首都圏で45名規模を維持する専門工事会社が、常駐先と案件ごとのOJTに新人育成を委ねている状態
首都圏で特殊な電気・設備系の施工を手がける、45名規模の専門工事会社の話です。一定数の社員が取引先や案件先に常駐し、繁忙期と閑散期の差も大きい中で、会社としては大きく人数を増やすよりも、今の規模感を維持しながら人の定着と戦力化を安定させたい状況にありました。
新人は学校経由などで毎年数名入ってきます。ただ、入社後の育成は会社として研修期間を設けるというより、案件に入った先のチーフや先輩に任される形です。
「案件に入ったときに、その案件のチーフか先輩が見る形です。何週間か研修してから出す、というわけではないです」
この言葉に、同じような会社の悩みがよく表れています。新人が育たない原因は、本人の能力だけではなく、“誰の案件に入るか”で育ち方が変わる構造にあります。
社長やベテランが仕事の勘どころを持っている会社ほど、現場で覚えること自体は自然に回ります。一方で、会社として「何を、どの順番で、誰が、どこまで教えるか」が決まっていないと、育成は経験者の感覚に寄っていきます。
1週間で 8件ダウンロード されました
- 6月23日プラント工事会社神奈川県
- 6月23日外構工事会社岐阜県
- 6月19日空調設備工事会社兵庫県
- 6月19日総合建築鳥取県
- 6月19日配管工事会社東京都
- 6月18日総合土木東京都
- 6月18日空調設備工事会社兵庫県
- 6月18日防水工事会社岡山県
- 6月16日配管工事会社青森県
- 6月16日総合建築神奈川県
- 6月16日電気設備工事会社東京都
- 6月15日総合土木千葉県
- 6月15日内装工事会社島根県
- 6月15日設備保全会社群馬県
- 6月14日内装工事会社栃木県
- 6月14日塗装工事会社神奈川県
- 6月13日解体工事会社神奈川県
- 6月11日総合建築和歌山県
- 6月11日総合土木静岡県
- 6月11日プラント工事会社京都府
- 6月11日空調設備工事会社神奈川県
- 6月11日空調設備工事会社茨城県
- 6月11日総合土木長野県
- 6月10日総合建築広島県
- 6月10日総合土木奈良県
- 6月10日総合建築東京都
- 6月10日内装工事会社愛知県
- 6月9日設備保全会社京都府
- 6月9日総合土木北海道
- 6月9日設備保全会社山口県
新人が案件先のチーフ任せになると、技術以前の基礎行動まで教え方がばらつく
この会社で最初に出てきた悩みは、施工技術そのものよりも、仕事に入る前段階の基礎行動でした。
「技術的なところは、最初はできないのが当たり前です。それより前段階の状態の方が課題かもしれないです」
たとえば、面接時の受け答え、身だしなみ、周囲との距離感、一般的な職場での振る舞い。そうした部分が十分に共有されないまま現場に入ると、本人に悪意がなくても周囲の負担になります。
さらに厄介なのは、辞めてほしくない人が人間関係の影響で辞めてしまうことです。本人に悪気がないため、注意してもなかなか自分ごととして受け止められない。現場の先輩も、どこまで言うべきか迷う。結果として、周りのストレスが積み重なっていきます。
案件ごとのOJT任せでは、技術教育だけでなく、職場での基本姿勢や人間関係の調整まで現場任せになります。
もちろん、建設業や専門工事会社では、現場で覚えることが多いのは自然です。問題はOJTそのものではありません。問題は、OJTの前提となる基準が会社側にないことです。
たとえば、次のような状態です。
- 新人に最初に伝えるべき約束事が決まっていない
- 案件チーフによって教える内容と厳しさが違う
- 相談役やメンターが明確でない
- 注意や指導が、社長や一部のベテランの感覚に寄っている
- できるようになった状態の定義が曖昧
この状態では、良い先輩に当たれば育つ一方で、忙しい案件や相性の悪い現場に入ると、本人も周囲も苦しくなります。新人育成を安定させるには、現場任せをやめるのではなく、現場が教えやすい型を会社が用意することが必要です。
社長とベテランの暗黙知で回してきた会社ほど、育成の型が後回しになりやすい
この会社では、過去にチーム制のような形を試したこともありました。小さなチームに分けることで教える頻度は上がる一方、チーム内の人間関係が悪くなったり、繁忙時に「そちらのチームから人を貸してほしい」といった調整がうまくいかなかったりしたそうです。
つまり、単純にチームを作れば解決するわけではありません。配属上のチームと、育成上の支援役は分けて考える必要があります。
社長やベテランは、仕事の進め方や現場で大事な勘どころを身体で覚えてきています。そのため、つい「自分も最初はできなかったけれど、やっていくうちに覚えた」という感覚になりがちです。
ただ、今の新人は、同じように現場へ出せば同じように育つとは限りません。現場の忙しさも違います。人手不足で採用時の選択肢が限られることもあります。常駐先や案件先が分かれていれば、会社の目も届きにくくなります。
その中で、社長や一部の人だけが「この仕事で大事なこと」を知っている状態が続くと、育成はどうしても属人的になります。
暗黙知に頼った育成は、会社が小さいうちは回りますが、人数が40名、50名に近づくほど再現性が落ちます。
ここで大事なのは、立派な研修制度を一気に作ることではありません。まずは、社長やベテランの中にある「これは新人に必ず身につけてほしい」という基準を、会社の言葉に直すことです。
現状把握から始め、OJTの型・メンター・教材・キャリア段階を一本につなげる
最初にやるべきことは、研修資料を作ることではなく、現状把握です。誰がどこでつまずいているのか、現場の先輩は何を教えづらいと感じているのか、辞めてほしくない人が辞める背景に何があるのかを確認します。
育成の仕組みづくりは、「何を教えるか」より先に、「どこで育成が途切れているか」を見るところから始めると進めやすくなります。
進め方としては、次の順番が現実的です。
1. 新人に必要なスキルを棚卸しする
まず、技術と技術以外を分けます。
たとえば、次のように整理します。
- 職場での基本姿勢:挨拶、報連相、身だしなみ、時間感覚、周囲への配慮
- 現場での基本行動:指示の受け方、道具や材料の扱い、作業前後の確認
- 施工技術:初級作業、補助作業、単独で任せられる作業
- 対人面:先輩・取引先・協力会社とのやり取り
この棚卸しをすると、「技術が足りない」の一言で片づけていた問題が、実は基本姿勢の問題なのか、指示の受け方の問題なのか、単に経験不足なのかが見えやすくなります。
2. OJTで教える順番を標準化する
次に、入社後の育成ステップを決めます。細かすぎる制度にする必要はありません。まずは半年から1年程度で、段階を分けるだけでも十分です。
たとえば、次のようなイメージです。
- 入社直後:会社の約束事、現場での基本姿勢、相談先を伝える
- 1〜3か月:先輩同行で、作業の流れと用語を覚える
- 3〜6か月:一部の補助作業を任せ、できたこと・不安なことを確認する
- 6〜12か月:任せられる作業範囲を広げ、次の役割を見せる
大事なのは、案件によって細部が違っても、会社としての共通ステップを持つことです。OJTを標準化するとは、全員に同じ現場を経験させることではなく、どの現場でも同じ基準で成長を見られるようにすることです。
3. 案件チーフとは別に、相談役を置く
案件チーフが育成責任をすべて背負うと、現場の進行と新人のケアが混ざります。忙しい案件では、どうしても作業優先になります。
そこで、配属先のチーフとは別に、月に1回でも新人と話す相談役を置きます。いわゆるメンターです。ただし、名前だけのメンターにすると続きません。
決めるべきことはシンプルです。
- 誰が見るか
- 何を確認するか
- どの頻度で話すか
- 困ったときに誰へ上げるか
この役割は、必ずしも一番技術が高い人である必要はありません。むしろ、話を聞ける人、現場の空気を言語化できる人の方が向いている場合もあります。
4. 社長やベテランの暗黙知を動画・マニュアルにする
社長やベテランの勘どころは、会社の資産です。ただし、頭の中にあるだけでは、毎年の新人に同じように伝わりません。
最初から立派なマニュアルを作る必要はありません。スマートフォンで短い動画を撮る、よくある注意点を1枚にまとめる、現場で使う言葉を一覧にする。これだけでも、教える側の負担は下がります。
動画やマニュアルの目的は、新人を一人で学ばせることではなく、先輩が同じ前提で教えられるようにすることです。
5. 育成ステップを評価・キャリアとつなげる
育成が定着しない会社では、「何ができるようになれば次に進めるのか」が曖昧になりがちです。評価制度まで一気に作り込む必要はありませんが、育成ステップと役割はつなげた方がよいです。
たとえば、「補助作業ができる」「一部作業を任せられる」「後輩に基本を教えられる」といった段階を決めておくと、本人も次に何を目指せばよいか分かります。先輩側も、感覚ではなく基準でフィードバックしやすくなります。
新人育成は、採用後の研修だけで終わらせず、将来どんな役割を担ってほしいかまでつなげることで、定着と戦力化に効いてきます。
まとめ
案件ごとのOJTは、建設業や専門工事会社にとって自然な育成方法です。ただし、会社側に基準がないまま現場へ出すと、新人の育ち方は案件チーフや先輩との相性に左右されます。
今回のような45名規模の会社では、社長やベテランの暗黙知だけで育成を回し続けるには限界が出やすくなります。特に、常駐先や案件先が分かれ、現場ごとに忙しさも人間関係も違う場合は、会社としての育成の型が必要です。
整理すべきポイントは、次の通りです。
- 新人がつまずいているのは、技術なのか、基礎行動なのかを分ける
- 案件チーフ任せにせず、会社共通のOJTステップを作る
- 配属先とは別に、相談役やメンターの役割を置く
- 社長やベテランの勘どころを、動画・マニュアル・チェック項目に落とす
- 育成ステップを、評価や将来の役割とつなげる
完璧な制度を一度に作る必要はありません。まずは次に入る新人1名、または直近1年以内に入った若手数名を対象に、小さく始めるのが現実的です。
自社で育てる仕組みは、人数を増やすためだけのものではなく、今いる人が安心して働き、現場が教えやすくなるための会社の資産です。
新人育成を案件任せから会社の仕組みに変えるための整理
「うちも現場任せになっている」「新人に何をどこまで教えるべきか、社内でそろっていない」と感じる場合は、まず現状の整理から始めるのがよいです。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。新人育成であれば、必要スキルの棚卸し、OJTの標準化、メンター設計、動画・マニュアル化、評価やキャリアとの接続まで、会社の状況に合わせて一緒に組み立てていきます。
「まだ制度を作る段階か分からない」「何から整理すべきか分からない」という段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、まずは自社の場合にどこから手をつけるとよいかを整理する場としてご活用ください。


































