本当に伝えるべきなのは、給与や休日だけではありません。
出張できるか、夜間に入れるか、暑さや重量物に対応できるか、資格や入場条件に対応できるか。ここが合わないと、応募があっても現場に出せないのです。
通い希望の人と全国出張できる人では、採用市場で見ている仕事が違うこと
この会社の言葉で印象的だったのは、出張できる人材への見方です。
「出張で行く人間って、全国どこでも行ってくれるので、そういう人たちは仕事がすぐ決まるんです」
一方で、家庭の事情などで県内の通いしか難しい人もいます。その人たちが悪いわけではありません。ただ、会社側が取りたい仕事と、働く側が希望する働き方がずれると、採用後の配置が難しくなります。
さらに、現場の種類によって求められる人も変わります。
この会社が扱うのは、一般的な住宅解体だけではありません。工場内で、窓から出せないボイラーや機械を中で解体して搬出する。5メートルほどのダクトや配管で、300〜500kgあるものを下ろす。蓄電池や変電設備のような重量物を扱う。自動倉庫のラック組みでは、スピードと段取りも求められる。
「重たいものに特化した工事が多いんです」
こうした会社が採りたい人は、単なる「建設作業員」ではありません。重量物・設備・工場系の現場に適性がある人です。
ここを求人票で言語化しないと、求職者側も自分に合う仕事か判断できません。結果として、応募は来ても面接でずれる。あるいは、そもそも欲しい人に届かない。そんな状態になりやすくなります。
現場条件を分解し、求人票を「誰でも歓迎」から「合う人に刺さる内容」へ変えること
まず整理したいのは、求人票を出す前に、現場を人材条件へ分解することです。
たとえば、同じ現場作業でも、次のように分けて考えられます。
- 県内通い中心で働きたい人向けの仕事
- 泊まり出張に対応できる人向けの仕事
- 夜間作業に抵抗がない人向けの仕事
- 重量物や暑熱環境にも対応できる体力が必要な仕事
- 放射線管理手帳や特殊な入場条件に対応できる仕事
- 蓄電池、変電設備、自動倉庫など今後伸びる領域の仕事
大事なのは、すべてを1つの求人に詰め込まないことです。
「出張あり」とだけ書くと、求職者には重く見えます。逆に、出張できる人には魅力が伝わりません。そこは、どの範囲まで出張があるのか、宿泊費はどう扱われるのか、どんな現場経験が積めるのかまで書いたほうがよいです。
また、体力面も同じです。「体力に自信がある方」と書くだけでは曖昧です。
この会社なら、工場内の機械入替、重量物の据付、ダクト・配管の撤去、蓄電池設備の工事など、仕事の中身を具体的に伝えられます。求職者から見れば、「きつそう」だけでなく、「専門性が身につきそう」「普通の解体とは違う」と受け取れる可能性があります。
未経験者を採る場合も、入口を分けると考えやすくなります。
いきなり全国出張や特殊現場に入れる人だけを探すのではなく、まずは県内の工場・設備系の現場で慣れてもらう。その後、希望と適性を見ながら、出張班、重量物班、蓄電池・変電設備系の現場へ進む。こうした育成ルートを求人票に入れるだけでも、応募者の受け止め方は変わります。
経験者向けには、別の訴求が必要です。
この会社には、自動倉庫や半導体系の工場、公共施設の改修、蓄電池設備など、今後も需要が見込まれる仕事があります。単価の安い現場を追いかけるだけでなく、伸びる領域へ切り替えようとしている。これは経験者にとっても魅力です。
「これから伸びる工事領域に入れる」 「重量物の専門性を活かせる」 「通い中心か出張中心か、働き方を相談できる」
こうしたメッセージは、単なる待遇説明よりも届くことがあります。
求人設計で見るべき判断軸は、応募数ではありません。応募者が、実際に入ってほしい現場を理解したうえで応募しているかです。
そのためには、求人を次の順番で見直すのが現実的です。
- 直近3か月で人が足りない現場を洗い出す
- その現場に必要な条件を「出張・夜間・体力・資格・経験」で分ける
- 通い希望者向け、出張可能者向け、経験者向けで求人を分ける
- 仕事内容を「建設作業」ではなく、実際の設備・重量物・工場名目で伝える
- 入社後にどの現場へ進めるか、育成ルートを明記する
求人票は、会社紹介ではなく、現場との接点です。現場条件が濃い会社ほど、そこをぼかさないほうが、結果的にミスマッチを減らしやすくなります。
まとめ
仕事が埋まっているのに人が足りないとき、採用の問題は「応募が少ない」だけではありません。
今回のように、泊まり出張、早朝移動、入場制限、夜間作業、暑さ、重量物、特殊設備といった条件が重なる会社では、求人票そのものを現場条件から逆算する必要があります。
誰でもよい求人では、誰にも刺さりにくくなります。
一方で、働き方や現場の特徴を丁寧に分ければ、通いで力を発揮できる人、出張で稼ぎたい人、特殊な設備工事で腕を磨きたい人、それぞれに届く可能性があります。
受注が増えている会社ほど、採用は急ぎたくなります。ですが、まずは「どの現場に、どんな人が必要か」を分解すること。そこから求人票を組み直すことが、次の一手になります。
自社の現場条件に合う採用設計を整理したいときは
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の採用、人材確保、組織づくり、原価管理、デジタル活用まで、現場の実情に合わせて整理し、実行まで支援しています。
「求人は出しているが、欲しい人に届いていない」 「通い希望と出張案件のバランスに悩んでいる」 「伸ばしたい工事領域に合わせて、採用メッセージを見直したい」
そうした段階でも、状況の整理からご一緒できます。無理な営業はいたしませんので、まずは自社の場合に何から見直すべきかを確認する場としてご活用ください。
































