三重県北部の内装系専門工事会社で、社長が現場・既存客・見積もりまで見ている状態
三重県北部で内装系の専門工事を手がける、5名規模の会社の話です。社員としては、代表、30代の親族社員、その紹介で入った社員、最近加わった社員、事務担当という体制です。ただし、職人を自社で多く抱えているわけではなく、現場は一人親方や協力会社に支えられている構造です。
社長自身は、既存のお客さまへの対応、見積もり、現場の確認、現場メンバーのフォロー、社内の管理まで広く見ています。新しく人が入っても、すぐに見積もりや顧客対応を任せられる状態ではありません。
社長の言葉にも、その難しさが出ていました。
「既存のお客さんへの見積もりも、まだ任せられないんです。結局、僕がやっている。立場が変わっても、今まで通りのことをやっているだけなんですよね」
この会社の現在地は、人がまったくいない状態ではなく、社長の仕事を受け取れる中間の役割がまだ設計されていない状態です。 ここを見誤ると、「経験者を採れば解決する」という話になりがちですが、実際にはもう一段手前の整理が必要です。
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社長が全部を見る体制のままでは、教育にも経営にも時間を移せない
一番の課題は、社長が現場から抜けられないことです。
現場を見ないと品質や段取りが心配になる。既存のお客さまとの関係も、見積もりも、細かいフォローも、結局は社長が持っている。さらに、現場メンバーに対して本当は言いたいことがあっても、関係性を崩したくないため、強く言えない場面もあります。
「本当は言いたいんですけど、言葉を選びながらやっている自分がいるんです」
これは、社長の性格だけの問題ではありません。少人数の建設会社、とくに親族や長い付き合いのメンバーがいる会社ではよく起きます。社長が直接言いすぎると角が立つ。言わなければ現場の基準が曖昧になる。その結果、社長が裏でフォローし続ける形になります。
社長が現場メンバー全員と直接やり取りし続ける組織では、社長の負担は減らず、社員も「何をどこまで自分で判断すべきか」が育ちにくくなります。
特にこの会社では、社長自身が「中をきっちりしないと、外に出ていけない」と感じています。新規営業を増やす前に、今いる人材でどう回すか、教育や役割分担をどう整えるかが優先だという判断です。この感覚はとても現実的です。
一人親方に頼る現場構造と、家族的な関係性が社長の直接管理を増やしている
背景には、内装系の専門工事会社らしい構造があります。
この業界では、昔から「仕事は自社職人を育てるもの」というより、「腕の良い一人親方や協力会社に頼むもの」という感覚で回ってきた会社が少なくありません。社長自身も「自分のところで職人を育てるという感覚が、もともとなかった」と話していました。
ただ、今はその前提が少しずつ変わっています。良い職人ほど仕事を選べます。専属のように見えていた人も、材料不足や現場の遅れ、条件の良い案件が重なると別の現場へ動くことがあります。外注中心の体制そのものが悪いわけではありませんが、会社側に管理・教育・顧客対応の軸がないと、社長が調整役を一手に引き受けることになります。
さらに、親族や近い関係の社員がいる場合、社長の言葉は単なる業務指示では済まないことがあります。
「注意して変な関係になるのが嫌なんです」
この感覚は、少人数の会社ほど自然です。毎日顔を合わせますし、現場でも会社でも関係が続きます。だからこそ、社長が直接すべてを言うのではなく、社長の考えを理解し、日々の現場コミュニケーションに落とし込む中間の人材が必要になります。
右腕人材とは、単に社長の代わりに現場へ行く人ではありません。社長の判断基準を理解し、既存のお客さまや現場メンバーとの間に入り、会社としての動き方をそろえる人です。
右腕人材を採る前に、社長の業務を切り出して任せる範囲を決める
右腕人材を考えるときは、最初から「経験10年以上」「資格あり」「現場管理ができる人」と広く探すより、社長の仕事を棚卸しすることが先です。
採用すべき右腕像は、求人票から考えるのではなく、社長が今抱えている業務の中で何を渡せば会社が回り出すかから考えるべきです。
たとえば、社長の仕事を次のように分けます。
- 既存のお客さまとの日常連絡
- 見積もり作成前の現場確認、数量確認、条件整理
- 協力会社や一人親方との段取り調整
- 現場メンバーへの日々の声かけ、進捗確認
- お客さまからの小さな不満や違和感の吸い上げ
- 社長が判断すべき案件と、任せてよい案件の仕分け
- 新しく入った人への仕事の目的説明
この中で、いきなりすべてを任せる必要はありません。むしろ、最初に任せるべきなのは「社長の判断を完全に代替する仕事」ではなく、社長が判断する前の情報整理と、社長が決めた後の現場への伝達です。
この役割があるだけで、社長はかなり楽になります。お客さまからの話を全部社長が直接受けるのではなく、右腕が一次対応をする。見積もりも、右腕が現場条件や数量を整理し、社長が最終確認する。現場メンバーへの注意や声かけも、社長が毎回直接言うのではなく、右腕が日々の中で伝える。
組織図で見ると、理想はシンプルです。
社長が全員を見る形から、社長が右腕を見る形へ変えることです。
社長 → 現場メンバー全員、協力会社、お客さま、事務、見積もり、管理、という形では、社長の時間が必ず詰まります。まずは、社長 → 右腕 → 現場メンバー・協力会社、という流れを作る。社長は右腕に考え方や判断基準を伝え、右腕が日々の現場に落とし込む。この形に変えると、社長は教育や経営の仕事に時間を移しやすくなります。
採用時の打ち出し方も重要です。
「経験者募集」「現場管理経験者歓迎」「資格保有者優遇」だけでは、欲しい人には届きにくいです。右腕候補に響く求人は、もっと具体的である必要があります。
たとえば、次のような内容です。
- 社長が現在、既存顧客対応・見積もり・現場フォローまで担っていること
- 入社後は、まず既存顧客と現場の間に入り、段取りや情報整理を担ってほしいこと
- 将来的には、社長の判断基準を理解し、現場メンバーをまとめる立場を任せたいこと
- 少人数の会社だからこそ、会社づくりに近いところから関われること
- 単なる作業者ではなく、社長と現場の間に立つ役割を期待していること
「誰でもいいから来てほしい」ではなく、「この役割に心当たりがある人に来てほしい」と伝えることが、右腕採用では欠かせません。
現場経験があることは大事です。ただし、それ以上に見るべきなのは、社長の考えを受け取り、相手に合わせて伝え直せるかです。既存のお客さまへの対応、現場の空気、職人との距離感、社長が大事にしている仕事観。このあたりを雑に扱わない人でなければ、右腕にはなりにくいです。
採用後も、いきなり任せきるのではなく、最初は社長と同行しながら基準を共有します。なぜこの仕事を受けるのか。なぜこのお客さまを大事にするのか。なぜやりたい仕事だけでなく、会社として受けるべき仕事があるのか。そうした目的から伝えていくことが大切です。
「背中を見て覚えてほしい」だけでは、今の若手や中途人材には伝わりにくい場面が増えています。右腕を育てる第一歩は、社長の頭の中にある判断基準を言葉にすることです。
まとめ
社長が現場も営業も見ている会社で必要なのは、いきなり大きな組織改革をすることではありません。まずは、社長が今抱えている仕事を見える化し、どの仕事を渡せば社長が教育・経営に回れるのかを決めることです。
今回のような5名規模の内装系専門工事会社では、社長が既存客対応、見積もり、現場フォロー、社員への声かけまで担っていました。ここで必要な右腕は、単なる経験豊富な現場代理人ではなく、社長の考えを理解し、現場とお客さまの間で会社の基準をそろえられる人です。
右腕人材に任せるべき最初の仕事は、社長の代わりにすべてを決めることではなく、社長の判断を支える情報整理と、現場への日々の伝達です。
その役割ができると、社長は現場メンバー全員を直接見続ける状態から抜け出せます。採用も、「経験者がほしい」ではなく、「社長と現場の間に立ち、既存顧客対応と現場管理を一緒に整える人がほしい」と具体的に打ち出せます。
社長が変わるだけで解決しようとすると、少人数の会社ほど難しくなります。だからこそ、社長の下に信頼できる中間の人を置く。そこから組織は少しずつ変わります。
右腕人材を考える前に、自社の任せる業務を整理する
「うちの場合、右腕に何を任せればいいのか」「今いる社員を育てるべきか、外から採るべきか」「社長の仕事をどう切り出せばいいのか」がまだ曖昧な段階でも、整理する価値はあります。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場、採用、組織、原価、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。右腕人材の採用だけでなく、社長業務の棚卸し、組織図の見直し、求人で打ち出す内容づくりまで、会社の現在地に合わせて一緒に考えることができます。
ものづくりに集中できる建設業界へ向けて、無理に何かを進めるのではなく、「まず何から整理すべきか」という段階からお話を伺っています。無理な営業はいたしませんので、自社の場合の考え方を確認したい方は、必要なタイミングでご相談ください。





























