中国地方の内装工事会社が、媒体も紹介も使いながら若手採用に苦戦している状況
中国地方で内装工事や造作家具に関わる、若手中心の専門工事会社から採用の相談がありました。
すでに求人検索エンジン系の代理店、無料求人媒体、人材紹介、ハローワークなどを試しており、何もしていないわけではありません。むしろ、できる範囲でいくつも手を打っています。
それでも社長の言葉は率直でした。
「何社かやってるんだけど、なかなか来ないんですよね」
応募がゼロではないものの、履歴書を見た段階で面接に進めづらい人もいる。社長は「大した書類じゃないんですけど、履歴書だけでちょっとお断りしたい人が数名いる状態です」と話していました。
採りたいのは、必ずしも即戦力のベテランではありません。内装業界の経験があればうれしいものの、現実には40代・50代でバリバリできる人が中小企業へ転職してくる可能性は高くありません。社長自身もその点はよく分かっていて、「若い子を入れて、指導して、教えていくほうがいい」という考えを持っていました。
この会社の場合、入社後は工事を中心に覚え、将来的には家具や造作にも関わる想定です。つまり、単なる人手ではなく、自社の技術を継いでいく若手を探している状況でした。
求人を出すだけでは、若手にも未経験者にも自社の魅力が届きにくくなっている
採用で起きていた課題は、単純に「媒体が悪い」「給与が低い」という話だけではありません。
もちろん、給与条件の比較は避けられません。実際、同じ内装管理の求人でも、かなり高い金額を出している会社があるという話が出ていました。今回の会社も若手向けとして一定の給与レンジを出していましたが、それだけで応募が増えるわけではありませんでした。
ここで大事なのは、給与だけで勝とうとすると、資本力のある会社との競争に巻き込まれやすいということです。
中小の専門工事会社が若手を採る場合、条件面だけで大手や高単価求人と真正面から比べられると不利になりがちです。しかも、求人媒体は分散しています。無料求人、求人検索エンジン、人材紹介、地域媒体、専門職向け媒体、SNSなど、求職者が見ている場所は一つではありません。
そのため、求人を出しても、そもそも採りたい人に見られていない可能性があります。仮に見られていても、「この会社で働く意味」が伝わっていなければ、応募にはつながりません。
今回の会社には、ブランド店舗の階段や什器のような、目に見えて形に残る仕事に関わってきた実績がありました。これは若手にとって十分に魅力になり得ます。
ただし、その魅力は求人票に書かなければ伝わりません。さらに言えば、求人票に書くだけでなく、写真、仕事内容の説明、入社後に覚える流れ、どんな先輩が教えるのかまで含めて設計しなければ、未経験者には届きにくいのです。
有効求人倍率の高さと媒体の分散で、経験者採用の難しさがより強く出ている
建設業の採用は、他業界と比べても競争が激しい領域です。技術者、技能者、施工管理に近い職種になるほど、求職者一人に対して複数社が声をかける状態になりやすくなっています。
以前であれば、主要な求人媒体に出せば、一定数の応募が来ることもありました。大きな池に求職者がいて、そこへ求人を出すイメージです。資金力や知名度がある会社ほど強い一方で、中小企業にも多少の応募は流れてきました。
ところが今は、求職者がいる場所が細かく分かれています。求人検索エンジン、無料求人、地域媒体、専門媒体、人材紹介、SNS、学校経由、知人紹介など、入口が増えました。
この状態では、「どの媒体に出すか」より先に、「誰に何を伝えるか」を決める必要があります。
今回の会社でも、求人は掲載されていました。検索すれば出てくる状態ではありました。ただ、求職者が実際にどんな言葉で探すのか、未経験者が「内装管理」という言葉で検索するのか、若手がその求人を見て仕事内容を想像できるのか、という点には見直しの余地がありました。
また、社内の年齢構成も関係します。社長は「私以外は若いので、上の人が入ってきてもやりにくい」と話していました。これは多くの中小建設会社に共通する感覚だと思います。
即戦力が来れば助かる一方で、社内になじむか、既存メンバーとの関係がうまくいくか、給与バランスが崩れないかという問題があります。だからこそ、経験者一本足ではなく、若手・未経験者・隣接業界経験者まで採用対象を広げることが現実的になります。
採りたい人物像、伝える魅力、選考導線、教育前提を一つの採用戦略として組み直す
若手採用を進めるときは、媒体を増やす前に、まず採用の設計図を作ることが大切です。
最初に整理したいのは、採りたい人物像です。今回の会社であれば、次のように分けて考えられます。
- 内装業界で数年経験があり、今の環境に行き詰まりを感じている20代後半から30代前半
- 建設業や製造業など、手を動かす仕事に抵抗がない未経験の若手
- 高卒・専門卒など、これから技術を身につけたい10代後半から20代前半
- 現場仕事の厳しさを理解しつつ、形に残る仕事に魅力を感じる人
ここを曖昧にしたまま求人を出すと、「未経験歓迎」と書いているのに、実際には経験者向けの仕事内容に見える求人になりがちです。逆に、経験者を採りたいのに、給与や裁量や案件の面白さが伝わらない求人にもなります。
次に見直したいのが、求人で伝える内容です。
内装工事や造作家具の仕事は、若手にとって伝え方次第で魅力が大きく変わります。たとえば、単に「内装施工管理」「現場管理」と書くよりも、有名店舗や商業施設の空間づくりに関わる仕事だと伝えたほうが、未経験者はイメージしやすくなります。
特に今回の会社のように、目に見える造作物や店舗空間に関わっている場合は、写真や実績の見せ方が重要です。「自分が関わったものが街に残る」「友人や家族に見せられる」という要素は、若手には強い訴求になります。
そのうえで、媒体は無料と有料を分けて考えます。
無料媒体は、求人文の反応を見るための土台として使えます。応募が来ない場合でも、検索キーワード、表示順位、クリック、応募前離脱などを確認しながら改善できます。有料媒体や人材紹介は、いきなり丸投げするのではなく、無料媒体で反応が取れる求人内容を作ってから使うほうが無駄が少なくなります。
また、人材紹介は成功報酬型で安心に見えますが、紹介される人材の質が自社の求める層と合っていなければ、面接前の確認工数ばかり増えます。紹介会社を使う場合も、「若手未経験でもよい」のか「内装経験者がよい」のか「施工管理寄りなのか職人寄りなのか」を明確に伝える必要があります。
選考導線も見直しどころです。若手・未経験者を採るなら、履歴書だけで判断しすぎると、可能性のある人を逃すことがあります。もちろん、最低限の確認は必要です。ただ、書類で見る項目と面接で見る項目を分けたほうがよいです。
たとえば、書類では以下を確認します。
- 転職回数や空白期間の理由を聞けば説明できそうか
- 現場仕事に必要な通勤・生活リズムに無理がなさそうか
- 仕事内容への興味が少しでも読み取れるか
一方、面接では、素直さ、時間を守る感覚、体力面への理解、手に職をつけたい理由、チームで働けるかを見ます。若手採用では、完璧な履歴書よりも、育てたときに伸びる土台を見るほうが合う場合があります。
最後に、教育前提です。
「若い子を入れて教えていく」と決めるなら、入社後3か月で何を覚えるのか、半年でどこまで任せるのか、誰が教えるのかを求人段階から伝えたほうがよいです。未経験者は、建設業に興味があっても「自分にできるのか」が不安です。
その不安を減らすには、根性論ではなく、覚える順番を見せることです。最初は現場同行、次に道具や材料の名前、次に工程の流れ、次に協力会社とのやり取り、というように、成長の道筋を言葉にします。
採用は、求人を出す活動ではなく、入社後に定着して戦力化するところまでを含めた経営活動です。だからこそ、媒体選び、求人票、面接、教育を分けずに、一つの流れとして組む必要があります。
まとめ
求人媒体に出しても応募が来ない、応募が来ても面接に進めたい人が少ないという悩みは、建設業の中小企業では珍しくありません。
ただ、その原因を「人がいないから仕方ない」で止めてしまうと、次の打ち手が見えにくくなります。
今回の内装工事会社のように、若手を育てたい意思があり、形に残る仕事や技術力という魅力がある会社でも、それが求職者に届いていなければ応募にはつながりません。
見直す順番は、媒体を増やすことではなく、まず採りたい人物像を明確にすることです。そのうえで、若手や未経験者に伝わる言葉で仕事の魅力を表現し、無料媒体と有料媒体を使い分け、面接前後の導線と教育体制まで整えていく。
この順番で採用を組み直すと、単発の応募集めではなく、今後も人を採れる会社に近づいていきます。
若手採用を自社に合う形で整理したいときに
「うちの場合、経験者を狙うべきか、未経験の若手を育てるべきか」「求人媒体を変える前に、何を直すべきか」と感じている会社も多いと思います。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の採用、人材育成、組織づくり、原価管理、デジタル活用まで、現場の事情に合わせて整理し、実行まで支援しています。
採用についても、求人票の見直しだけでなく、採りたい人物像の整理、媒体の使い分け、面接導線、入社後の教育前提まで一緒に考えることができます。
まだ「何から整理すべきかわからない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、自社の状況を整理する場としてご相談ください。
































