前提

首都圏近郊の20名弱の専門工事会社で、20代の若手を採れても1年前後で辞めてしまう状況

若手が辞める理由は、本人の適性だけで片づけにくい時代になっています。

首都圏近郊のある専門工事会社では、住宅系の改修・リフォーム工事を中心に、施工管理と協力会社の職人ネットワークで仕事を回していました。社員は20名弱。監督職には40代の中核人材が数名おり、20代の若手も2名在籍しています。

過去には、職人からの紹介で20代前半の未経験者が入り、その後、友人も連れてきてくれたことがありました。採用自体は、決してまったくできない会社ではありません。むしろ、協力会社や周辺の人から「紹介してもよい」と思われるだけの関係性があります。

ただ、入社後が続きませんでした。未経験で入った若手が、1年ほどで辞めてしまう。別の若手も、監督を経験したあとに「やっぱり自分には無理だ」と離れていく。電気系の高校出身者は「自分は電気の仕事がしたい」と転職を考えたこともありました。

もちろん、本人の志向や仕事内容との相性はあります。監督の仕事が合わない人もいますし、別職種への関心が強い人もいます。

一方で、会社側も「せっかく入れて、みんなも教えて、でも辞められると精神的にきつい」と感じていました。採用にかけた時間や費用だけでなく、現場で教える側の負担も大きいからです。

採用できる会社ほど、次に問われるのは“入った人をどう受け入れ、どう育てるか”です。

1週間で 19件ダウンロード されました

  • 7月16日外構工事会社東京都
  • 7月16日塗装工事会社大阪府
  • 7月16日内装工事会社群馬県
  • 7月16日総合建築岐阜県
  • 7月15日工務店東京都
  • 7月15日内装工事会社神奈川県
  • 7月15日塗装工事会社奈良県
  • 7月15日内装工事会社鳥取県
  • 7月14日配管工事会社高知県
  • 7月14日配管工事会社広島県
  • 7月14日防水工事会社神奈川県
  • 7月12日配管工事会社京都府
  • 7月12日ビルメンテナンス佐賀県
  • 7月12日リフォーム会社茨城県
  • 7月11日総合建築福島県
  • 7月11日総合土木大阪府
  • 7月11日造園会社愛知県
  • 7月11日外構工事会社茨城県
  • 7月10日電気設備工事会社京都府
  • 7月8日総合土木愛知県
  • 7月8日工務店山形県
  • 7月8日外構工事会社群馬県
  • 7月6日工務店兵庫県
  • 7月6日電気設備工事会社神奈川県
  • 7月6日防水工事会社東京都
  • 7月5日塗装工事会社神奈川県
  • 7月5日プラント工事会社福島県
  • 7月5日リフォーム会社東京都
  • 7月5日総合土木福井県
  • 7月4日外構工事会社千葉県
中小建設業のための新規採用成功ガイド 資料ダウンロード
課題

若手が聞き返せない空気と、育成担当の役割が曖昧なまま現場に入っていること

この会社の課題は、若手本人の問題ではなく、教える側の伝え方と受け入れ体制が属人的になっていることでした。

社内では、辞めた若手について「何となく理由は分かる範囲もある」という感覚がありました。明確な退職理由として表に出てこなくても、後から少しずつ聞こえてくる話があります。

たとえば、先輩や上司が「感情で物を言う」ことがある。本人に悪気はなくても、受け取る側からすると怖い。現場から戻ってきた監督がカリカリしていて、立場の弱い人にその空気が当たってしまう。

ある事務社員は、工事部長から図面コピーを頼まれた場面で、強い言い方を受けて「ドキドキしてしまう」と感じていました。頼んだ側は、普段通りに「これやっておいて」と言っただけのつもりです。しかし、言われた側には圧が残ります。

この感覚は、若手の育成でも同じことが起きます。

「一回教えてもらったけど、分からないからもう一回聞きづらい」

こう感じた瞬間から、若手は確認をやめます。確認しないまま進めてミスが出る。すると、教える側は「前に言っただろう」となる。若手はますます聞けなくなる。この循環に入ると、技術の前に関係性が止まります。

さらに、育成担当の役割も曖昧でした。40代の工事部長が、20代の若手2名をかなり集中して見ていました。ただ、その人自身も元々はプレイングマネージャーで、案件を持ちながら動いてきた人です。

最近は案件を少し手放し、若手育成に寄せているものの、会社として「あなたの主なミッションは育成です」とどこまで明確に置けているかが重要になります。

育成は“余裕がある人がついでに見る仕事”ではなく、会社が明確に任せる仕事にしないと続きません。

背景

できる40代が忙しさを抱えたまま、若手には“できて当然”で接してしまう構造

若手が辞めやすい背景には、できる人ほど自分の感覚を基準に教えてしまう構造があります。

工事部長は、仕事ができるタイプでした。自分で動ける。自分で判断できる。人とのネットワークも持っている。会社としても、今後の中核として期待している存在です。

ただ、できる人ほど、初めて聞く人の状態を忘れやすくなります。

社内でも「本人は全く強く言っているつもりはない」「コミュニケーションも取れていると思っている」という話がありました。けれど、受け取り方は人によって違います。体育会系の空気に慣れている人には普通でも、20代の若手や入社間もない人にはきつく感じることがあります。

たとえば、新しい仕事を事務社員に頼むとき、頼む側は「分かっている前提」で話してしまう。初めて聞く側は、どこから分からないのかも言えない。そこで周囲が「初めてのことだから、もう少し丁寧に教えてあげて」と伝えると、本人は気づいて修正できる。

つまり、性格が悪いわけではありません。自分の言い方がどう見えているかを知る機会が少ないだけです。

建設業では、この問題が起きやすいです。

現場は忙しく、判断も早く求められます。ミスが事故や手戻りにつながるため、言い方が強くなる場面もあります。ベテランや中堅は、自分たちも十分に教えられてきたわけではなく、「俺らだって教えられたことがないから分からない」という感覚を持っていることもあります。

その中で、若手だけが急に「丁寧に教えてほしい」「聞きやすい環境がほしい」と言っているように見えると、世代間のズレになります。

しかし、会社側から見ると、これは甘さの問題ではありません。若手が育たなければ、40代の中核人材に負担が偏り続けます。実際、この会社でもベテランや中核人材の残業が多く、若手はまだ覚える段階のため抑え気味にしていました。

若手が育てば、将来的には負担分散につながります。逆に、若手が辞め続けると、教える側は疲れ、現場を回す人の負担は減りません。

若手定着は、採用課題であると同時に、40代・50代の負担を減らす組織課題でもあります。

解決

入社直後のフォロー、育成担当の明確化、聞き返せる伝え方を仕組みにすること

若手定着の第一歩は、気合いや相性に頼らず、入社直後の受け入れ方を会社の仕組みにすることです。

まず取り組みたいのは、入社直後の危険な期間を決めて見ることです。若手は、入ってすぐに「この会社で聞いていいのか」「失敗しても確認できるのか」「誰に相談すればいいのか」を見ています。

そのため、入社後の数日から数か月は、通常業務とは別にフォローの時間を確保した方がよいです。毎日長時間の面談をする必要はありません。短くても、決まったタイミングで確認することが大切です。

確認する内容は、難しいものでなくて構いません。

  • 今日分からなかったことは何か
  • 聞きづらかった場面はあったか
  • 誰の説明が分かりやすかったか
  • 逆に、何が分からないまま残っているか
  • 現場や事務所で緊張した場面はあったか

若手のフォローは、仕事の出来だけを見るのではなく、“聞けているか”を見ることが重要です。

次に、育成担当の役割を明確にします。

「若手を見ておいて」では曖昧です。育成担当には、最低限次の役割を置くと動きやすくなります。

  • 入社後の仕事の順番を決める
  • 最初に教える内容と、まだ任せない内容を分ける
  • 若手が質問しやすい時間を作る
  • 現場での困りごとを拾う
  • 他の先輩の言い方や関わり方も必要に応じて調整する
  • 社長や幹部に、若手の状態を定期的に共有する

このとき大事なのは、育成担当に「自分の現場も今まで通りやって、育成もやって」としないことです。案件を持ちながら育成を担う場合、どうしても現場が優先になります。

会社としては、「この若手2名の育成は重要な仕事です」と明確に伝え、担当者の案件量や役割を調整する必要があります。

育成担当を任命するだけでなく、育成できる状態を会社が作ることが欠かせません。

三つ目は、教え方をそろえることです。

中小の建設会社では、Aさんはこう教える、Bさんは違う言い方をする、Cさんは感覚で伝える、ということがよくあります。現場ごとに違うのは当然ですが、最初に覚えるべき基礎までバラバラだと、若手は混乱します。

いきなり立派なマニュアルを作る必要はありません。まずは、若手が最初の3か月で覚えることを分解するだけでも十分です。

たとえば、施工管理の若手であれば、次のように整理できます。

  • 現場に入る前に確認すること
  • 写真の撮り方、残し方
  • 図面や資料の見方
  • 職人への依頼の仕方
  • 分からないときの確認先
  • やってはいけない判断
  • 報告すべきタイミング

こうした項目を、会社の実務に合わせて書き出します。ポイントは、ベテランの頭の中にある「当たり前」を、若手が見える形にすることです。

教え方の統一とは、現場を型にはめることではなく、若手が迷う入口を減らすことです。

四つ目は、言い方を変える練習です。

感情的に聞こえる人に対して、「もっと優しくして」と言っても、なかなか変わりません。本人は強く言っているつもりがないからです。

その場合は、具体的な場面で伝える方が効果的です。

たとえば、

「今の言い方だと、初めて聞く人は何をすればいいか分かりにくいかもしれません」

「一回教えた内容でも、確認しに来たらまず聞いてあげてください」

「“前に言ったよね”の前に、“どこまで分かった?”と聞く形にしてみましょう」

このように、人格ではなく行動に落とします。

特に若手には、質問の仕方も教える必要があります。「分かりません」だけでなく、「ここまでは分かりましたが、この先が不安です」と言えるようにする。教える側には、「何が分からない?」ではなく、「どこまで分かった?」と聞く癖をつける。

若手が質問しやすい会社は、若手だけが変わる会社ではなく、教える側も聞き方を変えている会社です。

五つ目は、1on1やガス抜きの役割を決めることです。

この会社では、社長だけでなく、社内の状況をよく見ている家族役員や事務社員が、若手や現場の空気をつかんでいました。昼食に誘ったり、冗談交じりに「今日疲れてます?」と声をかけたりできる関係性もありました。

これは大きな強みです。ただし、何となく聞こえてきた不満を、そのまま本人に返すと「告げ口された」と受け取られることがあります。人数が少ない会社ほど、誰が言ったか分かりやすいからです。

そのため、情報の扱い方を決めておくとよいです。

  • 個人名を出さず、傾向として共有する
  • 感情的な場面は、事実と受け止めを分ける
  • 若手の声を責める材料にしない
  • 指導者本人にも、抱えている負荷を聞く
  • 社長、育成担当、調整役の役割を分ける

1on1は、必ず社長がすべて行う必要はありません。社長が見る場面、育成担当が見る場面、少し距離のある人がガス抜きを受ける場面を分けても構いません。

大事なのは、若手の本音を拾う人と、現場を改善する人をつなぐ流れを作ることです。

最後に、配属や人の組み合わせも見直します。

若手が辞める原因は、仕事内容だけでなく「誰と組むか」に左右されます。最初に付く先輩が、教える余裕のない人だったり、言い方が強い人だったりすると、若手は仕事そのものを嫌いになることがあります。

一方で、教え方が上手い人、質問を受け止められる人、若手の表情を見られる人がいます。その人に最初の受け入れを任せるだけで、定着率は変わります。

現場の都合はありますが、入社直後だけでも、若手と相性のよい先輩を組ませる。事務所内でも、相談しやすい人を明確にする。合わない組み合わせが見えたら、早めに配置を変える。

若手育成は、本人を鍛える前に、最初に誰と出会わせるかを設計する仕事でもあります。

まとめ

若手が1年で辞めてしまうと、会社側はどうしても「最近の若い子は続かない」「本人に向いていなかった」と考えたくなります。実際、適性や志向の問題もあります。

ただ、同じことが繰り返されるなら、受け入れ側の仕組みを見る価値があります。

若手が辞める会社で起きているのは、採用の失敗だけではなく、教え方・聞き方・相談先・人の組み合わせが整っていないことです。

特に建設業では、できる人ほど忙しく、教える時間を後回しにしがちです。言い方が強くても、本人に悪気がないことも多いです。だからこそ、個人の性格を責めるのではなく、会社として育成の型を作ることが大切です。

まずは、次の5つから整理すると進めやすくなります。

  • 入社直後のフォロー期間を決める
  • 育成担当の役割と業務量を明確にする
  • 最初に教える内容を分解する
  • 若手が聞き返せる伝え方を社内でそろえる
  • 1on1やガス抜きの情報を改善につなげる

若手定着は、優しい会社になることだけが目的ではありません。中核人材の負担を減らし、次の現場を任せられる人を育てるための経営課題です。

採用できる接点がある会社ほど、受け入れ体制を整えれば、次の若手を活かせる可能性があります。今いる20代を大切に育てることが、5年後、10年後の現場力を作っていきます。

若手が辞めない受け入れ体制を、社内の実情に合わせて整理したいときは

若手の定着は、研修を入れれば終わる話ではありません。現場の忙しさ、育成担当の負担、40代・50代の言い方、事務所内の空気、配属の組み合わせまで含めて見る必要があります。

ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、現場・採用・組織・原価・デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。若手育成や1on1、教育体制づくりについても、「うちの場合は何から整えるべきか」という段階から一緒に考えることができます。

無理な営業はいたしませんので、まずは状況の整理先としてご活用ください。

お問い合わせはこちら