4月・5月の閑散期を埋めたい一方で、既存の仕事を抱える20名弱の専門工事会社
関東近郊で専門工事を手がける、20名弱の建設会社の話です。
社長は、年間を通して仕事量を安定させたいと考えていました。特に課題になっていたのは、4月・5月あたりに仕事が薄くなる閑散期です。
そこで、新しい取引先を増やし、小さな工事から関係をつくれないかという話を社内に持ち帰りました。社内では15名ほどが集まり、部長・課長クラス、若手社員も含めて意見を出し合いました。
反応は割れました。
若手の数名は「やりましょう」「行きましょう」という前向きな反応でした。一方で、部長・課長クラスは慎重でした。
「仕事をそんなに広げても、手が回らないですよね」
「今いただいている仕事はどうするんですか」
社長としては、新規開拓の必要性は感じています。ただ、現場幹部から見ると、今の人員と体制では受け切れない不安がある。ここに、建設会社らしい難しさがあります。
新規開拓の是非は、営業だけの話ではなく、現場キャパと既存案件をどう守るかの話でもあります。
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社長の成長意欲と現場幹部のキャパ不安がぶつかると、新規開拓が止まりやすい
この会社の課題は、社長が前向きで、幹部が後ろ向きだという単純な話ではありません。
本質は、新しい仕事を取りに行く判断基準が、社内でそろっていないことです。
社長は、閑散期を埋めたい。年間の仕事量を安定させたい。将来的には会社を少しずつ大きくしたい。そのためには、今の取引先だけでなく、新しい接点を増やす必要があると見ています。
一方で、部長・課長クラスは、日々の現場を見ています。人が足りない。今の仕事もある。若手を教えながら現場を回す余裕も限られている。だから、新しい仕事が増えたときに、既存の仕事に支障が出ることを心配します。
社長が押し切れば、現場は「また上が決めた」と受け止めるかもしれません。逆に、幹部の反対で止めれば、閑散期の課題は残ります。
ここで大事なのは、賛成か反対かで終わらせないことです。
反対意見を、経営判断の材料に変えることが必要です。
部長・課長の反対には「既存案件を崩したくない」という現場感覚がある
部長・課長クラスが反対した背景には、いくつかの現実があります。
ひとつは、今の体制でさばける量に限界があることです。
社長も「今の規模、今の人員だと厳しいのかなとは正直思った」と話していました。現場側から見れば、新しい仕事が入ること自体よりも、その後の段取り、職人の配置、品質、納期、既存先との調整が気になります。
もうひとつは、既存の仕事を失うリスクへの警戒です。
新しい取引先を増やすと、仕事量は増える可能性があります。ただ、今継続している仕事が回らなくなれば、信頼を落とします。幹部の「今までの仕事はどうするんですか」という言葉には、現場を預かる立場ならではの重みがあります。
さらに、若手とベテランで見えている景色も違います。
30代前半の若手は「社長が行くならやりましょう」という勢いがあります。これは会社にとって良い兆しです。一方で、40代以上のベテランや役職者は、受注後の苦労を知っています。だから慎重になります。
「せめて役職者がやると言えば、下も来るんでしょうけど、逆だったんです」
この言葉は、多くの建設会社に通じます。
若手の前向きさを活かしたい。でも、現場幹部の不安も無視できない。
この状態で必要なのは、気合いではなく、受け方の設計です。
反対意見を「受けない理由」ではなく「受ける条件」に変える
新規開拓を進めるときは、いきなり大きな案件を取りに行く必要はありません。むしろ、今回のように現場キャパへの不安がある会社ほど、小さく試す条件を決めることが有効です。
まず整理したいのは、次の5つです。
- どの時期に仕事が薄いのか
- その時期に、何人工・何班までなら追加で動けるのか
- 既存案件に影響を出さないラインはどこか
- 最初に受ける案件規模をどこまでに絞るか
- 営業、見積、段取り、現場管理を誰が担うか
この会社では、4月・5月がひとつの答え合わせの時期でした。であれば、「年間を通して何でも取りに行く」のではなく、まずはその時期に合う仕事だけを狙う形にできます。
たとえば、社内では次のような決め方が現実的です。
1. 閑散期だけを対象にする 通年で新規案件を増やすのではなく、まずは4月・5月の空きを埋めることに絞ります。現場幹部の「忙しくなるだけ」という不安を減らせます。
2. 最初は小規模案件だけに限定する 大型案件をいきなり受けると、現場負荷が読みにくくなります。小さな工事から始めることで、取引先との相性、段取り、採算、社内負荷を確認できます。
3. 既存案件を守る条件を先に決める 「既存先の工程に影響が出る場合は受けない」「管理者が足りない案件は受けない」など、守るラインを明文化します。これがあると、幹部の反対は単なるブレーキではなくなります。
4. 反対する幹部にも代案を持ってもらう 社長が実際に伝えていたように、「反対なら、閑散期に仕事を拾ってくる動きを考えてください」という投げかけは大事です。断るだけで終わると、来年も同じ課題が残ります。
5. 誰が動くかを曖昧にしない 「営業は社長」「既存先調整は部長」「新規先の初回現場は若手と役職者の組み合わせ」など、役割を決めます。新規開拓は、受注よりも受注後の運用で詰まりやすいからです。
ここまで決めると、社内会議の論点が変わります。
「やるか、やらないか」ではなく、「どの条件なら受けられるか」「どの条件なら受けないか」になります。
現場幹部の反対は、会社を止める意見ではありません。扱い方によっては、失敗しないための条件出しになります。
まとめ
新規開拓をしたい社長と、「今の仕事で手一杯」と感じる部長・課長層の意見が割れることは珍しくありません。
特に建設業では、受注できるかどうか以上に、受けた後に現場を回せるかが重要です。だからこそ、現場幹部の慎重な意見には意味があります。
ただし、反対で止まるだけでは、閑散期の課題も、年間の仕事量の不安定さも残ります。
大事なのは、反対意見を「受けない理由」で終わらせず、「受ける条件」に変えることです。
4月・5月だけを対象にする。小規模案件から始める。既存案件を守るラインを決める。営業と現場管理の担当を明確にする。反対する幹部にも、代案と行動を持ってもらう。
この順番で整理すると、社長が一人で押し切る形ではなく、現場の現実を踏まえた新規開拓に近づきます。
会社を大きくする話は、営業の話であると同時に、現場キャパをどう設計するかの話です。
新規開拓と現場キャパの整理から始めたいときは
新しい取引先を増やしたい一方で、現場幹部から「今の体制では厳しい」と言われる。この状態では、何から整理すべきか迷いやすいものです。
ネクスゲートでは、中小・専門工事会社の経営課題を、販路拡大、組織体制、現場キャパ、原価管理、デジタル活用まで横断して整理し、実行まで支援しています。
「うちの場合は、まず営業なのか、体制づくりなのか」「閑散期だけを埋める動き方はできるのか」といった段階でも大丈夫です。無理な営業はいたしませんので、状況の整理先としてお使いください。































